東洋紡 植物由来原料100%のPET樹脂の重合に成功

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2022年1月14日

 東洋紡はこのほど、サントリーグループと米国バイオ化学ベンチャーのアネロテック社が共同開発した植物由来原料を100%使用したペットボトルの試作にあたり、原料となる100%バイオPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂の重合に成功した。サントリーとアネロテック社は、2012年から植物由来原料のみを使ったペットボトルの開発に共同で取り組んできた。

東洋紡が重合した100%バイオPET樹脂

 PET樹脂は一般に化石由来の「エチレングリコール(EG)」と「テレフタル酸」を重合して作られる。植物由来EGによるPET樹脂を使ったペットボトルはすでに実用化されているが、テレフタル酸の粗原料「パラキシレン」を植物由来原料から作るのは困難とされてきた。

 今回、アネロテック社の独自技術により非可食のウッドチップから作った植物由来原料100%のテレフタル酸と植物由来のEGから100%バイオPET樹脂を重合した。東洋紡は持続可能な社会の実現に向け植物由来原料への転換やリサイクル資源の活用を積極的に推進しており、2050年までに全フィルム製品のバイオプラスチック化などを目標に掲げている。

サントリーとアネロテック社が開発した植物由来原料100%使用ペットボトル(提供:サントリー)

 今後、100%植物由来原料で高いバリア性能をもつPEF(ポリエチレンフラノエート)フィルムの実用化に向けた取り組みを進める。また、昨年サントリーや東洋紡など国内のプラスチックバリューチェーン各社により設立した合弁会社アールプラスジャパンによる使用済みプラスチックの再資源化事業に参画するなど、循環型経済実現への貢献に努めていく。

東レ・カーボンマジック SCTに資本参加、開発を加速

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2022年1月14日

 東レ・カーボンマジック(TCM)はこのほど、モビリティをはじめとする産業用途での事業拡大を図るため、RTM(レジン・トランスファー・モールディング:樹脂注入)成形による〝ものづくり〟を強みとするSCT(群馬県伊勢崎市)へ資本参加したと発表した。

 SCTは、独自の成形技術開発によりFRPの高性能化・高精度化・高品質化を推し進め、数多くの製品化を実現しており、その技術力と実績で高い評価を得ている。最新の複合材は、軽量化による省エネルギー化、ひいてはカーボンニュートラルの実現に向けて、様々な用途での活用が急速に進んでいる。

 両社は、今回の資本参加を機に協業体制をさらに強化し、顧客のより広範なニーズに応えるために、TCMがもつ設計・解析技術と、SCTがもつ成形技術とノウハウを融合させて創造的な製品開発を加速していく。

 RTM成形には多様な成形手法があり、その中でSCTが得意とするのは、VaRTM成形、L‐RTM成形と呼ばれる製法。TCMが得意とするオートクレーブ成形法と比較した場合の利点として、①オートクレーブなどの専用設備が不要、②大型製品の一体成形が可能、③成形品の表面平滑性が安定、④成形・型材料の選択肢が広がりコストの低減が可能、⑤成形エネルギーの抑制が可能、などが挙げられる。

 また、ウェットレイアップ工法のFRPに対しては、①高い繊維含有率により物性が向上、②厚み精度と積層構造が安定、③成形の作業環境が改善、といった利点がある。両社は、これらの利点を顧客へ提供していくために、共に技術を研鑽していく。

旭化成 3密見える化ソリューション、東邦大学が採用

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2022年1月14日

 旭化成は13日、新型コロナウイルス感染症対策を目的に提供するCO2センサーを使った換気状況の確認サービス「3密見える化ソリューション」が東邦大学の習志野キャンパスで新たに採用されたと発表した。

3密見える化ソリューション CO2センサーの設置

 CO2センサーで密閉・密集の状況をモニタリングすることにより、適切な換気を管理できることは広く知られている。同大学では学生や教職員の安全、そして保護者の安心を確保するため感染症対策を推進しており、今回、さらなる対策の向上を目的に、習志野キャンパスの理学部Ⅲ号館、Ⅳ号館、Ⅴ号館に、同ソリューションが導入された。

 同ソリューションには温湿度センサーに加え、旭化成エレクトロニクスの子会社センスエアー社の高精度かつ低消費電力のCO2センサーが内蔵され、約1分間隔でセンサーの計測データをクラウドに送信。これにより、各教室のCO2濃度、温度、湿度情報を管理部署で一括確認することが可能になる。さらに旭化成が提供する無償アプリ「換気View」をインストールすることで、学生・教職員を問わず誰でもスマートフォンなどからその場所のCO2濃度をリアルタイムで確認できる。

