プライムポリマー PP設備新設、生産体制を再構築

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2021年6月1日

 プライムポリマーは31日、ビルド&スクラップによる生産体制再構築の一環として、ポリプロピレン(PP)製造設備の新設を決定したと発表した。設備は市原工場(千葉県市原市)に建設され、生産能力は年産20万t。製造技術は三井化学からのライセンス技術「HYPOL法」を導入する。今年8月に着工し、2024年11月に営業運転を開始する予定だ。

建設予定地(プライムポリマー市原工場)

 PPは、食品容器や家電、自動車、医療、二次電池など、幅広い用途で使用される生活基盤素材。フードロス削減や医療機会の増加、EVの航続距離延長といった社会ニーズの変化に伴い、PPに求められる役割は今後ますます拡大していくことが想定されている。一方、同社は、気候変動やプラスチック問題、循環経済といった喫緊の環境課題に対応することは、プラスチック生産者としての社会的責任であると認識している。

HYPOL法を導入する既存製造設備(プライムポリマー大阪工場)

 新製造設備では、これまでの設備で実現できなかった高機能PPを生産でき、これにより自動車材用途などでの軽量化、薄肉化ニーズへの高度な対応が可能となる。また、リサイクルに貢献する素材の提供などを通じて、マテリアルリサイクルの推進を図る。

 同社は今後、需給環境に見合った生産能力とすべく、既存製造設備の停止を実行していく。生産体制再構築により、年間約7万t(2013年対比)のGHG削減効果を見込んでおり、さらにバイオマス原料を使用した素材の提供などを通じて、サーキュラーエコノミーへの対応を強化していく。

 同社は、今回の新設により環境適用性の高い高機能PPの提供を推進し、顧客による価値創造に「Your Prime Solution Partner」として貢献することで、顧客と共に循環型社会の実現と社会生活の利便性の両立に向けて邁進していく。

エボニック プリンテッドバッテリー向け新素材技術発表

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2021年5月31日

 エボニックインダストリーズはこのほど、独イノベーション・ラボ社と共同でプリンテッドバッテリー向け新素材技術を発表した。充電式バッテリーセルの効率的な製造を可能にする。

 イノベーション・ラボは、フレキシブル圧力センサーや温度、水分、ガスセンサー、ハード・ソフトウェア完全統合システムの設計と生産機能に特化したプリンテッド・エレクトロニクス用のワンストップショップで、高度にカスタマイズしたソリューションで大量生産のサポートや印刷された機能製品のコンセプトから一括生産まで、製品のバリューチェーン全体を通じた実践的なサポートを提供している。

 このプリンテッド・エレクトロニクス技術と、レドックスポリマーをベースにしたエボニック独自開発のプリンテッドバッテリー技術「TAeTTOOz」を融合。極薄・柔軟な電池をスクリーン印刷で製造でき、設計の自由度が高い。電気エネルギーの貯蔵に金属を必要とせず、液体電解質を使用しないため液漏れせず、発火のリスクもない。プリンテッド・エレクトロニクスを使ったエネルギー貯蔵ソリューションは、日用品の相互接続やIoTへの応用が期待される。

 医療分野では、バイタルデータモニター用のセンサーの装着をより快適にし、物流分野では、プリンテッドバッテリーを電源にしたセンサーでワクチンや食品などの取扱いに細心の注意が必要な荷物をモニターするなど、新たな応用分野への道を開くとしている。

東大など 電性高分子・ドーパント共結晶で高伝導達成

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2021年5月28日

 東京大学と物質・材料研究機構、科学技術振興機構(JST)、産業技術総合研究所(産総研)の共同研究グループはこのほど、独自開発した強力な酸化力をもつラジカル塩ドーパントと高分子半導体により共結晶構造を自発的に形成させ、従来以上の高い結晶性と伝導特性をもつ導電性高分子を開発したと発表した。

 高分子半導体は溶液を塗って乾かすだけで製膜でき、次世代エレクトロニクス材料として注目される。高分子半導体を導電性材料として使うには、ドーピング処理で電荷を注入し、電気伝導特性を向上させる必要がある。

 通常は、高分子半導体と酸化還元反応するドーパント分子を高分子膜に導入するが、ドーパント分子は陰イオンとして高分子膜内部にランダムに残るため結晶性を損ない、伝導特性に影響してしまう。結晶性構造を壊さずにドーパント分子を導入する手法を以前開発したが、ドーパント分子の立体的配置は不明瞭で、そのランダムさが電気伝導特性を制限している可能性があった。

