帝人 高機能繊維の複合材料集成材、ブランド展開を開始

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2021年9月22日

 帝人は21日、複合材料集成材「LIVELY WOOD」を使用した木造モバイル建築ユニットの製造を開始し、「LIVELY VILLA」ブランドとして販売展開を開始すると発表した。

高機能繊維を用いた複合材料集成材「LIVELY WOOD」
高機能繊維を用いた複合材料集成材「LIVELY WOOD」

 「LIVELY VILLA」は、高機能繊維により木材と同等の軽量性と鉄骨並みの高い剛性を併せもつ「LIVELY WOOD」を使用した、移設可能な木造モバイル建築ユニット。用途として、医療介護や福祉サービスの施設での面会・簡易診察用の施設や、ワーケーション施設、宿泊施設、グランピング施設、さらには非常時の仮設住宅などとしての活用が想定される。

 特長として、梁の一部に「LIVELY WOOD」を採用することにより、モバイル建築ユニットを吊り上げる際に生じる建物全体の変形を抑制し、容易に移設を繰り返すことができる。また、使用する木材も、設置する地域の木材を使用する地産地消がコンセプトとなっている。帝人は、協力工場に製造委託を行い、別注品(400万円~)として販売展開を行っていく考えだ。

移設可能な木造モバイル建築ユニット「LIVELY VILLA」
移設可能な木造モバイル建築ユニット「LIVELY VILLA」

 こうした中、ブランド展開の第1弾として、高齢者の福祉サービスを総合的に提供する長陽会(大分県佐伯市)の福祉施設に、3台(サイズ:長さ約6m、奥行き約2m、高さ約2.8m)が採用された。コロナ対策の一環として、家族との面会や簡易診察用の臨時施設として使用される。

 採用理由として、①壁や床に、杉や檜などの国産木材を使用し、温かみのある室内空間を実現、②室内を陰圧にすることによる室内空気の流出低減や、HEPAフィルター搭載の空気清浄装置の使用による室内空気の浄化といった感染症の二次感染リスク低減に貢献する構造、③新型コロナ感染者の利用を想定し、床や壁などをアルコール消毒することが可能、などが挙げられる。

 同社は同ブランドの普及を図ることにより、木材の地産地消の促進や、災害時に仮設住宅として役立つことを目指し、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」となることと、SDGsの目標達成への貢献に向けてまい進していく。

三菱ケミカル 遮炎機能をもつ熱可塑性複合材料を開発

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2021年9月22日

 三菱ケミカルは21日、子会社である三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズとともに、遮炎機能と、高い生産性やリサイクル性を併せもつ熱可塑性複合材料(FRTP)を開発したと発表した。

 近年、気候変動対策として、CO2排出削減に向けた取り組みが進む中、モビリティの分野では電動化の動きが加速している。EVに代表される電動モビリティのバッテリーシステムは、搭乗者の安全を確保するための高い遮炎性と、省エネのための軽量化が求められている。従来、難燃機能の付与が比較的容易であり、軽量化を実現できる熱硬化性複合材が使用されてきたが、生産サイクルが長いこと、リサイクル性が低いことが課題となっていた。

 今回の開発品は、同社グループがもつ繊維や樹脂、バッテリーシステムに関する技術とノウハウを結集し、熱可塑性樹脂をベースに繊維や樹脂の組成を工夫することで、強度・剛性や軽量性と加工性、リサイクル特性を同時に達成。加えて難燃機能も向上させ、実験では1000℃以上の火炎を5分以上遮炎することを確認している。現在、一部の顧客との間でサンプルワークを進め、バッテリーパックの外装など用途開拓にも取り組んでいる。

 三菱ケミカルは、多様化・高度化する顧客の要望に応える複数の新製品の開発を進めており、今後も引き続き、最適なソリューションをタイムリーに提供することで、積極的に事業を展開していく考えだ。

 

ブラスケム ETBE生産倍増、バイオ燃料需要増に対応

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2021年9月21日

 ブラスケムはこのほど、持続可能なソリューションへの世界的な需要拡大に対応するために、ブラジルでのエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)の生産能力を増強したと発表した。

ブラジル・リオグランデドスル州のトリウンフォコンプレックスでETBE設備を整備
ブラジル・リオグランデドスル州のトリウンフォコンプレックスでETBE設備を整備

 同国リオグランデドスル州のメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)プラントをETBE用に転換したもので、投資額は設備の調整や交換などで500万レアル(約1億1000万円)以上。バイーア州にあるETBE既存設備と合わせ、同国内での生産能力は2倍に拡大した。

