住友化学 米国とカナダで新規殺菌剤の農薬登録を取得

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2020年9月2日

 住友化学は1日、米国およびカナダで新規殺菌剤「インディフリン」(一般名:インピルフルキサム)と同有効成分を含む製品の農薬登録を取得したと発表した。日本以外での同製品の農薬登録の取得は、今回が初となる。

 「インディフリン」は、同社が今年までに主要市場向けの登録申請を完了するパイプライン「B2020」の一剤として独自に発明した有効成分で、病原菌のエネルギー生産の過程を阻害する作用をもつコハク酸脱水素酵素阻害剤(SDHI)と呼ばれる殺菌剤に属している。

 優れた殺菌作用や浸達性、浸透移行性があることから、これまでの社内外での評価を通じて、イネの紋枯病、ダイズ・ムギのさび病、果樹の黒星病、テンサイの根腐病・葉腐病といった重要病害に高い効果が認められており、新たな防除手段として期待されている。3月には、日本国内で同剤を含有した園芸用殺菌剤「カナメフロアブル」の販売を開始した。

 今回、農薬登録を取得した米国とカナダでは、有効成分「インディフリン」に加え、主に茎葉散布分野向け製品と種子処理分野向け製品の登録も合わせて取得。それぞれ茎葉散布分野向け製品は「エクスカリア」、種子処理分野向け製品は「ゼルテラ」というブランド名で、子会社であるベーラント社を通じて今年10月から順次販売を開始する予定。

 また、世界最大の農薬市場であるブラジルをはじめ、アルゼンチンおよびEUでの登録に向け、現在、各国・地域の当局による審査が進む。

 同社は今後、「インディフリン」を含有する新規殺菌剤製品がグループの農業関連事業の成長をけん引するブロックバスターになるものと見込んでいる。

NEDO 太陽光発電の主力電源化事業の開発テーマ採択

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2020年9月1日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、再生可能エネルギーの主力電源化に向け、太陽光発電の新市場創造や長期安定電源化のための技術開発や先進的な共通基盤技術の開発を目的とした「太陽光発電主力電源化推進技術開発」事業を開始し、44件の技術開発テーマを採択したと発表した。

 太陽光発電は、低炭素の国産エネルギー源として広く普及しているが、設置場所、安全・信頼性、活用後の廃棄・リサイクルなどに課題がある。同事業は、新たな素材や製造方法による設置環境の拡大などによる新市場の創造、太陽光発電設備の長期安定電源化の技術、そして先進的な共通基盤技術の3分野からなる。

 「新市場創造」は、地上や住宅屋根など低コスト好条件適地の減少に対し、重量制約のある屋根や建物壁面、自動車などの移動体への設置・導入を可能とする技術の開発。具体的にはフィルム型超軽量太陽電池の開発、建物外壁向けに経済性・耐久性・意匠性の改善、移動体搭載用の形状追従性、高効率、低コスト化だ。

 「長期安定化」は、発電設備の安全確保のためのガイドライン、信頼性評価、信頼性を回復技術と、用途後の設備のリサイクル技術、そして電源系統への影響緩和技術の開発だ。具体的には傾斜地、営農地、水上など各種設置環境の設備ガイドライン、小規模発電設備にも適用する信頼性評価・回復技術や、太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル、低コスト分解処理、有価物回収率向上技術、そして出力制御や発電量・需要予測の高度化、需給一体型システム、需給変動に対する調整などの技術開発を行う。

 「先進的共通基盤技術」は、前2分野を支える測定評価や日射量予測技術など。具体的には、未標準・規格化の新型太陽電池(ペロブスカイト、タンデムなど)の性能測定技術、基準太陽電池と校正技術の開発、そして発電量の短期予測のための日射量予測技術だ。

 NEDOは、太陽光発電の長期安定電源化や導入量拡大とともに、新たなセル、モジュール、システム技術に関連した産業競争力の強化を目指す。

出光興産 ノルウェー領北海鉱区で油の試掘に成功

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2020年9月1日

 出光興産はこのほど、子会社である出光スノーレ石油開発がノルウェー現地法人出光ペトロリアムノルゲを通じ、20%の権益をもつノルウェー領北海PL882鉱区で「ジュゴン」構造を試掘した結果、油の集積を発見したと発表した。

 試掘に成功したジュゴン構造はノルウェー領北海にあり、スノーレ油田(出光興産の権益9.6%)から西に約10㎞に位置しており、出光興産は2019年にPL882鉱区の権益を取得していた。試掘の結果、上部ジュラ系砂岩、および中部ジュラ系ブレント(Brent)層群で油の集積を確認。同社は今後、開発に向けた詳細な評価、検討を行う予定だ。

