《化学企業トップ年頭所感》三菱ケミカルホールディングス 越智仁社長

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2020年1月7日

 昨年は「成長の加速と新たな社会に向けた基盤強化」の年と位置づけ、当社では先端技術・事業開発室の機能強化を、三菱ケミカルではデジタル・トランスフォーメーションの推進とITシステム・R&D機能強化、各リージョンでの〝One MCC〟の取り組みを、田辺三菱製薬ではデジタル技術の研究開発やMRへの応用を、大陽日酸では大型M&Aによる欧州での事業基盤の獲得を、生命科学インスティテュートではMuse細胞の生産拡大など、各事業会社では基盤強化に向けた諸施策を推進してきた。

 米中貿易摩擦やブレグジット、中東の地政学的リスクなどにより先行きの不透明感はますます強くなっているものの、医薬品事業の特殊要因を除けば、コア営業利益3000億円程度を安定して確保でき、平均的には3500億円を達成できる水準までに、当社グループの収益性を向上させることができた。これは「APTSIS 20」を通じて行ってきた、ポートフォリオ改革の推進と成長戦略の着実な実行の賜物と考えている。

 一方で、深刻な自然災害や廃プラスチック問題に関して、世界各国で対策が取られ始める中、サーキュラー・エコノミー構築に向けた機運が一層高まっている。また、科学技術の進化は凄まじいものがあり、特にデジタル技術やバイオサイエンス技術の革新は、大きなリスクであると同時に多大なるチャンスだと捉えている。

 今年は「2030年の〝あるべき姿〟に向けた計画策定」の年と位置づけ、1つは次期中期経営計画「APTSIS 25(仮称)」の策定、次に働き方改革のさらなる推進、そしてリージョナルオペレーションの強化、の3点を積極的に進めたい。次期中期経営計画については、2050年からバックキャストした2030年のあるべき姿へ向けての経営の基本方針である「KAITEKI Vision 30」をベースに、年末をめどに作り上げていく。

 働き方改革では業務を見直し、高度化・自動化することで、付加価値の高い仕事に集中して取り組める環境整備を通じ、いつでも、どこでも業務ができる体制を作り上げたい。さらに、地域統括拠点として各地域にしっかりと根付いた営業活動とマーケティングを行い、各事業会社での海外拠点の運営・ガバナンス体制を一層強固なものにしていく。

三菱ケミカルHD 企業価値算出方法をVBAに日本企業で初参画

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2019年12月10日

 三菱ケミカルホールディングス(HD)は9日、企業が環境・人・社会に与える影響を反映させた新たな企業価値算出手法の確立を目的に設立された「Value Balancing Alliance」(VBA)に日本企業として初めて参画すると発表した。

 VBAは、今年8月にBASF、ボッシュ、ノバルティスほか欧米韓の世界的企業8社によって設立された非営利団体。OECDや複数の監査法人と協力し、LCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方を環境影響のみならず社会影響にも展開するなど、企業が環境・人・社会に与える影響を金額換算し、企業間で比較・分析できるようにする企業価値算出の手法と、それに基づく会計基準を今後3年かけて確立することを目指している。金額換算する例として、人材育成による人的資本形成への寄与や雇用、納税による社会への貢献などが挙げられる。

 三菱ケミカルHDは、12月からVBAのステアリングコミッティと企業価値算出の手法開発を担うチームに参画する。近年ESGの取り組みを中長期的な企業価値の評価要素とすることが定着化してきており、同社グループでは、社会価値と経済価値を持続的に両立させることで企業価値(KAITEKI価値)の向上を推進している。こうした中、VBAに参画することで ESG要素を内包したKAITEKI価値算出の高度化を図っていく。

 同社グループは、「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」を「KAITEKI」と表現し、この実現をビジョンとして企業活動を展開。今後もKAITEKI実現を目指した環境・社会課題解決への貢献や、適切な情報開示を通じた経営の透明性の向上に向けて取り組んでいく。

エコプロ2019 化学各社が環境問題への取り組みを紹介

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2019年12月9日

 アジアを代表する環境の総合展示会「エコプロ2019」が5~7日、東京ビッグサイトで開催された。21回目となる今回のテーマは「持続可能な社会の実現に向けて」。515社・団体が、環境問題への対応やSDGsへの取り組みなどを紹介した。

会場全景 化学メーカーのうち、JXTGエネルギーは全国7カ所で展開している、森林保全活動「ENEOSの森」をイメージした「ENEOSブース」を出展。環境保全活動・社会貢献活動、水素社会に向けた取り組みを紹介し、水素ステーションのジオラマや、水素充填機の実物大模型の展示などを行った。

