三洋化成工業 高潤滑・低泡性の水溶性金属加工油用の基剤

, , ,

2020年8月31日

 三洋化成工業はこのほど、低泡性で潤滑性に優れる水溶性工作油(金属加工油)用の合成基剤「ユーティリオールGA‐15P(開発品)」を開発したと発表した。

 自動車や機械などの製造に欠かせない切削、圧延、引き抜き、プレス、鍛造などの金属加工には、潤滑と冷却のための金属加工油が用いられる。油剤が工具/被加工物/切屑の間で摩擦低減と冷却に機能し、工具の摩耗・変形・焼き付きを防止。工具寿命を延ばし、加工精度を上げる。

 加工油には、潤滑性(加工性)に優れる不水溶性と、不燃性で冷却性に優れる水溶性がある。作業環境改善や環境負荷低減の観点から水溶性加工油が注目されるが、潤滑性が不十分な場合も多く、潤滑性を改善すると低泡性が低下するなど、置き換えが進まないのが現状。

 その他にも加工精度の向上や高速化、素材の多様化、機械や製品の長寿命化、廃油・排液量削減のためのリサイクルやコスト削減など様々なニーズがあり、基剤メーカーや基剤を使用する加工油メーカーは性能向上に取り組んでいる。水溶性金属加工油の基剤には、主としてポリアルキレングリコール型の水溶性ポリエーテルが金属界面への浸透性、潤滑性の役割で用いられる。

 同社は、界面制御技術や高分子設計技術、アルキレンオキサイド付加物製造技術の強みを生かして、水溶性加工油の特長を維持したまま潤滑性を大幅に向上した合成基剤を開発した。高速加工だけでなく、高延性のアルミなどの難削材などへの適応や、作業効率の向上も期待される。環境負荷低減や作業環境の改善、冷却効率の向上などのメリットも得られる。

 今後は、「ユーティリオールGA‐15P」の優れた性能を生かして、加工油用への適応拡大や適応金属の拡大などの検討、他の水系潤滑油用基剤への用途拡大などを進める。家電や自動車、ビル、インフラなど、様々な産業は高度な金属加工技術によって支えられている。同社は、工作油剤技術向上のソリューションを提案し、モノづくりの現場を通して各種産業の発展に貢献していく考えだ。