3密見える化ソリューション 学生向けのアプリインストール啓発ポスター

 同大学では、今月からの大学入学共通テストや入学試験に際しても同ソリューションを活用する予定で、学生や教職員のみならず、受験生に向けても安心できる環境の提供を目指す。また、得られたデータを蓄積し、さらなる効果的な感染予防策を講じていくことで、より安全に学習や研究活動に取り組めるようなキャンパスを提供していく。同社は今後も、同ソリューションの提供を通じ、教育機関や飲食店、商業施設などにおける換気管理の支援に取り組んでいく。

日本ゼオン COPリサイクル技術を確立、高岡にプラント

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2022年1月12日

 日本ゼオンは11日、シクロオレフィンポリマー(COP)のリサイクル技術を独自に開発したと発表した。新しいリサイクル技術により、これまで課題であった透明性や高純度を維持することに成功し、バージン樹脂と同等の品質レベルまで再生可能となる。高岡工場内(富山県)に、年産能力6000tのリサイクルプラントを建設。2022年10月より着工し、2024年8月の稼働を予定している。なお、リサイクル樹脂はバージン樹脂に比べ、製造時のCO2発生量を約1万2000t削減することにつながる。

 同社のCOP「ZEONEX」「ZEONOR」は、優れた光学的・化学的特性をもち、光学レンズや光学フィルムから医療・バイオテクノロジーの分野に至るまで幅広く利用され、高い評価を得ている。また、独自で開発した溶融押出法により自社加工している光学フィルム「ゼオノアフィルム」は、ディスプレイの大型化に伴う市場拡大に合わせ、堅調な需要が継続している。

 今回新たに開発したリサイクル技術は、光学フィルム製造時に排出される廃棄樹脂を再生する。プラスチックリサイクルは現在大きな社会課題の1つとなっているが、特に光学用途では、要求品質に見合う技術の確立が求められていた。

 今回開発したリサイクル技術は、透明性や純度などの品質面でバージン樹脂と同等のレベルであることを確認。リサイクルした樹脂は、光学フィルムの製造に再利用される計画であり、今後も見込まれるおう盛なニーズに応えていく。

 同社は、「大地の永遠と人類の繁栄に貢献する」という企業理念の下、2021年度よりスタートした中期経営計画において2030年のビジョンを「社会の期待と社員の意欲に応える会社」と設定。今回の技術開発ならびにリサイクルプラントの稼働は、COPのさらなる差別化につながるとともに、廃棄樹脂の再利用や製造時のCO2削減といった持続可能な社会の実現に寄与する。今後も大地(ゼオ)と永遠(エオン)からなるゼオンの名にふさわしく、独創的な技術・製品・サービスの提供を通じ、「持続可能な地球」と「安心で快適な人々の暮らし」に貢献していく。

日本触媒 抗ウイルス効果の新規コーティング材を共同開発

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2022年1月11日

 日本触媒と大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻の宇山浩教授のグループは7日、様々な素材表面に抗菌および抗ウイルス効果の付与が期待できるコーティング材料を共同開発したと発表した。新たに開発したコーティング材料は、フタロシアニン金属錯体による抗菌・抗ウイルス効果と、酢酸セルロースによる接着機能を発現する。

新規コーティング材を塗布したアクリル板

 両者は、同研究科に設置した「日本触媒協働研究所」を拠点に共同開発を進め、様々な細菌・真菌・ウイルスを不活化することが可能な一重項酸素を発生する光増感剤に着目。既存の光増感剤を比較評価したところ、一重項酸素放出能とその安定性の観点で、フタロシアニン金属錯体が最適であることを見出した。

 さらに、日本触媒でこれまで培った赤外線カットフィルター用などの色素の設計技術を駆使してフタロシアニンの構造を最適化。酢酸セルロースへの分散性が高く、かつ長期間にわたり一重項酸素を生成可能なフタロシアニン金属錯体を開発した。

 同開発品をコーティングしたアクリル板の抗ウイルス性能をISOに規定する試験方法で評価したところ、ヒトコロナウイルスを99.9%以上不活化することを確認。抗ウイルス効果をもつコーティング材料として衛生対策が必要な幅広い用途への利用が期待される。

 両者は今後も、同協働研究所内で、同研究科の最先端の学術的な知見や情報技術基盤と、日本触媒の触媒、有機合成、高分子合成などの保有技術の融合を図るとともに、データサイエンスを活用することで、革新技術の創出と事業創出、そして研究人材の育成を推進していく。

 

