産総研 湿度変化で発電する「湿度変動電池」を開発

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2021年6月24日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、空気中の湿度変化により発電する「湿度変動電池」を開発した。

 昼夜の湿度差で㎃レベルの電流を連続して取り出すことができ、IoT機器などの自立型極低電力電源としての応用が期待される。様々な電子機器の普及と、IoT(モノをインターネットに接続する)技術の進展により電子機器の数が増加する中、電源供給方法が問題となる。膨大な数の電子機器に対して、電源配線、定期的な充電や電池交換は、物理的スペースや労力の面で現実的ではない。

 小型電子機器の自立電源として熱電素子、太陽光発電、振動発電など環境中の微小エネルギーを使う環境発電技術の開発が行われているが、熱、光、振動などが存在する場所は限られることから、「どこでも発電できる」技術とは言い難い。どこにでも存在する湿度(水蒸気)を利用する場合、既存の発電素子で得られる電流は㎁、㎂レベルで実用的ではない。

 今回、潮解性無機塩水溶液の吸湿作用と塩分濃度差発電を組み合わせた、新しい原理の発電方式を開発。イオン交換膜で隔てた開放槽と閉鎖槽に、水と潮解性のあるリチウム塩からなる電解液を封入。低湿度環境では開放槽から水分が蒸発して濃度が上昇し、閉鎖槽との濃度差で電極間に電圧が発生する。

 高湿度環境では開放槽内の水溶液が空気中の水分を吸収して濃度が低下し逆の濃度差が発生し、逆向きの電圧が発生する。この湿度変動電池を恒温恒湿槽内に入れ、湿度を30%と90%に繰り返し変化させたところ、湿度30%のときには22~25㎷、湿度90%のときにはマイナス17㎷程度の電圧が発生した。最大電圧のときの出力は最大30㎼であった。短絡電流は5㎃で、1㎃以上の電流を1時間以上継続して出力できた。

 また湿度20~30%の密閉容器に湿度変動電池を入れ、電圧が一定したところで10㎼以下で駆動する低消費電力モーター接続すると、溜まったエネルギーによりモーターは2時間半以上駆動した。昼夜の温度変化などで湿度は数十%変動するため、比較的大きなエネルギーを長時間安定して取り出すことができ、「置いておくだけでどこでも発電できる」新たな再生可能エネルギーと言える。

 今後、さらなる出力向上や長期間使用時の耐久性など、実用化に向けた研究を行っていく。