産総研など 次世代有機LEDの発光効率低下の原因解明

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2021年7月28日

 産業技術総合研究所(産総研)、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構、九州大学の研究チームはこのほど、次世代有機LED材料の電子の動きを直接観察することに成功し、発光効率低下の原因を解明した。

 有機LED(OLED)は、外部からの電気刺激により励起状態となった分子中の電子が元の状態(基底状態)に戻る際に発する光を利用したデバイスだ。しかし、最も多く生成する励起三重項状態は発光しにくい性質があり、この状態をどのように発光させるかが大きな課題である。

 OLED用発光材料の1つである熱活性型遅延蛍光(TADF)材料は、巧みな分子設計によりレアメタルを使用することなく、励起三重項状態を熱エネルギーによって励起一重項状態に遷移させることが可能で、内部量子効率(励起電子数に対する生成光子数)は理論限界である100%に達する。薄膜構造の制御により外部量子効率(材料内生成光子数に対する外部放出光子数)の向上が見込まれることから、単一膜デバイスが注目されているが、単一膜の励起三重項状態が発光しにくい理由は解明されていない。TADF材料の発光は、励起状態の電子の動きに支配される。

 今回、改良した時間分解光電子顕微鏡を使い、TADF薄膜のTADF発光過程の電子の動きを直接観察することが可能になり、励起電子の生成・発光による失活・無輻射失活過程までの電子の動きを捉えることに成功。その結果、励起電子により生成した励起子が自発的に解離して長寿命の電子を生成し、TADFの発光効率を低下させていることを突き止めた。この励起子解離の過程と量を捉えられる観察手法は、TADF薄膜の光物性の系統的な解明に資するものだ。これにより、まだ十分な理解が得られていないTADF発光過程の詳細が明らかになり、TADF薄膜材料を利用した超高効率OLEDの開発推進が期待される。

 

BASF PU断熱フォームがワクチン物流設備に採用

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2021年7月28日

 BASFはこのほど、高品質ポリウレタン(PU)フォーム断熱ソリューション「エラストピア」が断熱パネルと商業・産業用冷蔵システムメーカーのユナイテッドパネルシステム社(マレーシア)が製造する新型コロナワクチン物流設備用の断熱パネルに採用されたと発表した。

 ワクチンの効力維持のためには、マイナス70℃からプラス8℃までの超低温での保存が必要で、冷蔵設備への信頼性は重要。「エラストピアPH 1132/509/0」はその高い断熱性に加え、優れた防火特性により施設を火災から保護する。また、地球温暖化とオゾン層への影響が少ないn-ペンタン吹き付けフォームであるため、電力消費量削減や施設のエネルギー効率向上につながり、電力供給が困難な多くのアジア地域にとって重要だとしている。最近では、インドのパンデミック下での病床数増加をサポートするため、リナック・インディア社(インド)の移動式医療集中治療室設備の製造にも使用されている。

キリンとローソン ペットボトル回収の取り組みを開始

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2021年7月28日

 キリンホールディングス、キリンビバレッジ、ローソンはこのほど、両社のインフラを活用した使用済みペットボトル容器回収の実証実験を、ローソン横浜新子安店で開始した。

プラスチックが循環し続ける社会

 この取り組みは、両社が目指す〝プラスチックが循環し続ける社会〟の実現に向け、ペットボトル再利用の循環促進を目的としたもの。日常生活のインフラを担うローソン店舗に、キリングループが独自開発した「ペットボトル減容回収機」を設置し、来店客に家庭で廃棄しているペットボトル容器の回収を促す。

 さらに、店舗で収集したペットボトルを、キリンビバレッジの子会社である東京キリンビバレッジサービスの自動販売機オペレーションルートを使って収集することで運搬の効率化を図り、その後リサイクル工場へ搬入する。来店客がペットボトルをリサイクルする利便性を向上させることで「ボトルtoボトル」の比率を引き上げていくとともに、容器回収ルートの効率化によるCO2などの環境負荷低減も目指す。

