《化学企業トップ年頭所感》三菱ケミカル 和賀昌之社長

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2021年1月7日

 2020年はまさしくコロナ禍の年となったが、当社グループとして人々の生活を直接的に支える製品を社会に提供することができた。人、社会、地球が抱える様々な課題に正面から向き合い、世の中に必要とされる素材を提供し、社会に貢献し続けるという当社グループの信念に変わりはない。

 また、経営効率向上のために、一部事業を縮小する反面、成長分野についてはM&Aなどによる強化を行っている。変わりゆく事業環境に適応し、着実に成長していくために、安全第一とコンプライアンスの徹底を基盤とし、「安全・安定操業」、「収益力の強化」、「真のグローバル化」および「営業改革」を推進する施策に、本年も引き続き取り組んでいく考えだ。

 人事制度については、「従業員と選び選ばれる関係」を実現するため、新しい制度を実施することとした。「Pay for job,Pay for performance」を基本方針に、挑戦する風土醸成、公正な評価・処遇、社員一人ひとりの自律、透明性の高い人事制度の実現を目指した制度変更を進めていく。

 本年4月には大幅な組織改正を実施し、事業部門を製品や市場分野といった軸で集約を行い、共通部門についても、より大きな単位の組織として再編する。組織の壁を取り払い、近い分野の人の交流が増えることで、シナジーを推進し、ソリューションの質を向上することが狙いだ。また、権限委譲を進めることで、アクションや判断の速度アップと、より柔軟な資源投入を図っていきたい。

 一方、菅総理が所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と述べ、日本でもカーボンニュートラルへ向かって大きく舵が切られた。総合化学としての引き出しを活用して、地球を救うための技術を社会に提供していくことが、当社グループの使命だと考えている。昨年4月にサーキュラーエコノミー推進部を新設し、グローバルな視点でサーキュラーエコノミーに資する事業・製品・サービス全ての課題整理、ソリューションの提案を進めてきた。地球の限りある資源の循環、有効利用という観点で、素材産業が目指していくべきビジネスモデルについて産学連携の共同研究も開始している。本年も、循環型社会の実現を目指して、社会全体に総合化学として価値を提供する活動を加速させていく。

三菱ケミカル 三菱ケミカルフーズを統合、組織再編の一環

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2021年1月7日

 三菱ケミカル(MCC)は6日、完全子会社である三菱ケミカルフーズ(MFC)を、4月1日付で吸収合併すると発表した。

三菱ケミカルフーズ統合
三菱ケミカルフーズ統合

 三菱ケミカルホールディングスグループは中長期経営基本戦略「KAITEKI Vision 30」に基づき、解決に貢献すべき社会課題を特定。その中に「持続可能な食糧・水供給」や「健康でいきいきした暮らしの実現」があり、MCCはこれらの事業領域の成長・強化を目指している。

 一方、MFCは「おいしさと健康をもっと身近に」をモットーに、トップシェアのシュガーエステルやビタミンEをはじめとする多彩な食品機能材、食品素材、および医薬原材料の事業を展開し、安全・安心をベースに、食と健康分野で顧客のベストパートナーとして事業を拡大してきた。

 こうした中、MCCは4月付で事業単位を見直し、製品や市場分野の軸で集約する組織再編を行う。その一環として、MFCを統合することで、基礎研究から製品開発、製造、販売、テクニカルサービスに至るまで、MCCグループ内の「食糧・水供給」と「健康」事業領域に関わる資源を1つに集約する。今後、さらに外部資源の導入を含め、あらためてビジネスモデルを広く構想し、付加価値の高いソリューションを提供することで持続可能な社会の実現に向けて貢献していく。

三菱ケミカル 膜ろ過実証事業、UNIDO支援事業に採択

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2020年12月28日

 三菱ケミカルはこのほど、グループ会社である三菱ケミカルアクア・ソリューションズ(MCAS)が取り組む、ミャンマーでの膜ろ過浄水装置を利用した分散型給水システムの実証事業が、国際連合工業開発機関(UNIDO)の支援事業に採択されたと発表した。

 UNIDOは、「開発途上国の感染症予防に向けたSTePP(サステナブル技術普及プラットフォーム)技術の実証・移転による海外日本企業支援事業」を実施。開発途上国の新型コロナウイルス感染症をはじめとした様々な感染症対策に役立つ技術を保有する日本企業が、健康・衛生環境の向上を目的とした技術の普及に取り組むことを支援している。

 新型コロナウイルスなどの感染症予防と保健・衛生環境の向上には、安全で清潔な水の安定供給が不可欠だが、ミャンマーではそれに必要な水インフラが十分に整っていない。

 MCASはこうした課題の解決に向けて、ミャンマーの都市部において、特に感染症予防の観点から重要度の高い病院に膜ろ過浄水装置を導入。現地パートナー(MCCグループ会社MW Aqua Solutionsおよび伊藤忠商事ヤンゴン事務所)とも連携しながら、分散型給水システムの実証を行っていく。