宇部興産建材 加賀友禅染めの国産珪藻土マット販売開始

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2020年9月1日

 宇部興産建材は31日、珪藻土マット「なのらぼ 足快バスマット」の新たな展開として「加賀友禅匠シリーズ」を販売すると発表した。「なのらぼ」は、独自のナノテクノロジー技術で珪藻土の吸水性を格段に高め、悪臭の分解機能を飛躍的に向上させた「スーパー珪藻土」から誕生した珪藻土グッズ。

「なのらぼ 足快バスマット」の”加賀友禅匠シリーズ”
「なのらぼ 足快バスマット」の”加賀友禅匠シリーズ”

 今回、風呂上がりの足をさらっと快適に感じることができる「足快バスマット」に、吸水力を維持したまま色をほどこす〝加賀友禅染め〟を採用した。伝統が息づく工芸の街・金沢の老舗「茜や」とコラボし、うすべに色のハナミズキをあしらった上品なデザインとなっている。

 インクジェットで塗装された珪藻土マットは通常吸水力が落ちてしまうが、珪藻土製品にとって重要な吸水力を維持したまま、鮮やかな色を施すことに成功。これまで通りの高い吸水性と吸水スピードで、いつもと違った雰囲気のバスルームを楽しむことができる。

 詳細は同社ホームページ(https://www.ub-soukai.jp/SHOP/kagayuzen-hanamizuki.html)に掲載。なお、販売期間は、8月31日~9月7日までとなっている。

日本触媒 有機電子デバイス高機能化に貢献、新技術を開発

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2020年9月1日

 日本触媒は31日、NHKと共同で有機ELの低消費電力化と長寿命化に寄与し、様々な有機エレクトロニクスデバイスの高性能化にも用いることのできる新しい電子注入技術を開発したと発表した。

 これまで、有機ELをはじめとする有機エレクトロニクスデバイスでは、電極金属と有機材料の間での電子のやり取りをスムーズに行うことを目的にアルカリ金属などの材料が用いられてきたが、これらは有機材料との反応性が高いことからデバイスの劣化の要因とされている。またアルカリ金属は空気中の酸素や水分に弱く厳重な封止を必要とするため有機薄膜デバイスのフレキシブル化に対し課題となっていた。

 こうした中、両社は、電極金属と有機材料との間に大きな分極を生じさせる配位結合を用いた電子注入技術により、アルカリ金属のような反応性の高い材料を用いることなく有機ELの低消費電力化と長寿命化を実現できることを見出だした。

 この配位結合による新たな分極型電子注入技術は、有機ELの低消費電力化や長寿命化へ資することはもちろん、電子の取り出し技術へも応用することで、有機太陽電池のエネルギー変換効率の向上や有機センサーデバイスなどの高感度化などへも寄与できると見られ、フレキシブルデバイスの早期実現への貢献が期待される。

 また、日本触媒が開発中の「iOLED」フィルム光源に対しても、既存製造設備への適用が可能となり製造プロセスの簡略化による大幅なコスト削減が期待できる。同技術に用いた材料は塩基性の有機化合物で、種々の金属元素への配位によって安定な錯体を形成し、その配位力の強さに応じて金属原子との間で電荷の偏り(分極)が発生する。

 同社はこの有機化合物について数種類の誘導体を設計・比較することで、配位力の強さと電子注入性の間に相関があることを見出だし、有機化合物と金属を含む陰極との界面で生じる分極が電子注入を促進していることを明らかにした。

 なお、今回の研究成果は、7月24日に「Nature Communications」誌に掲載された。

有機エレクトロニクスデバイス 分極型電子注入技術
有機エレクトロニクスデバイス 分極型電子注入技術

積水化学 イノベーションセンターを開設、社内外の融合を促進

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2020年9月1日

 積水化学工業は31日、高機能プラスチックスカンパニーが、1961年に建設した主要研究開発拠点である開発研究所(大阪府三島郡)内に、規模拡大とイノベーションのさらなる加速を狙い、水無瀬イノベーションセンター(MIC)を併設したと発表した。

MIC外観
MIC外観

 同社は今年、2030年までの長期ビジョン「Vision 2030」を制定。「Innovation for the Earth」をビジョンステートメントとして掲げ、イノベーションを起こし続けることにより、サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、〝未来につづく安心〟を創造していくことを目指している。

