ランクセス 自動車向けにPAの新製品群を開発

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2018年10月29日

 ドイツの特殊化学品メーカーのランクセスは、ポリアミド(PA)6の新製品群「デュレタン・パフォーマンス」を開発した。繰り返しの機械的負荷に対する長期耐久性が、特に自動車のエンジンルームなどボンネット下のプラスチック部品で、需要が高まっていることを受けたもの。

「デュレタン BKV30PH2.0」の3点曲げ疲労試験の数値
「デュレタン BKV30PH2.0」の3点曲げ疲労試験の数値

 各種グレードを揃えたこの製品は、脈動荷重下での疲労に対して、同じガラス繊維含有量の標準品よりも数倍の耐久性を持つ。今回、新規投入を予定している製品群は、ガラス繊維をそれぞれ30%・35%・40%含有する熱安定性を備えた「デュレタンBKV30PH2.0」「BKV35PH2.0」「BKV40PH2.0」のコンパウンド、ガラス繊維30%で耐衝撃性を強化した「デュレタンBKV130P」コンパウンド。

 同社のデュレタン材料の開発専任者・トーマス・リンダー博士は「新製品は、吸気システムやオイルフィルタモジュール、サイドブレーキなど、自動車向け用途をターゲットにしている」と述べ、ドリルなど電動工具のハウジングや構造部品の用途向けにも注力するとしている。

 新構造素材では、動的挙動に加えて、静的な機械特性も向上しており、同じガラス繊維含有量の標準品と比べ、高温時の引張強度が上がる。リンダー博士によると、この機械特性によって、PA6をベースとするデュレタン・パフォーマンスは多様な場面で、近年非常に高価となったPA66コンパウンドの代替素材となり、ガラス繊維の含有量を増やさないため、素材の高密度化や部品の重量化を伴うことがないという。

 ランクセスは同製品群のさらなる拡充を計画中で、50%と60%のガラス繊維で強化した2つのコンパウンドの発売も予定している。リンダー博士は「こうした素材は、優れた強度と剛性を備えているため、電気・電子モジュールを収める自動車の軽量構造部など、動的負荷を受ける構造部品に最適だ」と述べている。

 

独ランクセス 難燃性PBTコンパウンド製品群を拡充

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2018年10月25日

 ドイツの特殊化学品メーカーのランクセスは、グローワイヤ(赤熱電熱線)テストで卓越した耐火性を発揮したモデルを採用し、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を基材とする、ハロゲンフリーの難燃性コンパウンドの製品群を拡充する。

 新しい製品群は、ガラス繊維を25%含有させ強化したコンパウンドで、まもなく試作品を市場に送り出す予定だ。

 新PBT素材は、0.4~3.0mmの肉厚部で775℃のグローワイヤ着火温度(GWIT)を満たしていることから、ドイツ電気技術者協会(VDE)の認証を得ている(IEC60695-2-13)。また、完成部品に対するグローワイヤテスト(IEC60695-2-11)でも、優れた結果を得た。

 同社は洗濯機や皿洗い機、回転式乾燥機などの部品としての活用も想定しており、これらの用途では、ハロゲン系難燃性素材と同等の高いトラッキング耐性もメリットとなる。

 新グローワイヤ耐性素材の他の特性は、同社がすでに販売しているハロゲンフリーの難燃性PBTコンパウンドの特性と同じで、こうした現行製品には、13∼30%のガラス繊維で強化させたものや、非強化コンパウンドがある。これらはすべて、米国のUL94規格による燃焼性試験で、最高グレードとなるV-0に相当することが確認されている。

 また、紫外線照射に対して高い耐性を持ち、生コンパウンドとの接触による腐食もほとんどない。加えて高い耐熱性というメリットがある。具体的には、UL746Bに基づく相対温度指数が少なくとも140℃となる。

 これらの製品の中でも、非強化「ポカン(Pocan)BFN2502」は卓越している。その特性は市場で際立つもので、ハロゲンフリーの難燃性パッケージにもかかわらず、7%を超す高い破断点伸び率を備えている。

 同製品は、寸法安定性と永続的電気絶縁性が要請される構成部品に最適となる。また、この新PBTは、例えば直流を印加した際に600V(IEC60112/CTI値A法、比較トラッキング指数)という、優れたトラッキング耐性を発揮することから、類似の非強化PBTコンパウンドの代替品にもなる。