花王 持続可能なプラ資源循環プロジェクトに参画

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2022年1月7日

 花王はこのほど、商業施設から発生するプラスチックの回収・リサイクルを東京都全域に拡大する「POOL PROJECT TOKYO」に参画すると発表した。

 資源循環プラットフォームサービスや資源循環コンサルティングを提供するレコテックが開始した事業で、東京都の「プラスチック資源循環に向けた革新的リサイクル技術・ビジネスモデル推進プロジェクト」にも採択され、東京都と共同して使い捨てプラスチックの削減と、プラスチックの資源循環を促進していく。東京都内の商業施設から発生した廃プラスチックを効率的に回収し、高度マテリアルリサイクルを行う。

 再生されたプラスチックは、発生元から輸送・減容・加工など全過程でのトレーサビリティがとれたPCR(ポストコンシューマーリサイクル)材「POOL樹脂」として製造業者へ販売するとともに、同樹脂を活用した製品開発・ブランディングを行う。また、汚れが付着したり分別が難しいプラスチックは、一部ケミカルリサイクルのテストを実施し、汚れ具合や分別精度による物流・保管を含めたリサイクル工程や成果物の検証を行う。

 花王は、得られた再生プラスチックの物性評価と容器包装への適用検討を担当する。

産総研 酸化物系電解質材料で全固体LIBが室温作動

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2021年12月28日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、次世代リチウムイオン電池(LIB)である酸化物系全固体電池用の高容量正極と負極を開発した。高エネルギーで安全なLIBに向けての前進だ。

 全固体LIBは複合正極層・隔離層・複合負極層からなり、リチウム(Li)イオンが各層内の固体電解質粒子を介して移動することで充放電する。正極層に高エネルギー密度の硫黄(S)、隔離層に硫化物、負極層にLiを使った全固体リチウム硫黄電池は、現行LIBに比べてエネルギー密度が大幅に向上するが、充放電で負極のLi金属が針状に成長(デンドライト成長)して短絡すること、硫化物系電解質が空気中で分解して有毒な硫化水素を発生することが問題である。正・負極をLi2SとSiにすることでデンドライト成長を抑制。酸化物系固体電解質粒子は有毒ガス発生の危険性は低いが、一般的に硬く粒子間の接触が悪いため、高容量活物質で反応性の低いLi2O・Si電極での室温作動の報告はない。

 産総研は、酸化物系固体電解質(Li2SO4‐Li2CO3‐LiX)が変形性とイオン伝導性が高いことを発見したが、フルセルの室温試験での性能は不十分であった。今回、比較的イオン伝導率の高い酸化物系固体電解質としてLi2O‐LiIガラスに注目し、その原料(Li2O、LiI)と電極活物質(正極はLi2S、負極はSi)、カーボンなどの導電材料を一括混合・メカニカルミリング処理し、電極内固体電解質材料合成と電極合材の複合化を同時に行った。

 Li2SとSiは結晶構造が壊れても充放電特性の低下がないため、微細化することで電池特性が向上。またこの製造方法により活物質粒子‐固体電解質粒子間、固体電解質粒子間の接点が大幅に改善された正極・負極合材を得た。さらに、常温プレスのみで電極を形成でき、生産性は高い。隔離層に硫化物系固体電解質材料(Li3PS4‐LiI)を用いたフルセル試験では、25℃でエネルギー密度283Wh/㎏と、現行の液系LIBとも比肩し得る値を示した。

 今後は電解質材料の充放電サイクル安定性とイオン伝導率の改善、活物質増量によるエネルギー密度の向上、薄膜化を検討する。産業界のパートナーと連携し研究を加速し、全固体リチウム硫黄電池の早期実現を目指す。

BASF 産業規模のガス精製で組成をリアルタイム分析

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2021年12月28日

 BASFはこのほど、CO2分離・回収設備の商用初号機を設置したアンモニア工場の立ち上げから50年を迎えた。以来、ガス精製分野の革新と成長を追求し、天然ガスや合成ガスを使用するために特定成分を安全に除去するガス精製技術、さらに製油所の排ガス、燃焼排ガス、バイオガス向けなど様々なガス精製ソリューションを開発・提供。世界中で500超の採用実績がある。

 10年前から「OASE(オーエイス)」ブランドで、技術・ガス吸収液・包括的サービス一式を提供。ガス精製効率が高く、資源の保全・省エネルギーによるCO2排出量削減に貢献し、同社ポートフォリオの中でサステナビリティに大きく貢献する「アクセラレーター」製品の1つになっている。