ペットボトル減容回収機

 また、回収したペットボトル5本につき、「Pontaポイント」1ポイントを付与し、「ペットボトル減容回収機」設置の認知やリサイクル促進につなげる。2021年内は横浜市内の数店舗で実証実験を行い、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法案」が施行される2022年内には、実証実験で得られた知見に基づいた取り組みを拡大していくことを目指す。

BASF 電池リサイクル工場新設、正極材金属を回収

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2021年7月27日

 BASFはこのほど、ドイツ・シュヴァルツハイデにある正極材工場の敷地内に電池リサイクル試作工場を新設すると発表した。電池リサイクルは、電気自動車市場でのCO2排出量削減に重要な要件で、EU電池規則案で想定されるニッケル、コバルト、リチウムのリサイクル効率や材料回収目標など、より厳しい政策措置へ対応するもの。

 同工場では、使用済みリチウムイオン電池と、セルメーカーや電池材料メーカーの規格外材料からリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンを効果的に回収するための運用方法を開発し、その技術を最適化する。正極材に必要な金属を、リサイクルによって競争力高く持続的に入手・再使用することで、電池バリューチェーンのサーキュラー・エコノミー(循環型経済)を実現。正極材のカーボンフットプリントを業界標準の最大60%まで削減し、自動車メーカーのニーズに応え、より持続可能な未来の構築に貢献する。

 今回の投資は、欧州委員会が進める欧州の電池生産バリューチェーンに向けたアジェンダへの同社の支持を強化するもので、EU国家補助規制に基づいて欧州委員会が承認した「欧州共通利益重要プロジェクト(IPCEI))」の一環でもある。同工場からの革新的な電池材料の発売、次世代電池材料の研究開発と電池リサイクルを含むプロセス開発に対して、ドイツ連邦経済エネルギー省とブランデンブルク州経済労働エネルギー省が「IPCEI for Batteries」の一環として資金提供を行う。工場の稼働は2023年初頭の予定だ。

積水化学工業 セキスイハイム50周年記念、第四弾を発売

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2021年7月27日

 積水化学工業は、セキスイハイム誕生50周年記念商品として、ニューノーマル対応を強化した「レジリエンス100 STAY&WORKモデルTS(ティーエス)」の発売を今月24日より全国(北海道、沖縄および一部離島地域を除く)で開始した。

「レジリエンス100 STAY&WORKモデルTS」外観イメージ

 同社の住宅カンパニーは、環境問題をはじめとした社会課題の解決や強固な経営基盤の構築を事業の成長力として位置づけ、「顧客価値」と「事業価値」の両立によるESG経営を推進。50周年を機に社会課題解決への貢献を拡大する記念プロジェクトを展開しており、先進・スマートの際立ち進化やレジリエンス、ニューノーマル対応を強化している。

 「レジリエンス100 STAY&WORKモデルTS」は、昨年7月に発売した「レジリエンス100 STAY&WORKモデル」のステイスタイル、マルチテレワークの提案をベースに、空気環境、建材、暮らし方提案をさらに進化させ、ニューノーマルに欠かせない良質な室内環境のより一層の実現を目指す。

 特長として、①抗ウイルス対応フィルター採用の換気・空調システム「快適エアリーT-SAS」で空気環境を進化、②接触頻度の高い建具・床材の抗ウイルス加工で触れることへの不安を軽減、③独立の換気・空調を備え静養スペースとしても活用できる居室「STAYピット」で緊急時も安心、などが挙げられる。なお同社は、販売目標として年間2500棟を掲げている。

デンカ 抗原迅速診断キット発売、コロナ変異株にも対応

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2021年7月26日

 デンカはこのほど、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスを1つのデバイスで同時に診断可能な抗原迅速診断キット「クイックナビ-Flu+COVID19 Ag」を8月18日から販売すると発表した。同コンボキットは新型コロナウイルス変異株においてアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、カッパ株に対応している。