ソルベイ PPSの各種押出し成形グレードを上市

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2018年10月24日

 特殊ポリマーの世界的サプライヤーであるソルベイはこのほど、同社の「ライトンポリフェニレンスルフィド(PPS)」の各種押出し成形グレードを上市すると発表した。同製品は要求の厳しい自動車の冷却配管アセンブリ用途として、実績のあるライトンPPS射出成形材料と併用可能。

 PPS押出し成形シリーズは、「ライトンXE3500BL」「ライトンXE4500BL」「ライトンXE5500BL」という3種類のグレードが用意され、グローバル展開している。これらのグレードの剛性は1500~2500MPaの範囲で異なり、様々な肉厚と直径をもつフレキシブルチューブの要件を満たすことができる。

 また、押出し成形後の熱成形にも適している。同社の新たな押出しポリマー技術を使用して作られた柔軟な冷却配管は、高い溶融強度、耐薬品性、熱安定性を示し、破断時引っ張り伸びと衝撃強さが向上している。

 同社の射出成形グレードとしては、「ライトンXE5430BL」(30%ガラス繊維強化)および「ライトンR-4-270BL」(40%ガラス繊維強化)がある。これらの材料は既存のコネクターとブラケット取り付け部品の多くに適合することで定評があり、そのため、エンジンやトランスミッション用に完全調和した一体型の冷却配管アセンブリを自動車OEMが設計することができる。

 同社のSpecialty Polymers global business unitでEuropean Area Development Managerを務めるAndreas Lutz氏は「エンジンルーム内の温度により、既存の冷却配管の設計および材料ソリューションが限界まで押し上げられ、安全マージンが狭められている」と語り、「エンジンの小型化に加え、ターボチャージャー、スーパーチャージャー、自動変速機、エアーコンディショニング、排気再循環システムなどの高温部品が一般的になり、これらすべてがさらに縮小されるエンジンルームに詰め込まれることから「スペース不足」が発生し、過熱部分では従来の金属/ゴムおよびポリアミド樹脂(PA)による設計の耐熱性能を超える可能性がある」と述べている。

 その中でも冷却配管はエンジンルームに収めるための設計が最後に行われるコンポーネントであるため、材料はより複雑な配置を可能にする設計の自由度を与えるだけでなく、重量の増加(断熱構造の追加の必要性など)なしに動作の安全性を確保する、高度な耐熱や耐薬品性能も提供する必要がある。

 同社のライトンPPS押出し成形グレードにより、OEM各社では、大型で高価なパワートレインの流体処理配管から、スマートで軽量の一体型ソリューションへの置き換えが可能になる。このソリューションには、コネクター、オーバーモールドされたブラケットやライトンPPS射出成形グレードで作られた溶着によるブラケットが含まれる。

 ヨーロッパの一部の大手自動車OEMはすでに軽量の「ライトンPPSソリューション」を導入済みだが、他にも様々なクーラント、エンジン、パワートレインのオイル処理システムでの使用を検討中であり、従来の複合材料(金属/ゴム)とPAの設計の置き換えを模索している。

 同氏は「流体処理配管が複雑になればなるほど、軽量化のみならず製造の簡素化および組み立てコスト削減にライトンPPSが貢献できる」と述べている。

ソルベイ PARA樹脂が頸椎前方固定術用器具に採用

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2018年10月4日

 特殊ポリマーの世界的サプライヤーであるソルベイはこのほど、同社の「Ixefポリアリールアミド(PARA)樹脂」により、頸椎前方固定術用の新しい単回使用器具キットが開発されたと発表した。

 脊椎手術機器に特化した医療機器メーカーのインテリジェント・インプラント・システムズ社が開発した「MEDIANTアンテリア・サービカル・プランティング・システム」に採用された。

 IxefPARAは、高い剛性と強度を持ち、耐ガンマ線滅菌、生体適合性が特長。同製品を採用したMEDIANTシステムは、手術室の機能性を高め、現場での滅菌処理を不要にし、感染リスクを低減させる。

 インテリジェント・インプラント・システムズ社のマーク・リチェルソフ社長兼CEOは「『Ixef GS-1022PARA』の優れた剛性と成形性が、器具の製造には不可欠だった」と述べている。

 Ixef GS-1022PARAでは、オウルとピンスクリュードライバーハンドル、測定キャリパー、ロッキングプライヤーハンドルが、インテリジェント・インプラント・システムズ社のキットに組み込まれている。

 この樹脂は耐衝撃性に優れているため、初期のオウルでの設計で使われる予定だった、金属受座も不要になった。これによりコストが削減され、器具の製造と組み立てが簡素化されることで、単回使用器具の経済性がさらに向上した。

