アクリロニトリル アジア市況は回復基調を継続

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2020年10月15日

ABS需要は旺盛、プロピレン高騰が懸念材料に

 ABS樹脂やアクリル繊維の原料であるアクリロニトリル(AN)は、アジア市況が回復傾向にある。足元のAN市況は1200ドル弱となり、4月後半の1000ドル割れから約200ドル近く上昇している状況だ。

 その背景として、いち早くコロナ禍から脱した中国経済が活発化してきたことが挙げられる。政府の補助金などもあり、中国国内では自動車や家電などを購入する「リベンジ消費」が盛り上がり、ANの主用途であるABS樹脂がフル稼働を継続。一時期は在庫が積み上がることで、市況が頭打ちになると見られていたものの、ABS市況は1800ドル近くにまで上昇している。また、このほかのAN誘導品や副生品も底堅い需要が続いているなど、ANチェーン全体の需要は悪くないと言える。

 こうした中、需給バランスが崩れていないことも大きい。中国では新規設備(26万t)が稼働を開始したが、インパクトは少ないもよう。これまで中国メーカーは、事業環境が良ければフル稼働にするため、需給悪化となるケースが多かった。しかしここにきて、採算重視で稼働調整を行い、市況を維持する動きも見られている。

 国内大手の旭化成は、3工場(日本、韓国、タイ)の平均稼働率を、春先には70%程度に抑えていたが、足元では80%にまで上げてきているもよう。この先、コロナ禍が落ち着き、アジア経済が回復してくれば、さらに稼働率の上昇が期待される。

 一方、収益的には原料プロピレンが高騰していることが懸念材料。プロピレンは、誘導品のポリプロピレンが不織布など衛生材料向けに引き合いが強いことに加え、自動車部材や食品包装なども中国景気の回復に伴い需要が戻りつつある。そのためプロピレン市況は上昇基調を継続し、足元では850~900ドル台の高水準で推移。ANとのスプレッドは300ドル程度となっており、メーカー各社にとって厳しい事業環境となっている。さらに、アジア地域ではセンター各社の定修が重なり、プロピレンに先高感も出ている。ANの市況上昇に時間がかかれば、スプレッドが圧縮される可能性もあり、この先の市場動向が注目される。

 

アジア石化市況 エチレンは今年の最高値を更新

2020年10月13日

ブタジエン上昇基調を継続、ベンゼンは弱含みに

 アジア地域の9月第4週の石化市況では、エチレンは下値、10ドル高、上値20ドル高の850~880ドル/tでの取引となった。前週に1月第5週に記録した今年(暦年)の最高値に並んでいたが、9月第4週はさらに一段高となった。アジア市場では、大型クラッカーの定修が予定される中、誘導品の需要が強く需給バランスがタイト化。エチレンを確保する動きが継続しており、エチレン市況は5週連続で上昇している。 スプレッドも、

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アジア石化市況 エチレン続騰で840ドル/tに

2020年10月6日

ブタジエン12週連続上昇、SMも上昇基調継続

 アジア地域の9月第3週の石化市況では、エチレンは下値、上値とも40ドル高の840~860ドル/tでの取引となった。8月第3週の680ドル/tを底値に反転し、4週連続での上昇となる。

 アジア地域では、中国経済の回復に伴いポリエチレンの需要が堅調に推移。こうした中、クラッカーの定修が集中していることや域外品が減少していることで、需給バランスがタイト化している。スプレッドも、

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アジア石化市況 エチレン強含みで800ドル回復

2020年9月29日

ブタジエンも700ドルに、SMは3週連続で上昇

 アジア地域の9月第2週の石化市況では、エチレンは下値50ドル高、上値30ドル高の800~820ドル/tでの取引となった。下値、上値とも800ドル台となるのは、7月第3週以来8週ぶりとなる。ハリケーン影響により米国の石化プラントが出荷を停止したことでタイト感が高まり、エチレンは強含んでいる。

 スプレッドも、

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塩ビ樹脂 10月のインド向けは前月比150ドル高

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2020年9月28日

海外メーカーがFM宣言、世界的な需給タイトに

 塩ビ樹脂(PVC)の10月分のアジア輸出価格は、インド向けが前月比150ドル高のCFR1100ドル/t、中国その他向けも同130ドル高の970ドル/tで決着した。台湾大手メーカーも、

