産総研 低コスト成膜技術で多接合太陽電池の普及を加速

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2020年12月10日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、同ゼロエミッション国際共同研究センターと大陽日酸が共同で次世代太陽電池普及の鍵となるハイドライド気相成長(HVPE)法によるアルミニウム系材料の成膜と太陽電池への応用を可能にする装置を開発した。

 Ⅲ-Ⅴ族化合物太陽電池はバンドギャップ(光吸収波長)の異なる材料を積層した多接合構造で発電効率は最も高いが、高価な原料と基板、遅い成膜速度など製造コストの高さが課題であった。また、高効率化には各構成セルの高性能化が必要で、特にインジウム・ガリウム・リン(InGaP)トップセルの表面電流損失をAlIn(Ga)P層で抑制することが不可欠だ。

 両者は2015年度よりNEDOの支援を受け、有機金属気相成長法より低コストであるHVPE法の水平置き縦型装置の開発を進め、高速成膜性を実証。今回Al系材料の高品質成膜を検討した。

 HVPE法では、金属と塩化水素ガスを700~850℃の炉内で反応させ金属塩化物前駆体にするが、AlはAlClとなり石英反応炉を損傷するため使用できなかった。今回反応温度を500℃に下げ、AlCl生成を抑え石英との反応性の低いAlCl3を生成することで、Al系材料の成膜が可能となった。これによりInGaPセル表面を不活性化でき、出力電流が増大し、発電効率が向上した。

 また、AlAsの成膜が可能になったことで、基板コストも低減できた。基板上にAlAs層、太陽電池層の順で成膜。AlAs層をフッ化水素酸で除去して太陽電池層を基板から剝離することで、基板は再利用できる。剝離した太陽電池層は薄膜なため、産総研の半導体接合技術「スマートスタック」により異種材料と接合して発電効率を向上できる。今回、剝離や接合の実証にはGaAsセルを使ったが、InGaPセルや多接合構造でも同様に剝離や接合が可能だ。

 これまで2インチ基板で検討したが、今後6インチサイズが成膜できる量産型HVPE装置を開発し、さらにそのⅢ-Ⅴ族化合物太陽電池をシリコンやCIGSなどの安価な太陽電池と接合して発電効率35%以上、発電コスト200円/Wの太陽電池の実現を目指す。