BASF 新型コロナへの有効成分を特定、データを無償提供

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2020年7月1日

 BASFはこのほど、新型コロナウイルスに効果のある有効成分の探索支援のため、同社の数百万件に及ぶ化合物質ライブラリーの中から特定した物質データを、学術研究グループに無償提供するとともに、公的研究プロジェクト向けに、有望な分子をスーパーコンピューターにより同定し最適化したと発表した。

 同社は新型コロナウイルス感染症の対策支援活動として、総額約1億ユーロ超を投じた「Helping Hands」キャンペーンを実施。手指消毒液やマスクの寄付にとどまらず、治療用の有効成分を探索する学術研究グループへの支援も行っている。

 世界中の学術機関が、新型コロナウイルスに対する有効成分を迅速に同定するために、他のウイルス性疾患向け承認薬の有効性試験を細胞培養で行っている。しかし、これら化合物の有効性が不十分な可能性があり、活性成分の誘導体を探索する必要がある。同社は、類似化合物を探すために、数百万分子に及ぶ同社ライブラリーからコンピューター支援検索し、150の有望な候補を特定。これら分子の特許請求はせず、学術研究グループが無料で利用できる。

 また、スタートアップのPostEra社の「COVID‐19ムーンショット」プロジェクトによる、ウイルスの必須酵素である主要プロテアーゼの阻害物質(ウイルスの複製防止)の探索にも参画。BASFのスーパーコンピューター「Quriosity」を用いた分子設計とシミュレーションにより、主要プロテアーゼの活性部位へ最も適合する分子20個を見つけ出し、同プロジェクトに無償提供している。

 一方、これら仮想分子の合成可否と実現性は不明であるため、合成可能な化合物の中からの探索検討も行った。同プロジェクトの委託製造会社が原理的に合成できる約12億個の化合物について、主要プロテアーゼ阻害の可能性をスーパーコンピューターで評価。これにより、可能性のある全ての分子を迅速に合成し実験でテストできる。なお、これらの結果は、同プロジェクトを通して公開する予定だ。

 BASFは、150年以上の研究実績と知見、大規模物質ライブラリー、さらにスーパーコンピューターや分子設計用プログラムなどの研究力で有効成分の研究を支援し、コロナウイルス対策に貢献していく考えだ。