産総研 CO2からメタノールの低温合成触媒を開発

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2021年1月29日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、ゼロエミッション国際共同研究センターが低温低圧条件でCO2の水素化により高選択でメタノールを合成できる新規の複核錯体触媒を開発したと発表した。イリジウム2個を含むイリジウム触媒は30℃/0.5M㎩の低温低圧でもCO2の水素化反応が進み、選択的にメタノールを合成できた。

 温室効果ガス排出実質ゼロの目標に向け、CO2を有用化学品へ変換するカーボンリサイクル技術の開発が喫緊の課題だ。メタノールは世界で年間約1億t生産される化成品原料・代替燃料で、CO2から変換できる基幹物質でもある。従来の銅系固体触媒が通常必要とする200℃以上の高温状態ではメタノールへの平衡転化率が低く、COやメタンも副生するため、反応の低温化が技術課題であった。

 産総研は低温反応用のイリジウム錯体触媒の開発に取り組み、活性点構造や反応機構の解明を進めてきた。1つのCO2分子に3つの水素分子が段階的に反応し、メタノールと水になる。1つ目の水素が反応してギ酸は生成するが、その後の水素反応が起こらずメタノールは生成しなかった。

 今回連続的な水素化を図り、活性点のイリジウムを2個もつ複核イリジウム触媒を開発した。従来の水相での均一触媒反応では水との競争反応のためメタノール生成はわずかだったが、固体状触媒による気相反応ではメタノール生成量は30倍増加し、メタノールの回収も容易であった。反応時間とともにメタノール生成量は直線的に増加し、メタンやCOは検出されなかった。5回の再利用試験でも触媒の劣化はなく、合計の触媒回数は100回を超えた。2個のイリジウム金属を分子内に適切に配置することが重要で、イリジウム同士が近すぎても遠すぎても触媒活性は低下したことから、複数の活性点による連続的な水素化が示唆された。

 今後は、触媒のさらなる高性能化と低コスト化を目指す。また、メタノールの生産性をより向上させるため、フロープロセスを開発し実用性の高い触媒プロセスの開発を進めていく。