 今回ミャンマーに導入する膜ろ過浄水装置は、水源(井戸水、市水、河川水)を問わず浄水処理ができ、適切な技術を組み合わせることで世界保健機関の飲料水質基準を満たす水を供給することが可能。同装置はユニット化されているため施工期間が短く設置が容易で、無人運転が可能なことから現地での運用に適している。

 さらに、装置に遠隔監視システムを搭載することで、日本からも装置稼働状況や水質などの各種データ、異常値をリアルタイムに把握することができ、トラブル発生時などのメンテナンス対応を両国で迅速に行えるよう運用体制を整える。

 MCASは今後も、UNIDOをはじめとする国際機関などと協力し、安全で清潔な水を安定して供給できるソリューションをグローバルに提供していく考えだ。

三菱ケミカル CFRTPパイロット設備、福井県に新設

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2020年12月28日

 三菱ケミカルは25日、熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維複合材料(CFRTP)のパイロット設備を福井県内に新設すると発表した。2021年中の稼働開始を予定している。航空機や自動車などのモビリティ用途では、環境規制などを背景に機体や車体の軽量化要求が高まっており、軽さと強度を兼ね備えるCFRPの利用が進むと見込まれている。一方で、CFRPの利用促進のためには、これまで主に利用されている「熱硬化性樹脂」を用いたCFRPに対し、部品製造に要する時間を短縮できリサイクルも容易な、CFRTPの普及が求められている。

 CFRPで多くの採用実績があり、炭素繊維と樹脂改質に関する技術を豊富にもつ同社は、福井県工業技術センターの支援と同社グループ内の技術シナジーにより、今回、空隙が少なく極めて高品質なCFRTPを高効率に製造できる技術を確立し、パイロット設備の設置に至った。今後、これまで輸入品が中心であった国内のCFRTP市場に対し、熱可塑性樹脂複合材料のブランドである「Kyron」シリーズの新製品として提案を進めていく。

 三菱ケミカルは、PAN系やピッチ系炭素繊維、また汎用から高耐熱性の熱可塑性樹脂に関する世界トップクラスの技術をもつ。これらグループの総合力を生かし、ますます多様化・高度化する顧客の要望に応える新製品の開発を進め、技術革新の著しいモビリティ分野に対して最適なソリューションをタイムリーに提供することで、積極的に事業を展開していく考えだ。

三菱ケミカル 人事(2021年1月1日)

2020年12月22日

[三菱ケミカル・人事](2021年1月1日)▽サーキュラーエコノミー推進部長馬渡謙一郎▽同部部長付金沢大輔(2月1日)▽MMA部門MMA・Asia本部メタクリレート第1事業部長、同部門同本部同第2事業部長三上裕司▽ルーサイトインターナショナルシンガポール社香春光千夫▽解兼情電・ディスプレイ部門半導体本部半導体ソリューション事業部長、同部門同本部長下平靖雄▽同部門同本部同事業部長スコット・ジューラー(2月1日入社予定)。

 

三菱ケミカル MCASが気候変動アクション環境大臣表彰に

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2020年12月21日

 三菱ケミカルはこのほど、グループ会社である三菱ケミカルアクア・ソリューションズ(MCAS)が、環境省から「令和2年度気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞したと発表した。

気候変動アクション環境大臣表彰
気候変動アクション環境大臣表彰

 環境省では今年度より、気候変動の緩和と気候変動への適応に顕著な功績のあった個人または団体に対し、その功績をたたえる「気候変動アクション環境大臣表彰」を実施。今回、MCASがケニアやミャンマーで行ってきた塩水化・高濁表流水の浄化事業の活動が評価され、同表彰の普及・促進部門(適応分野)で受賞者の1つに選定された。

ケニア住民の間で浄化された水は喜ばれている
ケニア住民の間で浄化された水は喜ばれている

 MCASが事業を展開するケニアやミャンマーでは、気候変動の影響を受け、乾季の河川水位低下に伴う海水遡上(表流水の塩水化)や、雨季の長期化による表流水の高濁度化が深刻化。MCASでは、このような水質が不安定な水源に対し、これまで培ってきた水処理技術を活用して、飲用に適した安全な水を提供するための事業を行っている。また、膜ろ過プラントの運転・維持管理については、現地の水道公社職員に技術移管するだけでなく、遠隔監視システムにより、日本からもモニタリングや技術サポートを行える体制を構築している。

 MCASでは今後も、安全・安心な水の供給を通じて、三菱ケミカルホールディングスグループの目指す「KAITEKI」の実現に貢献していく。

 

三菱ケミカル 米英独のグループ会社統合し総合力を強化

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2020年12月14日

 三菱ケミカルはこのほど、米国、英国およびドイツにおけるグループ会社を、来年4月1日をめどに統合すると発表した。三菱ケミカルホールディングスグループの中期経営計画に掲げるグループ会社削減方針に従い、今回、各国に所在するグループ会社を統合することにより、互いのノウハウやリソースを共有・集約することでより一層の連携強化をはかり、各地域での事業の総合力を強化する。また、各地域に根差したスピーディな顧客対応力の強化や、各地域特有の社会課題に対してもソリューションの提供に努めていく。

