《化学企業トップ年頭所感》日鉄ケミカル&マテリアル 榮敏治社長

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2022年1月12日

 昨年後半から景気回復は続くが、物流の混乱やサプライチェーンの分断、半導体不足や資源価格高騰など、不安要因を抱えた1年であった。好調な需要と、拡販と価格改善、安定生産とコスト削減努力で、上期の経常利益は過去最高レベルであったが、化学品スプレッドによる底上げもあり、下期は真水の実力が試される。

 今年も堅調な需要を見込むが、米中覇権争いによるサプライチェーンの分断、資源価格の高騰、コロナ禍が懸念材料だ。中国市場の重要性は変わらないが、顧客の多様化と市場の分散も考えなければならない。足元の円安も中期的にはマイナスだ。経済動向に応じた需要見通しや設備投資計画の見極め、調達ソースの多様化や在庫量の工夫が必要だ。

 高収益を維持するために、コールケミカル事業はタール発生量減少への対応やコーカーなどの大型設備投資を進める一方、原燃料価格や輸送費高騰によるコスト転嫁が急務だ。化学品事業は、安定生産により収益レベルを堅持する。機能材料、複合材料事業は5Gや熱マネジメントなどの高需要分野で業績を伸ばし、収益の柱とする。研究開発と新技術・新商品開発に向け、研究者やマーケッターの育成に必要なアセットを投入する。

 「安全、環境、防災、品質は生産に優先する」は重要指針で、社員の安全・健康は最も大切だ。今年は災害0を目指し、安全活動を徹底し強い決意で臨んでほしい。快適な会社生活には業務効率化が必要だ。IT投資とともに、仕事のさせ方で業務効率は改善する。上司は仕事の仕方・与え方に無理・無駄・ムラがないか自問し、大胆な簡素化も考えること。今年は在宅勤務のあり方とオフィスの有効活用を検討し、利便性と意思疎通、上司・部下・同僚の人間関係のバランスを図る。現場の声を聞き、的確な指示で、職場の意思疎通は円滑になる。上司の率先垂範と風通しの良い職場作りで、強い体質の会社になる。最も大事なことは働く仲間の心と体の健康だ。

 コロナ感染予防とともに心の健康にも目を向け、仕事の仕方・させ方に注意し、職場全体で心の健康のケアに努めてください。