アジア石化市況 エチレンは前週比40ドル安に

2020年11月17日

ブタジエン上昇基調が継続、SMは800ドル台に

 アジア地域の10月第5週の石化市況では、エチレンは下値40ドル安、上値20ドル安の750~780ドル/tでの取引となった。3週連続の下落となり、上値は8週ぶりに800ドル/tを割り込んでいる。ナフサとのスプレッドも同様に悪化傾向が継続し、8週ぶりに400ドル/t台を下回った。その背景として、コロナ感染の再拡大や米国大統領選の混乱により、市場に不透明感が強まったことが挙げられる。原油価格の下振れ懸念が高まったことに加え、定修要因がなくなったこともあり、需要家が様子見状態となっているようだ。

 プロピレンは下値20ドル安、上値15ドル安の830~910ドル/tと2週連続で下落した。エチレン同様、市場にタイト感がなくなりつつあり、弱含みの展開となっている。それに対しブタジエン(BD)は、下値70ドル高、上値30ドル高の1070~1130ドル/tでの取引となった。1000ドル台に急騰した前週より上昇幅は縮まったものの、需給タイトが継続していることで一段高となっている。主用途であるタイヤ向けのSBRや、家電や住宅などに使用されるABS樹脂が好調となっている。

 一方、芳香族はベンゼンのみ上昇した。ベンゼンは八ドル高の450ドル/tと、7月第5週の水準にまで回復。スプレッドも29ドル拡大し81ドル/tに改善している。誘導品であるスチレンモノマー(SM)の需要が世界的に高まったことで、原料であるベンゼンの引き合いが急速に強まっている。SMは77ドル高の864ドル/tと、3月第1週以来となる800ドル/t台を記録し、ベンゼンとのスプレッドも414ドル/tと大きく改善した。好調なSBRやABSの需要に支えられ、ベンゼンとSMは当面、上値を追いかける展開となりそうだ。トルエンは前週並み。キシレンは17ドル安の413ドルとなり、ナフサとのスプレッドは44ドルとやや改善した。原油が弱含みとなったことに加え、川下の誘導品市場が低迷しており、キシレン市況は低水準な状態が続いている。

 今後については、中国経済の消費行動の拡大に期待が集まる。中国の7-9月期のGDPは4.9%と、4-6月期の3.2%から1.7ポイント増加した。IMFの予測では通年で1.9%となり、主要国で唯一のプラスとなる見通し。中国以外のアジア各国の需要は未だ低迷が続いており、アジア石化市況はこの先も、中国の内需動向に大きく左右されそうだ。