抗原迅速診断キット「クイックナビ -Flu+COVID19 Ag」
抗原迅速診断キット「クイックナビ -Flu+COVID19 Ag」

 デンカと販売提携先の大塚製薬の2社から販売する同コンボキットはイムノクロマト法で特別な検査機器を必要とせず、一般の医療機関でも迅速かつ簡便に検査を行うことができる。1つのキットで新型コロナウイルス抗原とインフルエンザウイルス抗原(A型・B型)を同時に10分で判定する。また、RSウイルス抗原迅速診断キット「クイックナビ-RSV2」と鼻咽頭ぬぐい液の検体共用が可能。診断時間の短縮によって医療機関のさらなる負担軽減と医師の指導の下で、医療機関・高齢者施設などでの速やかなスクリーニング検査体制構築と感染拡大防止に貢献していく。

 デンカは感染症対策を社会的責務と捉え、抗原迅速診断キットにおいては既に1日最大13万検査分の生産体制を構築している。今後も、検査時間のさらなる短縮や感度向上キットの開発を進め、予防・検査体制の拡充を通じて人々のQOL向上に貢献することで真に社会に必要とされ「社会にとってかけがえのない存在となる企業」を目指していく。

PSジャパン V-2の難燃ポリスチレンを開発

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2021年7月26日

高周波特性も保持、5G対応機器などへ展開図る

 ポリスチレン(PS)の大手メーカーであるPSジャパンはこのほど、従来の難燃PSと比較して、透明性、耐候性、さらにリサイクル性にも優れた「新規難燃ポリスチレン」を開発した。室園康博社長は、「今回、新たに開発した難燃PSは、

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帝人 女性向け善玉菌サプリメント、新ブランドを展開

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2021年7月21日

 帝人はこのほど、女性を中心とする一般消費者に向けた善玉菌サプリメントの新ブランド「melito(ミライト)」を立ち上げたと発表した。

女性向け善玉菌サプリ「ミライト」
女性向け善玉菌サプリ「ミライト」

 その第1弾の展開として、膣内フローラに着目した乳酸菌「UREX」、アトピー性皮膚炎に対する調査結果が報告されている乳酸菌「LGG」、および乳児にも広く使用され、胃酸などの強酸下にも耐える自然由来のビフィズス菌「BB-12」の3商品を自社ECサイトで発売する。

 大腸内での発酵が健康に重要であることに着目した帝人は、腸内細菌のエサとなるプレバイオティクス素材の事業ブランド「Biolier(ビオリエ)」を立ち上げ、2016年よりスーパー大麦「バーリーマックス」、2018年から水溶性食物繊維「イヌリア」を展開してきた。また、昨年からはデンマークのクリスチャン・ハンセン社と販売代理店契約を締結し、健康に好影響を与える腸内細菌であるプロバイオティクス原料をラインナップに加えて、さらなる事業強化を進めている。

 今回発売する3商品は、いずれもプロバイオティクス原料を配合し、女性の健康をサポートすることを目的に開発したタブレット状のサプリメント。その中でも特に「UREX」は、女性のために開発された乳酸菌で、臨床研究において他の乳酸菌に比べて長く膣内フローラにとどまることが確認されており、膣内環境の正常化をサポートする。また、世界で初めて、タブレット形状で「UREX」を配合することに成功し服用しやすい。さらに、3商品すべてにプレバイオティクス素材である「イヌリア」を配合しており、女性の悩みの1つである腸内環境の改善も期待できる。パッケージは、サプリメント感を払拭し、女性に受け入れられやすい北欧調のデザインを採用した。

 帝人は、「melito」ブランドとして発売した3商品により、今後、膣内フローラをはじめとする「女性のセルフケア」という新たなフェムテック市場の開拓を図るとともに、まだ顕在化していない健康ニーズにフォーカスした、独自性のある商品開発によりラインナップの拡充を図っていく。

 

