京都大学など EVのCO2削減は限定的、包括的な対策必須

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2020年3月18日

 京都大学と広島大学の気候変動に関する研究グループはこのほど、将来の電気自動車(EV)の導入によるCO2排出量削減の効果を解析した。

パリ協定の気候目標達成には社会全体での取り組みがかなめ
パリ協定の気候目標達成には社会全体での取り組みがかなめ

 同研究によると、EVの導入によりエネルギー消費量は減少することがわかったものの、発電システムが火力発電に依存する現状のままでは将来のCO2排出量はほとんど変わらず、全体としては正味で増加することが明らかになった。さらに、仮に全ての車をEV化し、発電システムに再生可能エネルギーを大規模に導入したとしても、CO2削減効果は2割程度にとどまった。

 この結果は、パリ協定の2℃目標を達成するためには、交通という単一セクターの限定的な取り組みだけでは難しいことを示唆している。

 一方で、EV化の大小に関わらず全部門で削減目標に向かって対策を実施すれば、将来的に大幅な削減につながる結果もでている。同研究グループは、家庭・産業・交通といったエネルギー需要全体を包括的に捉えた上で、「発電などのエネルギー供給が脱化石燃料化していなくてはならず、社会全体での取り組みが必要だ」と指摘する。

 2015年のパリ協定では、国際社会は全球平均気温の上昇を2℃以下に抑え、温室効果ガス(GHG)の排出を今世紀後半に実質ゼロまで下げるという気候安定化目標を掲げた。現在EVが急速に普及してきており、その導入により自動車由来のCO2排出量削減が期待されている。しかし、EVの定量的な貢献度についてはこれまで示されていなかった。

 そこで、京大大学院工学研究科の藤森真一郎准教授と広島大学大学院国際協力研究科の張潤森助教らの研究グループは、EVの導入状況と交通部門以外の排出削減努力の進展度合いによって6通りのシナリオを設定し、コンピューターシミュレーションを試みた。

 シナリオは、EVが2050年で大量導入されているか否か、交通部門以外の排出削減努力がどのように進んでいるかという2つの考え方から構成。

 後者ではさらに、①排出削減が進まない現状の延長②大規模な排出削減が経済システム全体で進む③発電部門のみで再エネが積極的に導入される―の3つのケースを想定した。将来の人口やGDP、エネルギー技術の進展度合い、再エネの費用、食料、土地利用政策などGHG排出に関連するさまざまな社会経済条件を与えたシミュレーションモデルを使い、各シナリオについて統合評価を行った。

 今後は、EVの蓄電池の複合的な役割などを反映し、より詳細に解析していく考えだ。