東京大学 世界で初めて窒素ドープ型ナノチューブを化学合成

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2020年4月20日

 東京大学は14日、同大学院理学系研究科の磯部寛之教授の研究グループが、窒素原子の量と位置を完全に制御した窒素ドープ型ナノチューブの化学合成に世界で初めて成功したと発表した。

 カーボンナノチューブやグラフェンなどのナノカーボンは、その発見以来、新材料としての期待が高い。炭素以外の異種元素をドープ(埋め込み)すると、物性が大きく変えられる。なかでも、窒素ドープ型ナノカーボンは半導体利用などの応用研究において注目されており、年間200報に迫る論文が発表されている。しかしこれまで、物理的方法で製造されていることから構造中の窒素原子の位置や数を制御することが不可能であり、新材料開発を阻むボトルネックとなってきた。

 同グループは今回、窒素原子が周期的に埋め込まれた窒素ドープ型ナノチューブの化学合成に成功。昨年独自に開発したベンゼンのカップリング反応を活用したナノチューブ分子化学合成法に対し、新たにピリジン(アミンの一種)を用いることにより、窒素原子を組成・位置・構造などを完全に制御した上で埋め込むことが可能となった。

 ナノチューブ分子の304個の構成主原子のうち、8個を窒素原子とし、窒素原子の含有率を精確に2.6%とすることができた。これまで材料科学分野で検討されてきた窒素ドープ型ナノカーボンの窒素含有率は2~5%の幅であるが、今回の窒素含有率はその幅内に収まっていることから、これまで検討されてきた窒素ドープ型ナノカーボンの電子的性質・化学的性質を正確に探るために適した組成である。

 また最先端X線構造解析法により、窒素上の孤立電子対(ローン・ペア)の存在を明確にした。さらに理論計算の結果、窒素にはナノチューブに電子を注入させやすくする効果があることが分かった。

 窒素ドープ型ナノチューブはp型半導体にもn型半導体にもなることが報告されていたが、今回、窒素が電子を受け取り易くすることで、n型半導体になりやすくさせることが明らかとなった。これらの新知見は、今後、窒素ドープ型ナノカーボン材料の開発を加速させることが期待される。