クラレファスニング 面ファスナー耐熱タイプでカラー展開

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2018年9月26日

 クラレグループのクラレファスニング(大阪市)は25日、面ファスナー「マジックテープ」耐熱タイプで、カラー展開を開始すると発表した。

 マジックテープ耐熱タイプは、高耐熱性を特長とするPPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維を使用。航空機内装用途で要求される難燃性・耐熱性・低発煙性・低毒性を持ち、航空機シート以外に、保温ジャケットなどの産業資材用途でも採用が進んでいる。

 これまでナチュラル(生成り)色のみの展開だったが、ブラック系など濃色のニーズに対応し、今回新たにブラックとグレーの濃色をラインアップに加えることにした。また、その他の色についても別注での対応を開始する。

 マジックテープ耐熱タイプは、250℃×24時間の高温環境下にさらした後も、面ファスナーのくっつく力=係合力(シアー強力)80%以上を保持。バックコート材を使用しておらず、生産工程でのCO2発生量を約30%削減(当社比)した環境にやさしい製品で、今年30周年を迎えた丸岡工場(福井県)で製織・染色される国内生産品である。

 幅展開ではフック側・ループ側ともに最大100mmまで、指定の幅にスリット対応する。想定用途としては、高耐熱性・難燃性が要求される航空機の内装材固定・シート組み立て部材、消防服・飛行服、溶接現場・溶鉱炉などでの作業服、自動車・鉄道・航空機内の結束バンド、防火シャッター、建材内装材のファスニング、家電関係などが考えられる。

東レ PPS樹脂の耐トラッキンググレードが安全規格を取得

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2018年9月20日

 東レは19日、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂「トレリナ」の耐トラッキング性と強度を向上させた新グレード「A660HV」で、国際的な製品安全規格のUL規格で「ランク0(ゼロ)」、IEC規格で耐トラッキング性の最高ランク「材料グループⅠ」を取得したと発表した。

 600V以上の耐電圧特性をもつ同製品を、高耐圧化・小型化が進む新エネルギー車の電装部品など、高い耐トラッキング性が求められる用途へ展開する。

 PPSは難燃性に優れた素材だが、ナイロンやポリエステルに比べ炭化導電路を形成しやすく、耐トラッキング性が低いことで知られている。

 同社はこれまで、トレリナ耐トラッキング性グレードをパワー半導体モジュール用途を中心に販売してきたが、従来の同グレードはフィラーを高充填しているため靱性が低く、強度が不足する傾向にあった。

 この問題に対し、同社は複数のポリマーをナノメートルオーダーで分散させることで、優れた特性を発現させることができる「NANOALLOY(ナノアロイ)」技術を用い、PPSに耐トラッキング性ポリマーを微分散することで、難燃性と耐トラッキング性を両立しながら、強度の向上を実現した。

 一般的なPPSに比べ、絶縁設計で沿面距離を約半分に縮めることが可能となり、製品の高耐圧化・小型化への貢献が期待される。

 同社は今後、同製品を鉄道や太陽光発電に使われるパワー半導体モジュールのハウジング用途に加え、高耐圧化・小型化のニーズが高まる新エネルギー車のパワーコントロールユニットやバッテリー、充電器などへの提案を進めていく考えだ。

ポリプラスチックス 無理抜き成形可能なPPSのグレード公開

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2018年9月20日

 ポリプラスチックスは19日、「ジュラファイドPPS(ポリフェニレンサルファイド)」の無理抜き成形が可能なグレードを検証し、各種データとともにその検証結果をwebサイトに公開した。

 従来、自動車の冷却系部品(冷却水制御バルブ、インレット、アウトレットパイプなど)は6‐6ポリアミドや芳香族ポリアミドが主に使用されてきたが、ポリアミドは加水分解による強度低下や吸水による寸法変化などを起こすため、設計者にとっては使用が難しい材料。このため、冷却系部品でPPSが採用される事例が非常に増加している。

 ただPPSには、ポリアミドを用いて部品を成形する際に行われる「無理抜き成形」が難しいという課題があることに加え、バリレスが求められる部品にPPSを使用する場合、バリ取り工程が必要になることが多く、コストアップにつながっている。そこで、ユーザーの設計の自由度を高め、材料選定拡大の一助になると考え、ジュラファイドPPSの無理抜き成形が可能なグレードを公開した。