 積水化学工業グループは「持続可能な未来のために積水化学グループが取り組むこと」をテーマに、気候変動の「緩和」と「適応」のソリューションとして、製品・技術・コンセプトを幅広く展示した。その1つ、雨水貯留システム「クロスウェーブ」では、1m角のプラスチック製貯留材の実物を積み上げ、パネルやビデオも使って効果などを説明していた。

 帝人グループはゼロエミッションビークルの実現に向けた環境技術や、プラスチック海洋ごみ問題への取り組みなどを紹介した。ゼロエミッションビークルでは、オーストラリアの世界最大級のソーラーカーレースに参戦した工学院大学の実機を展示。そこに搭載されたポリカーボネート(ウインドウ)、パラ系アラミド繊維(タイヤカバー)、炭素繊維(タイヤ、ボディ)などの実物とサンプルを展示して解説した。

 デンカは環境への取り組みの一環として、建設中のものを含めると17ヵ所になる、自社運営の水力発電によるクリーンエネルギーの利用や、自動車の電動化・軽量化を支える製品・技術などを紹介した。水力発電ではジオラマとビデオで発電の仕組みなどを説明した。

 東洋紡グループは様々な社会課題に対するソリューションを、「素材+サイエンス」で提供するとして、水処理膜や集塵フィルター用繊維などをPR。海水を脱塩して飲料水に変える高性能水処理膜「ホロセップ」については、実際に汚泥の濁りを除去するデモンストレーションを行った。

 日本ゼオンはオープンイノベーションプロジェクト「PROJECT LNES(ルネス)」による、10年後の未来を提案。軽くてデザイン性の高いソーラーカードの活用法を、ジオラマ風の展示により紹介していた。

 三菱ケミカルホールディングスは循環型社会に貢献できる製品として、生分解性プラスチック「BioPBS」やリサイクル炭素繊維、ペットボトル100%で作られたリサイクルポリエステル繊維などを展示。「BioPBS」では、土の中に3日間、15日間、45日間入れたものをそのまま展示して、どのように分解するかを示していた。

三菱ケミカルHD 田辺三菱を完全子会社化、シナジーを創出

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2019年11月20日

 三菱ケミカルホールディングス(HD)は18日、連結子会社である田辺三菱製薬を公開買い付け(TOB)し完全子会社化すると発表した。現在、三菱ケミHDは田辺三菱の株を56・39%保有している。なお、TOBの期間は11月19日から来年1月7日で、買付金額は約4900億円を見込む。

会見でTOBの目的を説明する三菱ケミカルHDの越智社長(右)と田辺三菱製薬の三津家社長
会見でTOBの目的を説明する三菱ケミカルHDの越智社長(右)と田辺三菱製薬の三津家社長

 都内で開催された記者会見で、三菱ケミHDの越智仁社長は「2030年に向けて、科学技術やマーケットは大きく変化する。特にデジタル技術や生化学の発達により、今後の

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三菱ケミカルHD 数理最適化技術の活用に向け新拠点発足

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2019年11月12日

 三菱ケミカルホールディングスは11日、数理最適化技術の積極的な活用・普及を目的として、先端技術・事業開発室のデジタルトランスフォーメーション(DX)グループ内に、数理最適化CoE(Center of Excellence)を発足したと発表した。

 CoEとは、特定の分野に集中して高度な研究・開発活動を展開し、人材育成やビジネス創出の核となる集団・拠点を指したもの。数理最適化CoEでは、数理最適化技術やビジネス・アナリティクスの考え方を活用し、生産や物流など事業活動の最適化に取り組み、エネルギーマネジメントやグローバルサプライチェーンマネジメントの最適化をはじめとする、従来からのDXの取り組みの強化と加速を図る。

 具体的には数理最適化CoE発足により、「業務変革による利益の最大化」と「共通技術基盤と推進体制の確立」を見込んでいる。「業務変革による利益の最大化」では、最新の技術を取り入れて、事業・地域を横断した視点で業務変革を推進し、運用の定着化による持続的な利益の最大化を図る。

 一方、「共通技術基盤と推進体制の確立」では、同社グループ内に分散する要員を集約して組織間連携を強化するとともに、適用技術や方法論を共通化する。また、外部の知見を有効活用して検討を加速していく。

