帝人 ポルトガル拠点にCF-RTM成形設備を新設

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2020年12月3日

 帝人は2日、グループで軽量複合材料部品の生産・販売を手がけるイナパル・プラスティコ社(ポルトガル)が、生産性、外観性、寸法・品質安定性に優れるCF‐RTMの成形設備を同国パルメラに新設したと発表した。設備投資額は約6.8億円。

CF-RTM成形設備を新設したイナパル・プラスティコ社パルメラ工場

 CF-RTM(カーボン・ファイバー・レジン・トランスファー・モールディング)は、金型の中に炭素繊維シートを配置した後に樹脂を注入し、加熱により硬化させる成形方法。帝人グループでは、環境負荷低減に向けた自動車メーカーからの要求特性に対応するため、軽量・高強度で生産性に優れるCF-RTMによる成形技術の開発に取り組んできたが、これまで蓄積してきた炭素繊維に関する知見や、2017年に買収した北米最大の自動車向け複合材料部品メーカーCSP社の技術などを融合することでCF-RTM成形設備の新設に至った。

 今回のCF-RTM成形設備は、帝人グループがもつ炭素繊維、CAE解析、流体解析、プリフォーム、金型設計などに関する技術を駆使することにより、製造工程の完全自動化を実現。この設備により、部品の要求性能に応じて厚みを調整することができ、かつ炭素繊維を50%以上含有する高強度な成形品の製造が可能となる。また、射出時間が20秒と短いため生産効率も向上し、さらに、このプロセスによる成形品は、従来のアルミ製部品を約30%軽量化できることから環境負荷低減にも貢献する。

 そして、こうした特長により、自動車業界で「クラスA」と称される美麗な外観をもつ外板部品や、優れた剛性が求められるホワイトボディなど、主要構造部材の成形が可能であることが評価され、すでに欧米の自動車メーカーでの採用が確定している。今後はリサイクルされた炭素繊維材料を使用し、3分間で量産に向けた成形を実現するために開発を強化していく。

 帝人グループは、マルチマテリアルでのティア1サプライヤーとして、使用材料の拡充から部品設計にまで踏み込んでのソリューション提案力の強化や、グローバルでの安定供給体制の確立を進めていく。そして、2030年近傍には、自動車向け複合材料製品事業の売上を20億ドル規模へと拡大していく考えだ。