《化学企業トップ年頭所感》帝人 鈴木純CEO

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2021年1月8日

 新型コロナウイルスは社会の様相を大きく変え、帝人グループの事業も大きな影響を受けた。2021年を迎えたが大きな改善は見られず、ウイズコロナの環境をニューノーマルと捉え、感染予防を前提とした生活や業務を続けることが必要だ。負の影響だけではなく、遠隔医療などデジタル化で急速に進展する可能性が高まった事業もある。こうしたチャンスを確実に捉えるために、できることを可能な限り前倒しで進めたい。

 グローバル展開のため、各国の行動制限などの影響を受けやすい事業もある。特にマテリアル事業は大きな影響を受けたが、繊維・製品事業は医療用防護具など社会と事業業績に大きく貢献した。ヘルスケア事業やIT事業の下支え、北米自動車産業の想定以上の回復など、通期業績見通しは新型コロナ発生前の想定に近づきつつある。

 中期経営計画の取り組むべき社会課題は長期的視点で選択しており、長期ビジョンや戦略に大きな変更はない。各施策は、足元の状況を把握し最善な方法を検討して俊敏に行動に移す、変化への対応力が求められる。未来の社会から見て正しいと思える価値を提供する方法やタイミングは、再確認してほしい。

 社員に意識してほしいことは、まず「安全の確保」だ。安全に対する意識向上を徹底し、事故につながる要因を排除する。次は「認知力と俊敏性」で、変化の速い社会で状況を正しく認知し素早く対応する俊敏性だ。異なる視点や認知力をもつ人たちと話し、異なる意見に耳を傾け、正しいと思える認知を得たら速やかに行動に移し、変化する社会に合ったイノベーティブな価値の創造や提供につなげる。そして「リスクの捉え方とリスクテイク」だ。不確実な世界では、リスクを取らずに今までの事業環境に留まるという考え方では適応できない。イノベーティブな価値提供のためにきちんとリスクテイクした試みは、失敗とはしない形にしたい。

 我々は「未来の社会を支える会社になる」ため、持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。社員が一丸となりたゆまぬ変革と挑戦を続け、社会とともに歩んでいくこと、さらには社会に先鞭をつけていくような会社になるということを新年の抱負としたい。