 今回、より酸化力の強いラジカル塩ドーパントを開発。その溶液に高分子半導体の薄膜を浸漬したところドーピング量は非常に多く、X線回折分析により、高分子半導体とドーパント分子1対1による共結晶構造の形成を確認。ドーパント分子の位置を0.5㎚程度の精度で決定した。強力な酸化反応により、ドーパント分子が高分子半導体結晶にあるナノメートルスケールの周期的な空隙に入り、自発的に均質な密度で配列したと考えられる。一般的に通常の高分子膜の構造は乱れているが、今回は薄膜全体に配向性の高い共結晶構造が形成し、電気伝導度が高く白金などの貴金属に匹敵する高い仕事関数を示した。

 さらに、ドーパント分子種の最適化により、大気安定性も向上した。電気伝導特性は共結晶性領域に由来する金属的な伝導が支配的だが、今回の研究により、ミクロな共結晶構造の設計でマクロな電気伝導度の制御が可能であることが示唆された。様々な分子性イオンを充填・配列化した高分子半導体薄膜を大面積で容易に形成できるため、今後様々な機能性電子・イオン材料としての研究が進展することが期待される。

ランクセス 世界初のCF製スマホにコンポジット採用

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2021年5月28日

 ランクセスはこのほど、世界初のカーボンファイバー(CF)製スマートフォンの筐体に熱可塑性コンポジットシート「テペックス(Tepex)」が採用されたと発表した。カーボン・モバイル社の「Carbon1 MKⅡ」で、これまでのプラスチックとアルミニウムを複合材に置き換え、軽量性、スリムなデザイン、サステナビリティの新しい基準となるスマートフォンだ。

 CFは強靭で軽量な構造体の製造に適するが、電磁シールドとして作用するため外部からの無線信号を遮断し、内部からの信号も通過させずに構造体の外側に分散させる「ファラデーケージ」を形成するため、コネクテッドデバイスには不可能だとされてきた。

 今回の「無線対応」CF製の素材は、カーボン・モバイル社開発の特許技術「HyRECM」でRF信号を透過する複合材をCFに融合させ、さらにデバイスの接続性を高めるためにCF構造に導電性インクを3D印刷・結合させて生み出されたもので、コネクテッドデバイスの可能性を切り開くものだ。

 筐体に使われるベース素材「テペックス ダイナライト」シリーズは極めて細い1Kの連続カーボンファイバーフィラメントで強化された連続繊維で、高い機械的ストレスを受ける超軽量コンポーネント用に開発されたもの。筐体はCFRPの剛性を最大限に生かしたモノコック構造で、筐体内部のスペースを圧迫する補強材はなく、重さは125g(従来の3分の2)、厚さ6.3㎜(従来の4分の3)で、プラスチックの使用は5%未満だ。高い強度と剛性により薄くかつ日常の使用にも耐える強靭な筐体で、さらにマットブラックのCFはスマートフォンの外観にハイテクな印象を与える。

 また、できる限りリサイクル可能な素材を使用し、筐体に使用した複合材はリサイクルも容易で、新しい用途に再利用できる。すべてのコンポーネントは容易に交換して修理できるため耐用年数は長く、電子廃棄物の発生も防ぐとしている。

旭化成 3密見える化ソリューション、千代田区へ提供

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2021年5月28日

 旭化成はこのほど、東京都千代田区における新型コロナウイルス感染症拡大への対策として、3密(密閉、密集、密接)の状況を見える化するソリューションを同区に対し提供すると発表した。千代田区は旭化成のCO2センサーを「千代田区新しい日常店」に配布する。

CO2センサーと「換気 View」アプリ
CO2センサーと「換気 View」アプリ

 CO2センサーで密閉・密集の状況をモニタリングすることにより、適切な換気を管理できることが広く知られている。同社は昨年より、新型コロナ対策として、自社のCO2センサーを活用した「3密見える化ソリューション」の実証実験を飲食店や官公庁と共同で行ってきた。今回、千代田区の「疫学的なエビデンスに基づいた感染予防対策を講じていく」という方針に、CO2濃度を指標とした換気管理のための技術が貢献できることからCO2センサーが採用された。

 同社のCO2センサーは、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスと組み合わせることで、周囲のCO2濃度を表示。バッテリー駆動で約1年間作動し、スマートデバイスに専用アプリケーション「換気View」をインストールすれば簡単に無線接続でき、だれでもCO2濃度を参照できる。本体には配線がなく、工事不要でどこにでも設置可能で、状況に応じて再配置することも容易だ。

