《化学企業トップ年頭所感》トクヤマ 横田浩社長

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2021年1月8日

 昨年は、新型コロナウイルスがもたらしたパラダイム転換の年ということに尽きる。現代文明をもってしても防ぎきれない自然の猛威を目の当たりにし、地球温暖化防止の動きが大きく進んだ。社会の分断や中間層の没落がクローズアップされ、行き過ぎた新自由主義の見直しの気運が高まった。テレワークの進展は従来の働き方や組織・人事システムのあり方に課題を突き付け、緊急経済対策の支給遅延が行政改革を迫るなど、あらゆる社会経済システムの構造的課題が浮き彫りとなった。

 当社にとって最大の環境変化は、「2050年カーボンニュートラルを目指す」という政府方針だ。当社も、世界の低炭素化の政策や新技術の調査・検討などを通して、低炭素化ストーリーを策定した。今年4月から始まる新中期経営計画は、それを色濃く反映している。日本の人口減少からも伝統事業の国内市場の縮小は不可避で、成長事業の拡大とニュービジネスの創出なくして会社の発展は望めない。

 石炭火力発電を競争力の源泉とする従来の戦略を根本的に見直し、「ネットカーボンゼロ」を前提に、2050年に健全に存続できる会社のありようをイメージし事業構造の転換を進める。具体的には「環境・健康・電子」をキーワードに成長事業を底上げし、海外ビジネスを拡大し、成長事業を主軸にした事業構造を目指す。一方、伝統事業はこうした活動を支えるキャッシュカウとして、エネルギー効率を最大限に高め低炭素化を図りつつ経済性を維持し、存在意義を追求する。

 成長事業の拡大には、マーケティングとイノベーションの機能強化が最大のポイントだ。また伝統事業、成長事業のいずれにおいても新技術や新プロセスの開発・導入は必須で、DXなどを活用して仕事を革新し、世界と戦う競争力を実現しなければならない。

 全役職員がより能力を高め、仕事へのあくなき情熱と遊び心をもって、勇気を出して一歩前に踏み出せれば、開発主導型企業へ脱皮し事業構造を転換できると確信する。先輩が残した仕事を土台に、将来のトクヤマを支えてくれる人々のための新しい土台を作ることが我々に課せられた最大のミッションだ。力を合わせて新しいトクヤマを作っていこう。