 同社グループでの最適化実現の必要性は、事業のグローバル化や組織横断的な事業の拡大に伴い、年々増加している。加えて、近年のIT環境(ハードウェア、ソフトウェア)や数理最適化アルゴリズムの急速な進化により、データ利活用の環境が整備されつつあることから数理最適化技術の適用可能性が高まっており、その積極的な活用・普及が重要になっている。

 同社は2017年にDXグループを設置し、事業活動の様々な場面でAIやIoTを活用して事業の革新や効率化に取り組んでいる。その一環として今回、数理最適化CoEを発足する。今後も、社内外の資源を活用してDXに取り組み、さらなる事業強化を目指していく考えだ。

三菱ケミカルHDの4‐9月期 MMA市況の下落響き大幅減益

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2019年11月5日

 三菱ケミカルホールディングスは1日、2020年3月期第2四半期(4-9月期)の連結業績(IFRS)を発表した。

 機能部材は半導体と自動車用途を中心に需要が弱含む中、高機能成形材料の高機能エンプラなどの販売数量が減少し、ケミカルズはMMAモノマーなどの市況が下落、医薬品のロイヤリティ収入も減少し、上期業績は減収減益となった。売上収益は前年同期比3%減の1兆8277億円、コア営業利益30%減の1308億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益32%減の813億円。

 セグメント別に見ると、機能商品セグメントの売上収益は前年同期比267億円減の5489億円、コア営業利益は同52億円減の405億円。機能部材は、情電・ディスプレイの一部の製品と環境・生活ソリューションでは販売増となったが、半導体・自動車用途を中心に需要が弱含む中、高機能成形材料の高機能エンプラなどの販売数量が減少した。機能化学は、高機能ポリマーのフェノール・ポリカーボネートチェーンでの市況下落が響き、セグメント全体では減収減益となった。

 ケミカルズセグメントの売上収益は同852億円減の5637億円、コア営業利益は同460億円減の360億円。MMAの需要弱含みにより、MMAモノマーなどの市況が下落。石化ではエチレンセンターの定期修理の影響が縮小したことにより販売数量が増加したものの、原料価格の下落などに伴い販売価格が低下した。炭素は輸出コークスの販売価格低下の影響を受けた。コア営業利益は、市況下落が響き減収となった。

 産業ガスセグメントの売上収益は同938億円増の4195億円、コア営業利益は同174億円増の443億円。前年下期に買収した欧州と米国事業の業績を取り込んだことにより、増収増益となった。ヘルスケアセグメントの売上収益は同240億円減の2053億円、コア営業利益は同245億円減の98億円。国内医療用医薬品は重点品を中心に増加したものの、ロイヤリティ収入の減少などにより、減収減益となった。

 なお、通期業績予想については、原料価格の下落に伴う販売価格の低下や市況悪化、需要減速などを見通し、下方修正を行った。売上収益は3兆7650億円、コア営業利益2500億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1310億円を見込んでいる。

三菱ケミカルHD 「KAITEKI フォーラム」を開催

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2019年10月10日

「これからの未来を創るKAITEKI」テーマに

 三菱ケミカルホールディングスは8日、経団連会館で「The KAITEKI FORUM 2019」を開催し、関係者約600人が参加した。

開会の挨拶を行う越智社長
開会の挨拶を行う越智社長

 開会の挨拶で越智仁社長は「2030年に当社があるべき姿を見定め、中長期的な経営基本方針の策定を進めている。しかし、環境課題の山積や、少子高齢化など数多くの社会的課題は深刻な状況だ。一方、AIやバイオ技術といった科学技術の飛躍的進歩は目覚ましく、大きな変化を社会と市場にもたらしていくと予測されている。また、国際社会では、国際協調による自由主義経済を基調としてきた世界の潮流が一つの転換点を迎えているように見える。こうした中、今年のKAITEKIフォーラムは『これからの未来を創る KAITEKI~20年、30年先の未来に向けて~』をテーマとした。第一線でご活躍の先生方に最先端の知見を伺い、過去の延長線上にない新たな未来を見通し、そして切り開くべく、皆さまと一緒に考えを深めていきたい」と期待を述べた。

 続いて3氏による招待講演が行われた。慶応義塾大学SFC研究所所長の田中浩也教授が「4Dプリンティングが生み出す未来」をテーマに講演。この10年間で進化した3Dプリンティング技術の

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三菱ケミカルHD 3Dプリンティングでデンマーク社に出資

