産総研 ストレスモニタリング用のストレスガスセンサー

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2022年9月9日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、緊張によるストレスで皮膚から発生するガス物質(ストレスガス)「アリルメルカプタン」を識別できるセンサーアレイを開発した。

 アリルメルカプタンやジメチルトリスルフィドなどのストレスガスの発生を日常的に監視することは、健康状態の把握や疾病の予防に有用だ。しかし、従来の分析法は装置が大きく測定時間も長いため、リアルタイム計測ができない。

 産総研電子セラミックスグループは低濃度の揮発性有機化合物(VOC)用の半導体式ガスセンサー材料とそのデバイス開発に取り組む中、酸化セリウムナノ粒子を使った口臭・歯周病向けガスセンサーを実用化した。また酸化スズナノシートを使った肺がんバイオマーカー「ノナナール」用ガスセンサーを開発。その優れたガス応答特性は、酸化スズナノシートの表面構造などに起因することを解明した。

 今回この技術を元に、ポータブルガスセンサーデバイス用のセンサーアレイを開発した。酸化スズ結晶の成長時間を変えて、4種類のセンサー感応膜を作製。成長初期段階の感応膜が、アリルメルカプタンに対して5秒以内に応答値(50㏙で約80)を示した。応答値は他のバイオマーカーガスの4倍程度と、優れたガス選択性もつ。検出限界は約200pptと算出された。 

 ストレスガスを他のバイオマーカーガスから識別するために、4種類のセンサー感応膜を組み合わせたセンサーアレイを作製。各センサーの応答値を主成分分析で解析した結果、ストレスガスは他のバイオマーカーガスから明確に識別できることが分った。また、測定ガスを空気からストレスガスに切り替えると、応答値は5秒以内に大きく変化し、その後も安定しており、ストレスガスをリアルタイムで識別(モニタリング)できることが分った。

 今後、皮膚ガス中のストレスガスのモニタリングが可能なセンサーデバイスを開発し、ストレスケアなどの健康管理に貢献する。