 ETBEはMTBEと同様に、自動車用ガソリンのオクタン価を向上させる添加剤。ETBEはエタノール(43%)とイソブテン(57%)を反応させて作るが、同社ではバイオ原料由来のエタノールを原料とすることから、メタノールから作られるMTBEの代替品として、バイオ燃料・添加剤分野での需要増に対応していく。また、ブラジル国家石油庁(ANP)が採用する換算方法によれば、同社ETBEの生産一tあたり、MTBEと比較して847kgのCO2排出削減が可能だとしている。

 ブラスケムは、ETBEの生産を通じて要求の厳しい市場での持続可能性の基準を満たすだけでなく、気候変動緩和へも貢献していく考えだ。担当者は「様々な市場、特に欧州やアジアの国々でのバイオ燃料義務化に対応する製品だ。増産により競争優位性を高め、この分野でのグローバルプレーヤーとしての地位を強化する」とコメントしている。

 

帝人フロンティア 極細繊維を活用した水切りマット、販売を開始

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2021年9月21日

 帝人フロンティアはこのほど、極細繊維を使った掃除グッズ「あっちこっち」シリーズの新商品として、抗菌性があり、吸水性と速乾性を併せもつ「あっちこっち 水切りマット」を開発し、販売を開始した。

あっちこっち水切りマット
あっちこっち水切りマット

 水切りマットの特長として、①同社独自の極細繊維「ミクロスター」を使用した厚手のワッフル調生地とすることで、コップ一杯分(約300㎖)の水をしっかり吸収。水切りカゴなどの代わりに使用できる。また折りたたんで収納可能なため、シンク周りをすっきり保つ。②表面はソフトで、ふきんや食器拭きとしても使用がきる。また速乾性があるため毎日の洗濯も簡単。③抗菌加工により悪玉菌(黄色ブドウ球菌)の増殖を抑制し、イヤな臭いを抑える。

あっちこっち水切りマット」の使用例
「あっちこっち水切りマット」の使用例

 同社は、この新商品の展開により、昨今の急激な生活様式の変化から一層の高まりを見せている、安全・便利・シンプルといった日用雑貨に対するニーズに対応していく。新商品は、インターネット通販Amazonで販売を開始し、その後、テイジン公式オンラインショップ「くらし@サイエンス」や全国の日用雑貨小売店などへと販路を拡大する予定。販売目標として、上市1年目となる2021年度は5万枚、2022年度には10万枚を目指す。

富士フイルム 画像診断支援AIの有効性をインドで検証

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2021年9月21日

 富士フイルムはこのほど、新興国向け健康診断サービス事業の新たな取り組みとして、画像診断支援AI技術の有効性実証に向けた検証事業をインドで開始した。

今年2月にインドに開設した健診センター「NURA」
今年2月にインドに開設した健診センター「NURA」

 今年2月に同国に開設した健診センター「NURA(ニューラ)」を活用する。なお、同事業は、日本企業がデジタル技術を生かしながら、経済発展著しいアジア新興国の社会課題解決に貢献する活動として高い評価を受け、経済産業省が推進する「アジアDX促進事業」に採択された。

 同社は、今年2月に新興国での健康診断サービス事業を開始し、第1弾として、がん検診を中心とした健診センター「NURA」をインドのベンガルールにオープンした。NURAでは、高精細な診断画像を提供する同社の医療機器やAI技術を活用した医療ITシステムなどで医師の診断をサポートし、がん検診をはじめ生活習慣病検査サービスを提供している。

 これまでに、ベンガルールを中心としたエリアの居住者や近隣企業・医療施設関係者など、20~80代までの幅広い年齢層のユーザーが受診。スピーディーかつ高品質なサービス内容に対して高い評価を得ている。

「NURA」でのCT検査
「NURA」でのCT検査

 今回開始する検証事業では、来年1月までに、NURA受診者のうち2000人分の胸部CT画像データを対象として、AI技術を活用した画像診断支援機能を使った検診が、病変の見落としの防止や読影スピード向上につながることを検証する。

 具体的にはNURAで撮影したCT画像に対し、画像診断支援AI技術を活用して医師が読影した結果と、別の医師が同技術を活用せずに読影した結果を比較し、診断結果とスピードの差異を分析。これらの結果を基に、AI技術によって見落としを防止しつつ医師の読影ワークフロー全体にかかる時間を削減する効果を実証し、新興国の限られた医療リソースでも効果的に健診サービスの展開が可能であることを実証する。また、新興国の健診サービス向けに、CT画像から腹部(腎臓・肝臓・胆のう)の異常検出を支援する新たなAI技術の開発も行う予定。