 アプリケーションは標準版(無償)とPRO版(有償)の2つ。標準版は室内のCO2濃度をリアルタイムに表示し、ユーザーが換気の必要性を判断できる。PRO版はiPadでのみ作動し、CO2濃度と湿度を参照でき、CO2濃度が設定値を超えた時に画面表示やアラーム音で換気を促すほか、設定したメールアドレスにアラートメールを配信する機能もある。

 千代田区は「千代田区新しい日常店」の取り組みに応じた独自の認証レベルを設定。同社はCO2センサーをクラスⅡの約200店舗に配送し、今月末にはクラスⅠの約100店舗にも配布する。また、飲食店などに対し有償版の「換気View Pro」を9月末まで無償で提供する。なお、千代田区では今年度、計500台のCO2センサーを飲食店などに配布する計画だ。

CO2センサーと専用アプリの設置例
CO2センサーと専用アプリの設置例

LG化学 CNT生産1200t増能で市場進出を加速

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2021年5月28日

 LG化学はこのほど、麗水CNT第2工場が操業開始し合計1700tの生産能力を確保したと発表した。韓国内1位の生産能力で、世界最大の単一生産ラインだ。

 CNT(カーボンナノチューブ)は銅やダイヤモンドと同等の電気・熱伝導性、鋼の100倍の強度をもち、耐熱性にも優れた新世代の素材。電池、半導体、自動車部品、表面発熱体などへの応用範囲は広い。昨年の世界需要は5000tで、2024年には2万tへと年率40%で爆発的に増加するとの予測だ。

 同プラントは、独自開発の流動床反応装置を備え、完全自動化による安定した品質管理とプロセス革新を実現し、消費電力も従来比30%削減している。原料・生産技術・製造プロセス・製品を垂直統合することで、効率性を最大化し競争力のある製品を生産している。

 独自のコバルト系触媒は、バッテリー品質に影響する金属や磁気汚染物質の含有量が鉄系触媒より少なく、後処理プロセスは不要だ。また製品を錠剤形状にすることで、輸送中に空気中に分散したり壊れたりするといった既存の粉末やペレット製品の課題を解決した。

 生産したCNTは、電気自動車用バッテリーの世界市場をリードするLGエネルギーソリューションなどのバッテリー会社に導電性添加剤として供給し、幅広い産業に応用される予定だ。

 LG化学は半導体プロセス用トレーや自動車用外装静電塗装などの導電性化合物や、表面発熱体、半導体高圧電線、高強度コンクリートなどの新規用途に積極的に販売を拡大していく考えだ。3番目の工場を今年立ち上げるなど今後も生産能力を拡大し、競争力のある品質を実現することで、世界市場のリーダーを目指している。

三井化学 高屈折レンズ材を能増、米・中市場拡大に対応

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2021年5月28日

 三井化学は27日、世界トップシェアを誇る高屈折メガネレンズモノマー「MR」の生産能力増強を決定したと発表した。

『MR』を生産する大牟田工場の全景
「MR」を生産する大牟田工場の全景

 既存プラントのある大牟田工場(福岡県大牟田市)で設備新設とデボトル増強を行い、中国を中心としたアジアでの高機能品ユーザー層の拡大や、北米でのポリカーボネート(PC)素材からの置き換え需要などに対応していく考えだ。2023年10月の商業運転開始を予定。生産量については、既存、能増分ともに非公開としている。

 「MR」は独自の重合技術により、高屈折率・高アッベ数・軽量かつ高耐衝撃性を実現したチオウレタン系樹脂(硫黄を含むウレタン)のメガネレンズ材料。粘りのあるチオウレタン系樹脂により、薄くても割れにくく、アッベ数が高いことからレンズ度数を上げても色にじみが少なくクリアな視界が得られる特長をもつ。

伸長する高屈折メガネレンズ需要に向け『MR』を拡販
伸長する高屈折メガネレンズ需要に向け「MR」を拡販

 同社は、グローバルで拡大する高屈折メガネレンズ需要の確実な獲得を目指している。米国市場では、会員制大手量販店の米コストコが「MR」を使用したメガネレンズを標準採用するなど、PC素材からウレタン素材への切り替えが進んでおり、今後も長期的な成長が見込まれている。

 三井化学は、引き続きビジョンケア材料事業を通じ、QOV(視界品質)をコンセプトに、視力矯正から、目の健康と快適さまで、より良い視界を追求する製品開発に取り組んでいく。

