京大など CO2を有機分子に変換、多孔性材料の開発に成功

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2019年10月11日

 京都大学はこのほど、京都大学アイセムス(物質―細胞統合システム拠点)の研究グループが中国江蘇師範大学の研究グループと共同で、選択的にCO2を捉えて有用な有機分子に変換できる新しい多孔性材料の開発に成功したと発表した。

 CO2は燃焼や生物の呼吸、発酵など、われわれの生活の様々な場面で生成し、地球上に広く存在する化合物だが、同時に温室効果をもつガスとしても知られている。

 近年、化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)の使用の増加により、大量のCO2が地球上に排出されることによる地球温暖化の懸念が高まっている。こうした背景から、CO2排出量を削減する技術や排出されたCO2を有効活用する技術に高い注目が集まっている。

 同研究で開発した多孔性材料は、有機分子と金属イオンからなるジャングルジム状のネットワーク構造でできており、内部にナノサイズの小さな穴(細孔)を無数に持つ。この細孔はCO2に高い親和性をもっており、選択的にCO2だけを細孔中に取り込むことができる。

 さらに、細孔に触媒能をもつ金属イオン部位が規則的に配置されており、取り込んだCO2を原料として細孔内で高効率な触媒反応を起こすことが期待される。

 実際に、この材料を利用してCO2をエポキシドに付加させる変換反応を試みたところ、カーボネートが高収率、高効率で生成することが判明。反応の性能の指標となるCO2の変換のターンオーバー数は3万9000に達し、報告されている多孔性材料の中でも最高の性能を示した。

 今回開発した多孔性材料は、CO2を取り込むだけでなく、CO2の反応性を高め有用な有機分子に変換させることができる材料。また、この反応は付加反応であるため副生成物を生じず、有機溶媒も用いないことから環境に優しい反応だ。

 今回の成果は、地球温暖化の主因ともされるCO2を安価に資源として活用する技術への応用が期待される。なお、今回の成果は英国の学術誌「Nature Communications」電子版に9月25日に掲載された。