チッソの3月期 液晶材料の競争激化で利益項目は損失に

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2020年5月14日

 チッソは13日、2020年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年度比7%減1449億円、営業損失は7億6千万円(30億円改善)、経常損失は13億円(1億円改善)、特別損失として85億円を計上し、純損失は119億円(38億円悪化)となった。なお、連結子会社JNCの、電子部品およびLiバッテリー用セパレーター事業撤退に関わる事業整理損などを特別損失に計上した。

 セグメント別では、機能材料事業(液晶材料等)の売上高は13%減の261億円。液晶材料は、主力の液晶テレビ市場でのパネルの供給過剰が顕著となり、販売価格が低下した。生産拠点の最適化を進め、特別損失として減損損失を計上している。

 加工品事業(繊維製品、肥料等)の売上高は5%減の586億円。繊維製品は、中国・アジア地域の衛生材料市場が堅調だったが、中国メーカーの設備増強で供給過剰となり、価格競争が続き出荷が減少した。肥料は、被覆肥料のアジア地域向け輸出が堅調だったが、JA全農の集中購買や、前年度の肥料価格改定に伴う先取り需要の反動があった。

 化学品事業(アルコール、樹脂等)の売上高は7%減の281億円。オキソアルコールは、生産量・出荷量は伸長したが、アジアの市況軟化や原料ナフサ価格下落の影響で価格が低下した。ポリプロピレン(PP)とポリエチレンは、自動車向け需要の減少、中国市況の軟化、安価な輸入品の流入など、厳しい事業環境となった。

 商事事業の売上高は1%減の210億円。主力のPPは、価格は低下したが出荷は堅調に推移した。電力事業の売上高は34%増の60億円。全13ヵ所の水力発電所についてFIT活用に向けた改修工事計画を実行中。今年度2カ所で工事が完了し、計7カ所で商業運転を開始した。残る6カ所も、改修工事を進めている。

 その他の事業の売上高は32%減の50億円。エンジニアリング事業は、手持案件の工事は順調に進捗したものの、前期の石化関連設備の大型案件の反動が出た。新型案件の受注は堅調だった。

 今年度の通期連結業績予想については、主力事業(機能能材料)が再構築途上であること、新型コロナ感染や市況の大幅変動など、事業環境は不透明かつ不確定要素が多い状況であることなどから、現段階では合理的な予想が困難と判断し未定とした。