日本の化学産業 新年度は今後を占う試金石に

2019年4月1日

 4月より新年度がスタートしたわが国化学産業。中国をはじめ世界経済が減速しており、2019年度は今後を占う試金石となりそうだ。

 ここ数年の石化事業は、アジア地域の需要拡大を背景に、原料安市況高といったフォローの風が吹いたことで各社の収益を大きく押し上げた。

 しかし昨年は、保護主義の台頭により世界経済が変調し、原油価格の動きが不安定化。特に10-12月期は、原油価格が急騰したため各社の収益を圧迫する結果となった。

 それでも各社の2018年度の決算は高水準を維持したようだが、米中貿易摩擦やブレグジットの問題が長期化するなど、先行き不透明感が強まっている状況だ。

 特に米中間においてはデカップリング(分断)が進む。貿易問題だけでなく、ハイテク技術をめぐる覇権争いにまで発展しており、両者一歩も引かない構えを見せている。

 仮に追加関税や経済制裁が発動されれば、米中間のモノの流れが停滞することで両国経済に与えるダメージだけでなく、サプライチェーン全体に影響が出る可能性がある。昨年からすでにその兆候が見られ始めているが、中国に素材や技術を提供している企業にとっては、さらに対応を迫られそうだ。

 一方、アジア市場では、生産設備の新増設や域外からの流入が加速しており、競争がより激しさを増している。

 米国ではシェール由来の石化設備が本格稼働となり、アジア市場への輸出も拡大傾向。中国市場の需給バランスに大きな変化は見られていないものの、経済が停滞するなか今後の動向を注視する必要がある。

 昨年には中国において石化コンプレックス計画が相次いで発表された。数年後に稼働してくれば、石化の事業環境はさらに厳しくなることが想定される。わが国でもコンビナートの高度化や設備集約など、競争力強化に向けた議論が高まりそうだ。

 こうした中、大手化学メーカー数社は、今年度から新中期経営計画を開始した。近年、構造改革を進めてきたことに加え、高付加価値製品へのシフトやM&Aなどによるポートフォリオ変革に注力した結果、各社は最高益を更新するなど企業体質が強化されている。

 世界経済が目まぐるしく変化する中、新中計において、経営資源をどのように使い、目標とする「ありたい姿」に到達していくのか、各社の成長戦略に注目が集まる。