昭和電工 第2世代高品質パワー半導体用SiCエピを開発

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2019年8月2日

 昭和電工は1日、パワー半導体の材料である炭化ケイ素(SiC)エピタキシャルウェハー(エピウェハー)の6インチ(150㎜)品について、現在量産中の低欠陥グレード「ハイグレードエピ(HGE)」を、さらに高品質化した第2世代製品(HGE‐2G)を開発したと発表した。

 SiCパワー半導体は、現在主流のシリコン製に比べ耐高温・高電圧特性や、大電流特性に優れ、電力損失も大幅に削減できることから、電力制御に用いるモジュールの軽量・小型化と高効率化を実現する製品として市場が拡大。

 データセンターのサーバー電源や太陽光発電などの分散型電源、電気自動車に搭載される充電器および高速充電スタンド、鉄道車両への採用が進んでいるほか、2020年代前半には電気自動車のパワーコントロールユニット(PCU)への本格搭載が見込まれ、今後さらなる需要拡大が期待されている。

 高電圧・大電流を効率的に変換するインバーターモジュールには、SBDとMOSFETが搭載される。SiCの採用はSBDが先行し、Si‐IGBTと組み合わせたハイブリッドインバーターが使用されてきたが、近年のSiCエピウェハーの品質向上とデバイスプロセスの高度化により、SiC‐MOSFETが実用化され、より効率の良いフルSiCインバーターの普及が始まっている。

 特に、電気自動車と鉄道車両向けのモーター駆動インバーターモジュールでは100A級の大電流を一つのデバイスで扱うため、SiCエピウェハーから生産されるチップが10㎜角級に大型化される。このような大型チップでは、生産時の収率(歩留まり)悪化を防ぐため、エピウェハーの表面欠陥密度を0.1個/㎠以下に抑える必要がある。

 今回開発した「HGE‐2G」では、エピタキシャル成長プロセスの高度化などにより、デバイス初期歩留りに影響する表面欠陥密度を従来の同社HGEの2分の1以下に、デバイスの信頼性(通電劣化)に影響する基底面転位の基板からの伝播における変換効率を従来の10倍以上にまで高めた。これにより、従来のHGEに比べてさらなる高品質グレードのエピウェハー「HGE‐2G」を市場に提供していく。SiCエピウェハーの世界需要は、2025年に1500億円規模に拡大すると予想されている。

 同社は、世界最大の外販メーカーとして、〝ベスト・イン・クラス〟をモットーに、急拡大する市場に対し、高信頼性品の開発や積極的な増産投資を通じ、SiCデバイスの普及に貢献するとともに、個性派事業への成長を図る。