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2019年9月27日

 三菱ケミカルホールディングス(MCHC)は26日、米国シリコンバレーに設立したCVC子会社のダイヤモンド・エッジ・ベンチャーズ(DEV)を通じ、独自の3Dプリンター技術により新たなソリューションを提供するAddiFab社(デンマーク・ジリンジ)に出資したと発表した。同出資とともに、DEVのパトリック・スエル社長がAddiFab社の取締役に就任する。

3Dプリンターによる成形例
3Dプリンターによる成形例

 AddiFab社は3Dプリンターや3Dプリンター用後処理装置、ソフトウェア、材料を開発・製造するスタートアップ。同社の主力プラットフォームであるフリーフォーム射出成形「FIM」は、同社3Dプリンターにより樹脂金型を形成、その金型を使って射出成形を行い、最後に金型材料を除去する成形方法だ。

 今まで不可能だった複雑な形状の部品設計や、成形が難しいエンジニアリングプラスチックなども射出成形が可能になり、従来にない多種多様な特性・形状の部品を製造できる。

 DEVのパトリック・スエル社長は「『FIM』は射出成形の均一性と信頼性に加え、3Dプリンターによるフレキシビリティとスピードを顧客に提供できる」と述べ、自動車向けや医療用に展開する樹脂に「FIM」を適用することで、今後のさらなる展開に期待感を示した。

 AddiFab社はすでに、ゴム・熱可塑性プラスチック・セラミック・超硬合金などの加工に「FIM」が適用できることを示している。また、MCHCグループがもつ幅広い機能性ポリマー(「ケトロン」「テファブロック」「トレックスプレーン」「DIAKON」「KyronMAX」など)も、「FIM」に適用できることを確認しているという。

 今後、事業会社の三菱ケミカルとの連携により、さらにその材料を増やしていく予定だ。MCHCは、昨年7月にDEVを設立し、グループ事業に新たな成長をもたらす、テクノロジーやビジネスモデルをもつスタートアップ企業との戦略的パートナーシップを進めている。AddiFab社への出資は、その第3号案件となった。

三菱ケミカルホールディングス 豚の音声検知システムを共同開発 

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2019年9月5日

 三菱ケミカルホールディングス(MCHC)は4日、Hmcomm(東京都港区)・宮崎大学と、豚の音声を収集し健康状態や母豚の発情兆候・哺乳回数を検知するシステムの開発を目指して共同研究を開始すると発表した。

 MCHCは2017年に先端技術・事業開発室内に未来市場グループを設置し、先進的な顧客ならびにパートナーと連携して新規事業を開拓。10~20年後のMCHCグループのビジネスポートフォリオの拡大とグローバルなプレゼンスの強化に寄与することをミッションとしている。その中で将来予想される食糧難に向けて畜産分野の安全・安心を提供する様々なソリューション提案を目指している。

 Hmcommは産業技術総合研究所(産総研)発のベンチャー企業として、産総研独自の音声処理技術を用いた要素技術の研究/開発と、ソリューション/サービスを提供。これまでにも異音検知プラットフォームを活用した豚の健康管理に関する実証試験を実施するなど、音から価値を創出し、革新的サービスを提供することで社会に貢献することを目指している。

 今回開始する共同研究では、宮崎大学住吉フィールドおよび南さつま農業協同組合加世田農場で飼育する母豚や肥育豚の音声を収集し、Hmcommのディープラーニングによる異音検知プラットフォーム「FAST‐D」を活用。

 AIに学習させることで、熟練者と同等以上のレベルで「豚の呼吸器系疾病の兆しの早期検知」「発情兆候の検知」「哺乳回数の測定」を行い、熟練差のノウハウの平準化を推進する。またこの音声検知システムを構築することで、より少人数での効率的な畜産業務の実施が期待される。

 今後もMCHCグループは、持続的な社会の実現のため、人・社会・地球が抱える課題解決に向けてグループの総合力でソリューションを提案し、社会に価値を提供し続けていく。

三菱ケミカルホールディングス 越智社長「10年後の世界は今よりさらに厳しい」

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2019年8月19日

 三菱ケミカルホールディングス(HD)は8日、本社で記者懇談会を開催し、中期経営計画(2011~2020年度)の進捗、また次期中計の策定や経営方針について説明を行った。

 景況感について越智仁社長は、「米中貿易摩擦が深刻化している。中国経済は減速しているが、(米国が発表した)第4次追加関税が発動すれば、年末はさらに悪化してくるだろう。米国経済も、輸入品価格の上昇で消費者のデマンドが落ちる可能性があり、また、米中への輸出に依存している欧州経済への影響も免れない。世界経済は来年初めまでは

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