信越化学工業の3月期 全セグメント好調で経常利益1兆円超

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2023年4月28日

 信越化学工業は27日、2023年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年比35%増の2兆8088億円、営業利益48%増の9982億円、経常利益47%増の1兆202億円、純利益42%増の7082億円となり、すべてのセグメントが大幅な増収増益となった。

 電話による決算会見で、斉藤恭彦社長は「1―3月期の各利益は前年同期比でマイナスとなったが、上方修正した業績予想に沿ったかたちで、着地することができた。売上、各利益段階とも過去最高を更新した」と総括した。

 セグメント別に見ると、生活環境基盤材料事業は増収増益。塩ビに関しては、世界的な景気後退の様相が市況に表れたが、2022年末に底打ちした。斉藤社長は「塩ビ市場は総じて凪状態だ。北米市場は春需が遅れている。アジア地域では、中国の不動産の状況やインドの購入パターンの動向を注視している」と語った。シンテックの1―3月期は、好調だった前期に比べ減益となったが、10―12月期並みで推移している。カセイソーダ市況は塩ビの市況軟化局面で底堅さを維持したものの年明けから軟化した。

 電子材料事業は増収増益。半導体市場は、昨年秋以降調整局面に入り、状況は年度末時点でも同様だった。半導体材料は全体として年度前半の業績に支えられた。希土類磁石も顧客の生産に対する半導体不足の影響やデータセンター投資の調整の影響が見られたが、他市場向けの出荷で補った。

 機能材料事業は増収増益。一部の製品群で在庫調整や市況下落の影響を受けたが、機能性の高い製品群で補い、収益性の維持を図った。

 加工・商事・技術サービス事業は増収増益。半導体ウエハー関連容器は300㎜用を中心に販売好調で、自動車用入力デバイスも販売が順調に伸びた。食品包装用塩ビラッピングフィルムや建設資材など塩ビ関連製品は、価格改定の浸透により販売が伸びた。

 2024年3月期の通期業績予想については、合理的に行うことが難しいと判断し未定としている。斉藤社長は「経済情勢は刻一刻と変化しており、逆風が強まると見込まれる。市場に浸透するがごとく拡販に努め、事業をさらに広げる手立てを講じていく」と語った。