 

三菱ケミカル リサイクル性に優れた耐熱OPSシートを開発

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2021年9月21日

 三菱ケミカルは17日、サーキュラーエコノミー(循環型経済)やSDGs実現への貢献のための取り組みとして、リサイクル性に優れた耐熱二軸延伸ポリスチレンシート(耐熱OPSシート)を開発し、量産体制を整えたと発表した。

OPS(従来品)

 OPSは軽量ながら強度があり、透明性や成形加工性にも優れるため、弁当容器のフタなど食品包装容器として広く使用されている。

 OPSを成形加工する工程では、シートを打ち抜く際に端材が発生するため、従来から原料としてリサイクルする取り組みが行われてきた。しかし、電子レンジで使用可能な耐熱性の高いOPSは、端材を溶かしても混ぜ合わせにくいため再シート化が難しく、リサイクルに適さないという課題を抱えていた。

 同社は今回、こうした顧客の課題意識を踏まえ、原料メーカーと共同で取り組み、顧客の製造工程内でリサイクル可能な耐熱OPSを開発した。すでに複数の顧客との間でサンプルワークを進めており、一部で採用も決定している。

 同社は、三菱ケミカルホールディングスグループが掲げる中長期経営基本戦略の下、サーキュラーエコノミーの推進を「KAITEKI」実現のキーエレメントと位置づけており、製品などのリサイクルはその重要な取り組みの1つと捉えている。同社は今後も、自社だけでなく顧客サイドの使用時のリサイクルにも配慮した製品設計を進めることで、SDGsの達成や持続可能な社会の実現に貢献していく。

SEMI 半導体製造装置販売額、2Qは四半期で最高に

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2021年9月17日

 SEMIはこのほど、半導体製造装置(新品)の今年2Q(4-6月期)世界総販売額が248億7000万ドルとなったと発表した。これは前期(1Q、1-3月期)比で5%増、前年同期比では48%増の大幅な伸長となり、四半期ベースで過去最高を記録した。なお、このデータの詳細は、SEMIが発行する世界半導体製造装置市場統計(WWSEMS)で提供されている。

 地域別の2Q装置販売額を見ると、1位が中国(82億2000万ドル)、2位が韓国(66億2000万ドル)、3位が台湾(50億4000万ドル)、4位が日本(17億7000万ドル)となった。中国は前年同期比79%増、前期比38%増と大幅プラスとなっており、前期比9%減となった韓国を抜いて1位に浮上した。台湾も前期比では12%減とマイナス。日本は前期比7%増のプラスだった。また5位の米国(16億8000万ドル)と7位の欧州(7億1000万ドル)は、前期比で20%以上伸ばしており、今後の動向が注目される。

AGC メッセンジャーRNA生産設備、独工場で新設

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2021年9月17日

 AGCはこのほど、バイオ医薬品の製造開発受託(CDMO)事業子会社である米AGCバイオロジクスが、ドイツのハイデルベルグ工場に、メッセンジャーRNA(mRNA)の製造受託サービスの提供体制を構築するとともに、その原料となるプラスミドDNA(pDNA)生産ラインの増設を決定したと発表した。2023年中ごろの稼働開始を予定している。

AGCバイオロジクスのハイデルベルグ工場(ドイツ)

 新型コロナウイルスワクチン用途で実用化されているmRNAは、新しい創薬モダリティとして注目が集まっており、ワクチン以外の分野も含め世界的な需要増が期待されている。AGCバイオロジクスは、すでにハイデルベルグ工場で事業化しているpDNAの製造受託事業で培った技術やノウハウを生かし、新たにmRNAの製造受託サービスを提供する。

 また、先日発表した遺伝子・細胞治療薬拠点であるイタリアのミラノ工場の増強、および米国のロングモント工場の買収に加え、mRNAだけでなく遺伝子・細胞治療向けの原料でもあるpDNAの製造能力を増強することで、世界でも数少ない原料から遺伝子細胞治療まで一気通貫のサービスを提供できるCDMOとしてさらに成長を加速させていく。

 AGCグループは、ライフサイエンス事業を戦略事業の1つと位置づける。合成医農薬CDMO、動物細胞と微生物を使ったバイオ医薬品CDMOで積極的な買収・設備投資を行い、その事業を拡大させてきた。さらに、昨年には成長著しい遺伝子・細胞治療分野に事業の幅を広げており、2025年の目標として売上高2000億円以上を掲げている。