 一昨年には革新的デジタルプラットフォーム「OASE connect」を構築。シミュレーションツールによるプラント運転の最適化とサンプル分析結果の保存、eラーニング教材によるガス精製技術の学習ができる。また昨年、米エクソンモービル社と共同で高エネルギー効率のCO2排出量削減と硫黄回収のためのガス精製技術「OASE sulfexx」を開発した。

 今年発表予定の「OASE digilab」は、ガス精製効率をさらに向上させる。BASFグループのtrinamiX社(ドイツ、ルートヴィッヒスハーフェン)と共同で、ガス吸収液の状態をほぼリアルタイムで分析する方法を開発。モバイル型近赤外分光器とデータ分析技術を組み合わせ、サンプル組成を定性・定量的に分析判定する。

 これにより、ガス精製条件を継続的にモニターし、最適な吸収液で稼働できる。ガス中のCO2や硫化水素などの酸性ガスは、吸収塔の中でガス吸収液と向流接触し、吸収液と反応して分離される。酸性ガスを吸収した吸収液は、再生塔で加熱されて酸性ガスを分離。その後冷却して吸収塔に再循環させる。分離回収されたCO2は純度が高く、化学合成用途にも使用できる。

 「OASE」ガス精製プロセスは省エネルギーで可用性が高く、大量の高純度ガスを提供する。また、特定のガス成分の選択的分離回収も可能。ガス吸収液は安定性が高く耐用年数が長いため、補充量も最小限で済むとしている。

三井化学 J‐CEPに参画、CEに向けた産官学民連携

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2021年12月28日

 三井化学はこのほど、サーキュラーエコノミー(CE)の推進に取り組む産官学民連携の新事業共創パートナーシップ「ジャパン・サーキュラ―・エコノミー・パートナーシップ」(J‐CEP)に参画したと発表した。

サーキュラーエコノミーの推進に取り組む産官学民連携の新事業共創パートナーシップ

 今年10月20日に旗揚げしたJ‐CEPには、事務局となるアミタホールディングス、NECソリューションイノベータをはじめ、30社が加盟(12月15日時点)、三井化学は幹事会社(全5社)を務めている。

 「ものと情報と気持ちがめぐる社会」を目指し、ものに付随する情報や関わる人の動機性までも「資源」と捉え、ICTなどを活用して再構築することで、①日本国内の資源の最適循環②持続可能社会の実現に資するビジネス創出、に取り組み、環境と経済が両立する社会の最適解を導くことが目的。

 活動第1弾として、兵庫県神戸市とアミタが主体となり進める「プラスチック資源に特化した回収ステーション」に、J‐CEPが連携団体として参画中だ。11月4日から約3カ月間、同市長田区にあるふたば学舎(コミュニティ施設)にコミュニティスペースを備える資源回収ステーションを設置。プラスチックを中心とした資源を、リサイクル後の利用目的に応じて品目別に回収し、併せてリユース品の回収・交換スペースの設置や、資源回収量に応じた寄付などを実施することで、同市のプラスチック再資源化率向上と、互助・共助のコミュニティづくりを進めている。

 その中で三井化学は、〝神戸市の「まわり続けるリサイクル」の推進に資するマテリアルリサイクル(MR)〟の実施を予定。具体的には、回収したプラ資源を三井化学の技術を活用してMRの検討を行い、ふたば学舎で利用するベンチを作成するための実証実験を計画している。

神戸市で取り組む資源回収ステーションの全体図 ©J-CEP

中外製薬 アジア国際共同研究「A‐TRAIN」に参画

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2021年12月28日

 中外製薬は27日、国立がん研究センターと共同研究契約を締結し、同センター中央病院が中心となって進めるアジア多施設共同前向き研究「A‐TRAIN(エー・トレイン)」に参画したと発表した。

 エー・トレインは、アジアでの発生頻度が高い6種類の難治がん(子宮頸がん、卵巣明細胞がん、卵巣がん、上咽頭がん、子宮体がん、トリプルネガティブ乳がん)に対して、リキッドバイオプシー検査による遺伝子解析および臨床情報を合わせたデータベースを構築・解析する国際共同研究。同研究を通じ、治療標的となりうる遺伝子異常の特定や治験の実施につなげることで、アジア地域に多い難治がんに対する個別化医療の基盤構築および治療薬の研究開発を推進することを目指す。

 共同研究で中外製薬は、ロシュ社と協働の上、卵巣がんコホートにおける遺伝子解析検査として、血液を用いたリキッドバイオプシー検査である「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」を提供する。

 奥田修社長CEOは「アジア諸国におけるがんの問題は深刻さを増しており、質の高いがん治療の実現は重要な課題だ。今回研究が、この地域におけるがん個別化医療の基盤構築および研究開発の推進につながることを期待している」と述べている。