《化学企業トップ年頭所感》三菱ケミカル 和賀昌之社長

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2020年1月8日

 昨年は、吉野博士のノーベル化学賞受賞、量子コンピューティングの革新的な成果報告といった次世代を切り開くイノベーションに注目が集まった一方で、ブレグジットや米中貿易摩擦、中東や北朝鮮の問題に加えて日韓関係の悪化などもあり、世界経済の諸問題はほとんど改善されることなく先行きが不透明なまま継続した1年だった。

 AIやIoT、再生医療などの科学技術は想像を絶するスピードで進化し続けており、他方で気候変動、資源の枯渇、廃プラスチック問題などの諸課題への対応も不可欠となっている。私たちを取り巻く事業環境は硬直と変化の複雑な模様を織りなしているが、人・社会・地球が抱える様々な課題に正面から向き合い、世の中に必要とされる素材を提供し、社会に貢献し続けるという三菱ケミカルグループの信念は変わっていない。

 着実に成長し続けるため、安全第一とコンプライアンスの徹底を基盤とし、変化し続ける外部要因に対応することに加えて、内包する問題を解決し、私たちの強みを生かした体制を構築していくことが喫緊の課題である。

 現在当社グループでは、「安全・安定操業」「収益力の強化」「真のグローバル化」および「営業改革」を推進する、様々な施策に取り組んでいる。これら各施策を独立したものではなく、一連のパッケージとして実施することで当社グループの持続的な成長にさらに大きな効果があると理解いただき、積極的な協力をお願いしたい。

 昨年は、成長戦略推進のために事業売却や買収によるポートフォリオ最適化を進めつつ、複数の設備投資を決断して収益力の強化を図った。6月には「三菱ケミカルは決めました」と題した30の宣言を発信し、多様な人材が生き生きと活力高く働ける現場・会社を従業員のみなさんと作り上げていくための方向性を明確にした。

 各宣言については、事業所のトイレ改革「爽快プロジェクト」や、危険な作業と重負荷作業を削減する「心身に負担の大きい作業削減プロジェクト」など、具体的な投資も進めており、テレワークの推進などではすでに大きな実績が上がっている。「営業改革」については、昨年4月に設置した営業改革推進室による検討を踏まえ、これまでの営業の在り方を見直し、よりきめ細やかな顧客対応を実現しうる体制を構築するための具体的な取り組みを本年より進めていく。