 米国ではグループ会社9社を統合し、「Mitsubishi Chemical America」を設立。事業内容として、①米州地域のリージョナルヘッドクオーター機能②グループ製品の輸入販売③化学工業製品、石油製品、プラスチック製品の製造・販売④半導体装置部品の精密洗浄事業、を手掛ける。

 英国ではグループ会社5社を統合し、「Mitsubishi Chemical UK」を設立。事業内容として、MMAほかメタクリレートモノマー、EVOH、スペシャリティポリマー・レジン、LIB用電解液の製造・販売、を手掛ける。

 ドイツではグループ会社5社を統合し「Mitsubishi Chemical Europe」を設立。事業内容として、①欧州地域のリージョナルヘッドクオーター機能②グループ製品の輸入販売③炭素繊維製品、プラスチック製品の製造・販売④半導体装置部品の精密洗浄事業、を手掛ける。

三菱ケミカル 米国でMMAモノマー新設用の土地を取得

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2020年12月10日

 三菱ケミカルは9日、米国での独自技術「新エチレン法(アルファ法)」によるMMAモノマーのプラント建設を前提に、同国ルイジアナ州ガイスマーの土地を取得したと発表した。2022年半ばをめどに投資の最終判断を行う予定で、2025年中に35万tのMMAモノマー生産設備の稼働を目指す。

 同社は、2010年代前半より米国のシェールガス由来のエチレンを原料とした「新エチレン法(アルファ法)」によるMMAモノマーのプラント建設に向け候補地を検討。今回取得する土地は、エチレンをはじめとした原料調達のアクセスや近接するミシシッピ川を活用した物流面の優位性などにより、競争力の高いMMAモノマー事業の実現が可能となる。

 新エチレン法(アルファ法)は、2008年に同社グループのルーサイト社が開発した独自技術。同製法のプラントは、シンガポールとサウジアラビアにあり、今回の米国が3番目の拠点となる。また、米国プラントは生産能力35万tを予定しているが、これまで最大規模であったSABICとの合弁会社が運営するサウジアラビアプラント(同25万t)を超え世界最大となる見込みだ。

 同社は、MMAモノマーをグローバルに展開しており、今回のプロジェクトは単独出資で進めている。独自技術や立地優位性をベースとした競争力の高いプラントを新設することで、米国をはじめとした世界全域への最適な供給体制を構築し、リーディングカンパニーとしての地位を確固たるものにしていく。

三菱ケミカル 働き方改革を推進、社内転職が可能に

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2020年12月10日

キャリアデザイン面談を実施、社員の成長を支援

 三菱ケミカルは、同社流の働き方改革「三菱ケミカルは決めました」と題した30項目の宣言を昨年発表し、その実現に向けた取り組みに注力している。その一環として、〝従業員一人ひとりが社会の変化を的確に捉えて成長することが企業の持続的成長につながる〟という考えの下、グループ全体で「自律的なキャリア形成支援」を展開。

 具体的施策の1つとして、今後のキャリアについて、現状の課題と今後の取り組みを中長期的な視点で上司と話し合う「キャリアデザイン面談」を年1回実施している。面談では、〝ありたい姿〟を「キャリアデザイン面談シート」に記入。従業員自身が将来のビジョンと向き合う機会にもなっており、本人の異動希望や勤務地などの条件を上司と共有することで実現を目指す。

 同社の人事異動は、会社主導のみならず、職種・役職の公募に従業員が応募するケースも多く、関連会社の社長職が公募されることもある。その件数は年々増加しており、「キャリアデザイン面談」の結果、この公募制度が利用されることもある。こうした面談をはじめ、様々な社員の自律的なキャリア形成施策が評価され、厚生労働省が主催する「グッドキャリアアワード 2019」では、「イノベーション賞」を受賞した。また、面談では、自分が描いたキャリアに近づくために、新たな業務に挑戦することができる一方で、同じ社内で全く異なる職種を選ぶことも可能だ。

 この〝社内転職〟ともいえるキャリアチェンジは、総合化学メーカーである同社の事業業域が極めて広いこと、また、これを支えるための各研究所、購買、物流、知財管理など、数多くの部署をもっていることで実現していると言える。「キャリアデザイン面談」は、同社が発足した2017年に新設したが、それまで、従業員が主体的にキャリアについて考える機会がなかったため、人事部内にキャリア支援を専門業務とする「キャリアサポート室(現・キャリアデザイン・組織開発室)」を立ち上げた。

 キャリア相談窓口の設置、面談制度の新設、各拠点での説明会やワークショップの開催といった施策を実施した結果、キャリア相談件数は2017年度の39件から、2018年度には248件と大幅に増加しており、徐々に自身のキャリアについて自主的に考える意識が定着しつつある。

 同社は、大きく変化する市場環境や激化するグローバル競争に適応するとともに、多様な人材をひきつけ、活躍できる環境を実現するため、人事制度改革を推進。その一環として、人材配置については、10月から社内公募による異動を原則とした。募集回数も従来の年1回から4回に変更し、従業員の自律的で多様なキャリアを、一層支援・促進していく考えだ。