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アジア石化市況 エチレン需給タイトで大幅上昇

2020年9月24日

ブタジエンも上昇基調、芳香族3品目も強含みに

 アジア地域の9月第1週の石化市況では、エチレンは下値、上値とも60ドル高の750~790ドル/tでの取引となった。下値は2週連続で上昇し、3週ぶりに700ドル/t台を回復している。アジア地域で大型定修が行われている中、ハリケーンの影響で米国の石化プラントが出荷を停止。需給バランスが一気にタイト化したことで、市況が大きく押し上げられた。

 スプレッドも、

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宇部興産 CPLの9月契約価格は前月比30ドル高

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2020年9月17日

市場に底打ち感、冬物衣料向けに引き合い強まる

 宇部興産は、ナイロン原料であるカプロラクタム(CPL)について、9月(上旬決め)の韓国・台湾大手向け契約価格を前月比30ドル高の1060ドル/tで決着した。前月は、新型コロナ感染の第2波の懸念が高まったことで120ドル/t安と急落していた。しかし、各国の経済活動が再開される中、原料ベンゼン価格が安定していることや、冬物衣料向けの需要期を迎えることもあり、市場に底打ち感が出たことが背景にある。

 スプレッドも、9月のベンゼンACPが前月並みとなったことで

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アジア石化市況 エチレン下値が11週ぶりに反転

2020年9月15日

ブタジエンは600ドル台回復、芳香族は低水準に

 アジア地域の8月第4週の石化市況では、エチレンは下値10ドル高、上値ステイの690~730ドル/tでの取引となった。下値は6月第3週以来、11週ぶりに反転している。

 エチレン市況は、誘導品の需要低迷から前週まで下落基調を強めていた。こうした中、域内プラントで大型定修があったことに加え、ハリケーン影響で米国市況が上昇し、先高感が強まった。ただスプレッドは、

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ウレタンMDI スポット市況が回復基調を継続

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2020年9月11日

断熱材向けに需要が増加、定修要因で供給も減少

 ウレタン原料であるMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)は、2Q(4-6月期)で需要が底を打ち7月から事業環境が改善傾向となっている。足元の市況は、モノメリックは1700ドル/t弱、ポリメリックは1600ドル/t前半で取引きされており、5月末に比べモノメリックで150ドル程度、ポリメリックで300ドル程度上昇している状況だ。

 いち早くコロナ禍から脱した中国では景気の回復が継続。消費者の間では、政府の補助金などを背景に「リベンジ消費」と呼ばれる消費行動が拡大し、家電製品や住宅を購入する動きが強まった。そのため、それらに使用されるウレタン断熱材の需要が伸長し、その原料となるポリメリックの引き合いが増加している。

 ただ、MDIは、モノメリックとポリメリックが併産されるため、どちらかを多く生産することは難しい。エラストマーや弾性繊維に使用されるモノメリックは、最終製品の市場回復がやや遅れており需要見合いの生産となっている。これにより、ポリメリックの生産量が限られことが市況上昇につながった。また、定修などで供給が絞られたことも大きな要因だ。

 大手メーカーの万華化学の煙台プラント(60万t)が7~8月にかけて定修に入ったことに加え、中国以外のプラントでも定修やトラブルが発生。もともと海外大手メーカーは、市況を維持するため稼働調整を行っているが、さらに供給が絞られたことで市場にタイト感が出ようだ。

 こうしたことから、MDIのスプレッドも良好に推移している。原料であるベンゼン価格(ACP)は、2Q(4-6月期)に急落した後、3Q(7-9月期)に再び上昇している。ただ、MDI市況の上昇分でカバーできており、メーカー各社にとって収益に大きく貢献している状況だ。

 今後については、需給バランスの動向が注目される。中国で内需が盛り上がりつつある中、輸出市場が本格化に回復してくればMDI全体の需要の底上げが期待できる。とはいえ、各社の定修が明けてくることや、市況上昇で稼働率が高まることも想定され、供給量の増加が市況の上値を抑える懸念もある。いずれにせよ、市場の本格的な回復にはコロナ禍の収束が大きなカギを握っており、MDI市況はこの先も予測が難しい展開が続きそうだ。