NEDOら 世界初の新ゲノム編集技術で植物遺伝子改変

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2020年12月18日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と徳島大学はこのほど、世界で初めて、新しいゲノム編集ツールCRISPR-CasタイプI-D(TiD)が植物細胞の遺伝子改変技術として有効であることを実証したと発表した。海外のゲノム編集知財に抵触せず、現行のゲノム編集技術CRISPR-Cas9と比べて標的以外のDNA配列の変異リスクが低く、より広範囲な様式の変異をゲノムに導入できることが確認された。

 植物や微生物の細胞がもつ物質生産能力を人工的に最大限引き出した生物合成技術「スマートセル」により、生産が難しい有用化合物の創製や生産性をより向上させた合成技術の開発など、物質生産での基盤技術と実用化技術開発を目的に「植物などの生物を使った高機能品生産技術の開発(スマートセルプロジェクト)」を2016年から推進してきた。その中でゲノム編集は遺伝子機能を改良する重要な技術だが、海外の知的財産権であるため活用しにくい。

 徳島大学は、機能が不明でゲノム編集には使われてこなかったTiDに注目。標的の認識やDNA切断のメカニズムを明らかにし、ゲノム編集ツールとして利用できることを見出だし、植物細胞の遺伝子改変に世界で初めて成功した。既存技術と比較して、導入できる変異の様式が多様で、標的以外のDNA配列に変異が起こるリスクが低いことも確認。海外のゲノム編集知財にも抵触しない。動物や微生物など様々な生物遺伝子の機能改変も可能だ。日本のバイオインダストリー推進の原動力として期待される。

 今後、徳島大学はTiDの変異導入効率の向上や、様々な機能ドメインを付与した多様なゲノム編集のツール化を進める。NEDOは後継事業「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発(バイオものづくりプロジェクト)」を今年度より立ち上げ、原料供給から最終製品のスケールアップにいたるボトルネックの解消を進めていく。