 今後も各地域の顧客にグローバルで統一された高水準の品質・サービスを提供できるよう、各拠点のシナジーを最大限に発揮させ、製薬会社、患者、そして社会に貢献していく。

AGCグループCDMO事業拠点

エレファンテック 新開発、厚膜フレキシブル基板を投入

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2021年9月17日

 プリンテッド・エレクトロニクス製造技術の開発やサービス提供を行うエレファンテックは、高速無電解めっきを活用したフレキシブル基板(FPC)に、基板上の配線となる銅膜の厚さが12㎛の厚膜タイプの「P-Flex PI」をラインアップに加え、15日から受注を開始した。銅膜厚を従来品と比べて4倍に厚くしたことで、高い電流値にも対応可能となることから、顧客ニーズへの適応力を高め、新たな市場開拓を図る考えだ。

新たにラインアップに加わった厚膜の「P-Flex PI」

 同社のFPCは、インクジェット技術をベースにした独自製法「ピュアアディティブ法」で製造する。従来のエッチング法と異なり製造工程を大幅に簡略化できるため、エネルギーや水の使用量や廃棄物量の劇的な削減により、環境負荷が低い、試作や量産への柔軟な対応が可能、高いコスト競争力をもつといった特長を備える。ただその利点の反面で、高耐熱性のポリイミド基材に同製法を施した「P-Flex PI」の銅膜厚は標準仕様で3㎛と一般的なFPCに比べて薄く、用途によっては使用できないという課題があった。ユーザーからは「銅膜がもっと厚ければ、高い電流値に対応でき電圧降下も抑えられるため、適用範囲が広がる」との声も多かった。

厚膜「P-Flex PI」(左)と既存品の走査電子顕微鏡による断面図

 同製法では樹脂製のフィルム基板上に銀をインクジェット印刷したのちに、無電解銅めっきを行う。この無電解銅めっきは、インクジェット印刷した銀が触媒として働くことで銀を印刷した部分にのみ銅が成長する仕組み。銀を印刷した部分に均一に成長する「均一性」、銀を印刷していない部分には成長しない「選択性」、高速に成長するための「高速性」の3つの要素が必要になる。これまで銅膜を厚く成長させること自体は研究レベルではできていたものの、量産レベルでは3要素をうまく調整することができず量産での供給は銅膜厚3㎛が限界だった。そこで印刷プロセスとめっきプロセスを同時に最適化し3要素のバランスを追求することにより、12㎛の銅膜厚を形成させながらも量産化に成功した。

厚膜「P-Flex PI」の層構成

 今回開発した厚膜の「P-Flex PI」は、エレファンテックの大規模量産実証拠点「AMC名古屋」での生産を予定する。同拠点の現在の生産能力は月産2万㎡。厚膜タイプを加えラインアップを強化し、既存品と合わせでフル生産を目指す。なお、開発にあたっては、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の成果の一部を活用した。

 

NEDOと産総研 誘電体基板の温度特性が計測可能に

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2021年9月16日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、高周波回路などに使われる金属張りの誘電体基板の誘電率と導電率の温度特性を、10G㎐~100G㎐超の超広帯域で計測する技術を確立した。幅広い温度域での低損失化が要求されるミリ波対応材料の開発を後押しするとともに、ミリ波を使う次世代高速無線通信のポスト5G.6G実現に向けた材料やデバイスの開発期間の大幅な短縮が期待される。

 今回の技術の確立に際し、両者は新たに温度制御可能な超広帯域動作の共振器を開発。この装置は、ミリ波帯での超広帯域の材料計測が可能な平衡型円板共振器を、銅板に埋め込んだヒーターと熱電対で局所加熱して温度制御するもので、恒温チャンバーや耐熱性ミリ波ケーブルなど大掛かりで高コストな装置や部材を使わずに、100G㎐超までの超広帯域特性を、室温から100℃の温度域で計測できる。誘電体基板材料の誘電率と導電率の温度特性を計測することで、材料設計・開発へのフィードバックだけでなく、計測した材料を使った回路やデバイス性能の温度依存性の推定が可能になる。

 今回、シクロオレフィンポリマーと合成石英の誘電率と、シクロオレフィンポリマー基板上に形成した金属層の導電率の温度依存性を計測しシミュレーションしたところ、シクロオレフィンポリマー基板回路の125G㎐での伝送損失(㏈/㎝)は、温度が25℃から100℃に上昇すると約18%増大することがわかった。

 今後、産総研は今回開発した材料計測技術と計算科学やプロセス技術を融合し、より良い物性値のミリ波対応材料を得るための分子構造や配合比、プロセスなどの最適化条件を予測できるように、データプラットフォームの拡充に取り組む。