 また、前中計より、〝融合〟を経営戦略上のキーワードとし、社内外の技術・機会・リソースの融合による新たな価値創出を図っている。特に高機能プラスチックスカンパニーの3つの戦略分野(エレクトロニクス・モビリティ・住インフラ材)では、通信業界の5G普及、自動車業界の自動運転を含むCASEの進展など、通信や自動車業界の変容に伴い、各分野を横断した人や情報の融合が、イノベーション創出のためには重要になる。

MIC内観(1階)
MIC内観(1階)

 MICは、延べ床面積5967㎡の5階建て。特徴として、①オープンイノベーションスペースとして、展示・デモ実験エリア「テクノロジーガレージ」を設置、②社内での共創を促進するオフィスのレイアウト・設備、③ウェブを活用し、コロナ禍の中でも社内外コミュニケーションを促進、④「ZEB Ready(一次エネルギー消費量の年間収支を設計値で50%以上削減した先進建築物)」や「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)Sランク」の各認証を取得、などがある。

 同社は、今回のMIC開設により、社内外での融合を促進し、社会課題解決と同社グループおよび高機能プラスチックスカンパニーの成長に資するイノベーションの創出をさらに推進していく考えだ。

昭和電工 ケミカルリサイクル事業、産廃処分業の許可を取得

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2020年9月1日

 昭和電工は31日、産業廃棄物処分業の許可を7月1日付で取得し、破砕成形された状態のプラスチック産業廃棄物の受け入れを開始したと発表した。

KPRプラント外観
KPRプラント外観

 川崎事業所(神奈川県川崎市)では、2003年から容器包装リサイクル法に基づく使用済みプラスチック(容リプラ)を化学原料にリサイクルする「プラスチックケミカルリサイクル事業」を行っている。受け入れた容リプラは高温でガス化して分子レベルまで分解し、水素(低炭素水素)とCO2へ転換。低炭素水素は主にアンモニアの原料に、CO2はドライアイスや炭酸飲料向けに使用している。

 同社は、ガス化によるケミカルリサイクル(CR)としては世界で唯一、長期にわたる商業運転の実績をもつ。昨今の海洋プラスチック問題など、廃プラの高度リサイクルに対する社会的ニーズが高まる中、今回の許可取得により安定的に廃プラを確保することが可能となり、原料ソースが多様化され、同事業を安定継続する体制が整った。

 日本で毎年排出される約900万tの廃プラのうち、再利用されるものは750万t(CR39万t、マテリアルリサイクル208t、エネルギー回収503万t)。未利用のまま焼却処分や埋め立て処分されるものが142万tある。CRは廃プラを原料に戻して再利用できるため、資源循環型社会実現のための重要な技術の1つとして注目されている。

 同社は、経済産業省からエコタウンとして認定されている川崎市と、低炭素水素社会の実現に向けた連携・協力に関する協定を2015年に締結。使用済みプラスチック由来の低炭素水素を活用した環境負荷の低い水素社会の実現を目指している。これまで、低炭素水素を川崎市内のホテルに設置した燃料電池や、燃料電池車用の水素ステーションに供給する実証実験を行っている。

 なお今回の取り組みは、環境省の「使用済みプラスチック由来低炭素水素を活用した地域循環型水素地産地消モデル実証事業」として受託・実施しているもの。

 同社は、事業活動を通じたSDGs課題解決への貢献を目指し、資源循環型社会を支える事業を積極的に推進している。今後も様々な製品・サービスの提供を通じ、豊かさと持続性が調和する社会の創造に貢献していく考えだ。

三洋化成工業 高潤滑・低泡性の水溶性金属加工油用の基剤

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2020年8月31日

 三洋化成工業はこのほど、低泡性で潤滑性に優れる水溶性工作油(金属加工油)用の合成基剤「ユーティリオールGA‐15P(開発品)」を開発したと発表した。

 自動車や機械などの製造に欠かせない切削、圧延、引き抜き、プレス、鍛造などの金属加工には、潤滑と冷却のための金属加工油が用いられる。油剤が工具/被加工物/切屑の間で摩擦低減と冷却に機能し、工具の摩耗・変形・焼き付きを防止。工具寿命を延ばし、加工精度を上げる。

 加工油には、潤滑性(加工性)に優れる不水溶性と、不燃性で冷却性に優れる水溶性がある。作業環境改善や環境負荷低減の観点から水溶性加工油が注目されるが、潤滑性が不十分な場合も多く、潤滑性を改善すると低泡性が低下するなど、置き換えが進まないのが現状。

 その他にも加工精度の向上や高速化、素材の多様化、機械や製品の長寿命化、廃油・排液量削減のためのリサイクルやコスト削減など様々なニーズがあり、基剤メーカーや基剤を使用する加工油メーカーは性能向上に取り組んでいる。水溶性金属加工油の基剤には、主としてポリアルキレングリコール型の水溶性ポリエーテルが金属界面への浸透性、潤滑性の役割で用いられる。