 同社は、エンジニアリングプラスチックのリーディングカンパニーとして、材料技術だけでなく、成形・加工技術の開発にも積極的に取り組んでいる。今回、公開した製品・技術に加え、成形・加工技術を融合させた同社の新たな発想を生産者に届けたいと考えており、今後も技術情報を発信していく方針だ。

GLM スポーツEVのフロント窓に帝人のPC樹脂を採用

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2018年9月14日

 EV(電気自動車)メーカーのGLM(京都市左京区)は13日、帝人と共同開発している樹脂製のフロント窓(フロントウインドー)を搭載したスポーツタイプのEV(スポーツEV)で、「道路運送車両の保安基準(第29条)」を満たす国内認証を取得し、7月に自動車登録番号標(ナンバープレート)を取得したと発表した。

樹脂ウィンドーでナンバーを取得したスポーツEV
樹脂ウィンドーでナンバーを取得したスポーツEV

 GLMが販売するスポーツEV「トミーカイラZZ」への採用を念頭に共同開発しており、約2年をかけ公道での走行が可能になった。認証を取得した車体をベースに、年内には受注生産体制を整え、同車の特別仕様車として来春、販売する。樹脂製のフロントウインドーを搭載した市販車はこれまでなく、世界初を目指す。

 樹脂は軽量でガラスの200倍の耐衝撃性を持つ、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)を採用。その表面に帝人が開発したコーティング剤による特殊加工を施すことで、傷つきやすいPC樹脂の耐摩耗性を、強化ガラス並みに高めることに成功し、車に適用できるようにした。

 このPC樹脂を自動車のフロントウインドー用に縦約700mm、横約1300mmの曲面を持つ一枚板として射出プレス成形。全体の厚みを6mmと均一に保ちながら、窓枠にあたる外側部分を10mmの厚みにするなど両社で改良を重ね、窓枠(Aピラー)をなくすことに成功した。

 Aピラーなどをなくしたことで、搭載した窓の重量は11.8kgと、従来のガラス窓とAピラーの組み合わせに比べ6.6kg(約36%減)も軽くなり、電費の向上も見込める。また、ピラーレスになったことで、オープンカー特有の開放的な視界がより楽しめるメリットも生み出す。

 PC樹脂はガラスに比べて半分ほどの重さで、車体の軽量化に寄与する素材として期待されてきた。しかし、ガラスに比べて耐摩耗性が低く、窓の開閉やワイパーなどにより表面が傷つきやすいことが大きな課題で、これまでのハードコート技術(ウエット法)だけでは、保安基準に対応する耐久性を満たすことができなかった。

 今回、トミーカイラZZに搭載した帝人の樹脂製窓は、透明性が高いPC樹脂に、さらに保護層を作る技術(プラズマCVD法で無機材料をコーティング)を加え、耐摩耗性を0.5~1.5%の耐摩耗性を実現した。これは強化ガラス(耐摩耗性0.5~1.0%)並みに傷つきにくい高い性能となっている。

積水化成品 耐熱・難燃性発泡体を開発

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2018年9月4日

 積水化成品工業は3日、輸送機器などの構造部材に適応可能な耐熱性を持つ難燃性のエンジニアリングプラスチックビーズ法発泡体を開発し、製品化に向けて準備を進めていると発表した。特長は130℃近い環境下でも寸法安定性に優れていること。難燃性ではUL94 V‐2(10倍発泡、t=12mm)相当を達成。軽量性については、発泡倍率5~10倍の範囲で調整可能だ。

 自動車や航空機などの輸送機器分野では、省エネやCO2排出量低減の観点から、構造部材の樹脂化やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の活用などによる軽量化が進んでおり、構造部材として適応可能な、高耐熱・高強度で軽量化に寄与する樹脂素材が求められている。

 同社では、このような市場の要望に応えるため、耐熱・難燃性発泡体を開発した。今後の展開としては、優れた耐熱性や難燃性、軽量性、断熱性などを生かし、自動車や航空機、船舶などの輸送機器に加え、電子機器などの産業分野の構造部材としての展開が可能と考えている。なお、5~7日に開催の「第1回名古屋クルマの軽量化技術展」に展示する予定だ。

クレハ フッ化ビニリデン樹脂の増強設備が竣工

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2018年8月23日

 クレハは22日、いわき事業所(福島県いわき市)で、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)増強設備の竣工式を、同日開催したと発表した。増設規模は2000t/年。9月から試生産を開始し、来年1月に商業生産に入る予定。

PVDFの増強設備

 同社グループには現在、PVDFの製造設備として、

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