宇部興産 CPL11月契約価格は前月比90ドル高

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2020年11月18日

冬物衣料の需要好調、中国トラブルで需給タイト

 宇部興産は、ナイロン原料であるカプロラクタム(CPL)について、11月(上旬決め)の韓国・台湾大手向け契約価格を前月比90ドル高の1240ドル/tで決着した。これで、2カ月連続90ドル高となり、9月からの3カ月間で210ドルも急騰している。冬物衣料に向けた需要期に入る中、アジア地域では複数プラントが定修入りや定修を控えていたこともあり、市場に先高観が出ていた。

 こうした中、中国メーカーの間でトラブルによる稼働停止が続発。需要家の間で玉を確保する動きが強まり、契約価格を大きく押し上げる結果となった。スプレッドについても、原料ベンゼンの上昇分をカバーし、前月比55ドル拡大の780ドル/tにまで改善している。とはいえ、4~11月の平均スプレッドは673ドル/tと昨年同期(908ドル/t)を下回っており、収益的には依然として厳しい状況だ。

 一方、中国・SINOPECは、10月(下旬決め)の契約価格を前月比34ドル高(100人民元高)の1192ドル(9800人民元)で決着。11月の仮価格については、今月12日に1324ドル(1万800人民元)で打ち出した。需給バランスを見ながら段階的に上げてきており、強気の姿勢となっているようだ。

 中国メーカーの稼働率を見ると、ナイロンチェーン全体で高水準となっている。11月初旬の稼働率は、CPLはトラブル要因で80%弱(10月初旬90%弱)と全体的に下がったものの、川下のチップは70%半ば(同60%半ば)、ヤーン(糸)は80%弱(同70%程度)と10%ほど上昇した。川下の需要が改善してきたことで、今後、ナイロンチェーンが好循環に入っていくとの見方が出ている。また、ナイロンチップの価格も、前月は1300~1400ドル/tだったが、今月に入ってからは1400~1500ドル/tで交渉が進んでいるもよう。足元では1600ドル/tでの取引も見られ、CPL価格の上昇分を転嫁する動きが強まっている。

 12月の契約価格については、一段と上昇する可能性が高い。中国メーカーのトラブル要因は徐々に解消してくることが想定されるが、自動車部品や電子部品、また衣料品などナイロン製品の好調さが供給量の増加を吸収すると見られる。

 ただ、ベンゼンなどの原料市況が上昇傾向になることが懸念材料。ベンゼンはスチレンモノマー向けに、アンモニアや硫黄も肥料向けなどに、それぞれ引き合いが強まっている状況。仮に、原料市況が一段と上昇基調となれば、CPLのスプレッドを圧迫する可能性もあり、原料市場の動向が注目される。

 なお、宇部興産のCPL工場(宇部、タイ、スペイン)については、10月末で定修が終了した宇部工場はフル稼働。タイ工場は90%稼働となり、肥料が好調なスペイン工場はフル稼働を継続している。