 同社は、界面制御技術や高分子設計技術、アルキレンオキサイド付加物製造技術の強みを生かして、水溶性加工油の特長を維持したまま潤滑性を大幅に向上した合成基剤を開発した。高速加工だけでなく、高延性のアルミなどの難削材などへの適応や、作業効率の向上も期待される。環境負荷低減や作業環境の改善、冷却効率の向上などのメリットも得られる。

 今後は、「ユーティリオールGA‐15P」の優れた性能を生かして、加工油用への適応拡大や適応金属の拡大などの検討、他の水系潤滑油用基剤への用途拡大などを進める。家電や自動車、ビル、インフラなど、様々な産業は高度な金属加工技術によって支えられている。同社は、工作油剤技術向上のソリューションを提案し、モノづくりの現場を通して各種産業の発展に貢献していく考えだ。

積水化学 医療事業を拡大、国内外工場の生産設備を増強

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2020年8月31日

 積水化学工業は28日、メディカル事業の国内外主力2工場に総額約60億円を投じ、生産設備を増強することを決定したと発表した。同社は100%子会社の積水メディカルを中核として、「検査事業」と「医療事業(医薬・創薬支援・酵素)」の2事業を軸にライフサイエンス分野の拡大に注力しているが、今回の増強により各種医薬品の原料・原薬の受託製造を行う体制を整え、「医療事業」を強化する考えだ。

 世界の医薬品市場は100兆円を超え、中国や米国を中心に市場が毎年5%前後拡大する中、従来の低分子医薬品に加え、ペプチド(中分子)・タンパク質医薬(高分子)・細胞医薬・再生医療と医薬品による治療手段の多様化が加速している。

 同社グループではこれまで、日本の積水メディカルで低分子医薬品向け原薬など、英国のSEKISUI DIAGNOSTICS社で診断薬向け酵素などの製造・販売を行ってきたが、昨今の医薬品市場の多様化・高コスト化に対応するためには、幅広い領域での供給体制を整える必要があると判断した。

 積水メディカルの岩手工場では、約40億円投資し中間体製造棟を新設。低分子医薬品向け原薬・中間体の25%増産が可能となる。また、ペプチド医薬品原料の生産体制の増強も進めている。

 一方、英国工場では、約20億円投資し微生物タンパク質培養・精製施設を新設。タンパク質医薬向け原料のCDMO(医薬品の研究開発・製造受託)に向けた体制が整う。両工場の増強が完成すれば、低分子から高分子まですべての医薬品製造領域での受託製造が整備される。また、両工場は、医薬品の製造および品質管理基準であるGMPに準拠した生産設備となり、医薬品原料・原薬の開発・製造が可能になる。

 積水化学は、メディカル事業の中で、医療事業をコア戦略領域の1つと位置づけている。今後も大きな成長が見込まれる医薬品市場に向けた生産供給体制の強化と、研究開発・品質管理・サービス体制の強化に努め、製薬会社を中心とした顧客ニーズに応えていく。

東ソー CNF複合化CRの低コスト化がNEDO事業に

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2020年8月31日

 東ソーは28日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー(CNF)関連技術開発」について、「革新的CNF製造プロセス技術の開発」の実施予定先として採択されたと発表した。同社は共同提案先のバンドー化学と連携し、「伝動ベルトをターゲットとしたCNF複合化クロロプレンゴム(CR)の低コスト製造技術開発」に着手する。実施期間は2024年度までの5年間を予定。

 世界では石油の価格上昇や枯渇リスク、CO2排出量の増大に伴う温暖化問題に直面しており、持続可能な低炭素社会を実現していくためには、バイオマスなど様々な非石油由来原料への転換が求められている。植物素材であるCNFは、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上の強度をもつバイオマス由来の高性能素材。その実用化に向けた期待が増す一方で、市場拡大にはさらなる用途開拓やコストダウンなどの課題がある。

 同事業では、製造コストを大幅に低減させる製造プロセス技術の開発や、用途開発の促進、安全性評価などを行い、CNFを利用した製品社会実装・市場拡大を早期に実現することで、CO2の排出量を削減し、エネルギー転換・脱炭素化社会を目指す。

 東ソーは、1971年よりCR「スカイプレン」の製造・販売を開始。その製造・開発技術を生かし、顧客ニーズに合わせた製品開発や、環境配慮型製品の展開に取り組んでいる。CNF複合化による材料技術では、伝動ベルトなど応用製品の基本性能向上が見込まれ、コストダウンによる量産化が期待されている。