DIC 軟包装フィルムのリサイクル、製パン会社と協業

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2021年5月27日

 DICは25日、大手製パンメーカーと共同でパン包装に使用するプラスチック由来の廃棄軟包装フィルムの再生資源化に向けて、マテリアルリサイクル(MR)の実際のプラントへの実装による再利用の検証を今夏より開始すると発表した。

パンの軟包装フィルム 再利用の工程
パンの軟包装フィルム 再利用の工程

 プラスチックは高い利便性から多くの用途で利用される一方、廃プラによる環境負荷が問題視され、その有効活用が国際的な課題になっている。MRは世界的に推進されているものの、日本では廃プラ総排出量891万t(2018年度)に対して、23%の208万tに留まる。

 軟包装フィルムは、包装材としての機能を満たすため印刷インキや接着剤など複層構造で成形。従来のMRの手法では、印刷インキなどが着色されたペレット(プラスチック樹脂)に再生加工されるため、再利用可能な用途が限定されていた。

 DICは、軟包装フィルムの加工および印刷工程で発生する廃棄軟包装フィルムを対象に、新たに導入する印刷インキ除去技術を用いて、着色されていないリサイクルペレットに戻し、新たな用途へ再生させる資源化検証を大手製パンメーカーと共同で開始する。プラント検証は、プラリサイクルを手掛ける外部の協業パートナーと共に実際のプラントへの再生工程に実装。脱インキ・原料化(造粒)・成形加工・再利用の各工程での最適化に取り組む。これにより高度なMRを実現し廃棄フィルムの再生用途を拡大する。

 同社グループは、世界的な社会課題である廃プラや海洋プラ問題に対し、サステナビリティ戦略として対応すべき領域を定め、取り組みを強化。食品包装などのパッケージ素材については、ポリスチレン、フィルム、インキ、接着剤などの素材がプラスチックのMR特性に及ぼす影響について基礎的な研究を行い、地球環境のサステナビリティに貢献するパッケージソリューションの提供を目指している。再資源化の取り組みでは、エフピコとのケミカルリサイクルの協業検討を開始するなど、関連する他業界との連携も強化している。

 DICは、今回の協業により軟包装フィルムの高度な再資源化を図り、プラごみ問題の解決やプラ資源の循環社会の実現を目指す。

 

JSRトレーディング PVC・ニトリルの使い捨て手袋を輸入販売

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2021年5月27日

 JSRトレーディングは26日、ディスポ(使い捨て)タイプのPVC(塩化ビニル樹脂)手袋とニトリル手袋の輸入販売を開始したと発表した。コロナ禍により世界的に公衆衛生の意識が高まる中、同社は、各種衛生用品のニーズが増加していることに対応した。

PVC手袋
PVC手袋

 PVC手袋は、極薄仕上げで手にピッタリフィットする特長をもち、介護など衛生が求められる作業や清掃作業などに使用される。

 ニトリル手袋は、耐油・突き刺し強度・耐久性に優れ、機械作業、食品加工、調理、水産加工、給油などに使用される。

ニトリル手袋
ニトリル手袋

三菱ケミカルなど 「IBM Q」で有機EL励起計算に成功

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2021年5月27日

 三菱ケミカル、JSR、日本IBM、慶應義塾大学は26日、「IBM Qネットワークハブ」(慶應大量子コンピューティングセンター内)で以前から取り組んでいた「量子コンピューターを用いた有機EL発光材料の性能予測」の研究プロジェクトで得られた成果に関する論文が、世界的に権威のあるNature Research出版社の専門誌「npj Computational Materials」に掲載されたと発表した。

IBM 量子コンピューター
IBM 量子コンピューター

同研究プロジェクトは、有機EL発光材料の1つであるTADF材料の励起状態エネルギーの計算を実施するため、三菱ケミカルとIBMが主導し、JSRや慶應大と共に取り組んできた。従来から量子コンピューターによる計算は実機特有のエラーの発生が課題となっていたが、今回、同プロジェクトではエラーを低減させる新たな測定手法を考案し、計算精度を大幅に向上させることに成功した。量子コンピューター実機を用いて実用材料の励起状態計算に成功したのは、世界初の成果となる。

 今後、実機の計算能力の進化と共に従来以上に精密な計算を行えるようになり、より発光効率の高い材料設計に寄与することが期待される。同研究チームは今後も、量子コンピューターを幅広い材料開発に用いるための研究を進めていく。