産総研と豊実精工 セラミックコートでクロムメッキ代替

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2021年7月20日

 産業技術総合研究所(産総研)と豊実精工(岐阜県加茂郡)はこのほど、常温衝撃固化現象を活用したエアロゾルデポジション(AD)法を最適化し、3次元的表面に防錆性と耐摩耗性を付与できる低環境負荷の常温セラミックコーティング技術を共同開発した。

 機械部品の防錆加工に汎用される硬質クロムめっきは、硬度と処理コストに優れるが、特定有害物質の六価クロムを使用し、欧州のRoHS指令など多くの規制を受けるため、機械的耐久性や防錆性に優れた六価クロムフリーの表面処理技術が求められている。代替技術の三価クロムめっきや溶射法は、密着性や耐摩耗性、膜厚制御性などが劣っている。

 今回AD法を活用し、平面と3次元形状の鉄系部品表面への高い防錆性・耐摩耗性の量産レベルのセラミックコーティング「ERIN処理」技術を開発。ドライコーティング非溶液プロセスで、溶射法のようにセラミック微粒子を溶かさないため、凝固収縮に伴うクラックやポアが発生せず、高い硬度と密着力をもつセラミック膜を形成し、高い防錆性や耐摩耗性が期待できる。

 基材に吹き付けられたセラミック微粒子は、衝撃でナノサイズの微細結晶片に破砕し、流動、再結合して強固な密着力と機械強度をもち、厚みのある緻密なセラミック膜を形成。成膜速度は速く常温処理であるため、熱に弱いプラスチックなど様々な基材へも適用できる。ピンホールやクラックの抑制にはセラミック粒子が均質なナノスケールの微細結晶片に破砕されることが重要で、基材の表面粗さ(凹凸形状)、セラミックコーティングの膜厚、基材の硬度、吹き付け角度の設定により、複雑な3次元構造体表面にも剥離のない均質な被膜を形成することを実証した。

 今後、豊実精工は防錆性や耐摩耗性が要求される小型精密機構部品などの年内の製造販売を目指すとともに、六価クロムフリーの機能めっき代替技術としての事業展開を図る。

 産総研は、原料粉末の合成や高度化などで同技術の量産性を向上し、低コスト化や大型構造物への適用拡大を検討するとともに、欠陥のない緻密3次元セラミックコーティング技術として、電子部品やエネルギー関連部材用途への応用展開を進めていく。

 

BASF プラ資源循環を可能にする添加剤の新ブランド

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2021年7月20日

 BASFはこのほど、持続可能なソリューションを提供するプラスチック添加剤の新グローバルブランド「VALERAS(バレラス)」を発表した。同社の長年の経験、革新的なソリューション、規制面でのサポートを集約し、ポリマーのバリューチェーン全体でプラスチックのサステナビリティを高める。

 消費者の関心の高まりや法規制の強化を背景に、サステナビリティへの流れが加速し、持続可能なイノベーションとプラスチックのリサイクル性の要求が増している。同社は、添加剤ブランドを1つのプラットフォームに集約することで、サステナビリティへの取り組みを支援し、プラスチックの新たな価値の創造を目指す。

 プラスチック添加剤には、各種ポリマーと成形品、フィルム、繊維、シート、押出成形品などの用途において加工安定性、耐熱性、耐光性向上のための安定剤などがある。「バレラス」のポートフォリオには、耐久性の向上、省エネルギー化、排出量の削減、生物多様性の促進など、プラスチック利用における優れたサステナビリティ価値を備えた既存のプラスチック添加剤が含まれており、今後も拡充していく。

 既に100人以上の専門家と世界5カ所のコンピテンスセンターと協働し、新製品の開発と導入に取り組んでいる。今年後半には、マテリアルリサイクルされたプラスチックとその用途向けの添加剤パッケージも「バレラス」の製品ポートフォリオとして展開する予定だ。同社は、プラスチック業界のサステナビリティへの取り組みを将来にわたって支援する考えだ。