富士フィルム 豪・再生医療ベンチャーと独占ライセンス契約

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2019年9月19日

 富士フイルムはこのほど、オーストラリアの再生医療ベンチャーCynata Therapeutics Limited(Cynata社)と、同社が開発中の再生医療製品「CYP‐001」の開発・製造・販売に関する独占ライセンス契約を締結したと発表した。

 「CYP‐001」は、他家iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた再生医療製品で、Cynata社が骨髄移植後に発症する合併症「移植片対宿主病(GvHD)」を対象に企業治験を進めているもの。富士フイルムは、GvHDを対象とした、同製品の全世界における独占的な開発・製造・販売権をCynata社より取得し、まずは日本で企業治験を2020年中に開始する計画だ。

 再生医療は、アンメットメディカルニーズへの新たな解決策として注目されている。その中でも分化万能性と無限増殖性を持つiPS細胞による治療は、多様な細胞を大量に作製できることから、実用化への期待が高まっている。

 GvHDは、白血病などの治療で骨髄移植を行った後に発症する重篤な合併症。移植された骨髄由来のリンパ球などの免疫細胞が免疫応答により患者の体を異物として認識し攻撃することで、全身に炎症が起こる。通常、免疫抑制剤などで治療を行うが、約半数で効果が見られず、最悪の場合、死に至るアンメットメディカルニーズの高い疾患だ。

 Cynata社は、富士フイルム子会社でiPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるフジフイルム・セルラー・ダイナミクス(FCDI)が供給したiPS細胞を間葉系幹細胞に分化誘導して「CYP‐001」を作製。2017年には、iPS細胞を用いた再生医療製品の企業治験では世界初となる同製品の臨床第Ⅰ相試験を、GvHDを対象に英国よび豪州で開始した。

 富士フイルムは、2017年に、同製品の開発・製造・販売ライセンス導入などを目的にCynata社へ出資。今回、Cynata社が実施した臨床第Ⅰ相試験で、安全性の評価項目が達成され、さらに皮膚の湿疹や消化器官の異常などGvHDの症状が改善される効果がみられたことから、同製品の開発・製造・販売権の取得を決定した。

 富士フイルムは、FCDIにて、アンメットメディカルニーズの高い加齢黄斑変性や網膜色素変性、パーキンソン病、心疾患などの領域でiPS細胞を用いた再生医療製品の研究開発を推進。今後、FCDIのみならず、グループ会社の技術・ノウハウを活用して、事業拡大を図るとともに、再生医療の早期産業化に貢献していく。

富士フイルム iPS細胞を用いた創薬支援分野の協業を開始

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2019年7月16日

 富士フイルムはこのほど、アクセリードとiPS細胞を用いた創薬支援分野での協業を開始したと発表した。

 富士フイルムのiPS細胞由来製品とアクセリードの化合物評価・解析サービスなど、両社の技術や製品・サービスを組み合わせることで、顧客提案力のさらなる強化を図るとともに、新たな評価方法やサービスの開発を目指す。

 昨今、新薬の研究開発では、多額の費用がかかる臨床試験前に、医薬品候補化合物の安全性や有効性、薬物動態などをより効率的かつ高精度に評価したいというニーズが高まる中、無限増殖性と多様な細胞に分化する性質を持つiPS細胞が新薬の研究開発ツールとして注目されている。

 iPS細胞は、狙った細胞に分化誘導させて、その細胞(iPS細胞由来分化細胞)を用いることで、ヒト生体に近い環境を再現できるため、医薬品候補化合物の評価に活用される事例が増えている。

 また、iPS細胞由来分化細胞を用いた安全性試験の標準化に向けた取り組みも進んでおり、iPS細胞のさらなる需要拡大が見込まれている。

 富士フイルムは、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国子会社フジフイルム・セルラー・ダイナミクス(FCDI)を通じて、iPS細胞由来の心筋細胞や肝細胞、ミクログリア細胞など15種類の創薬支援用iPS細胞由来分化細胞を、全世界の製薬企業やアカデミアなどに販売し、多様な顧客ニーズに応えるとともに、iPS細胞を用いた新薬開発の普及に取り組んでいる。

 アクセリードは、創薬ターゲットの探索から医薬品候補化合物の最適化、さらには臨床開発への橋渡しプロセスまでの総合的な非臨床創薬研究サービスプロバイダー。現在、創薬研究をプロジェクト単位で請け負う統合型創薬研究支援サービスなど特徴的なサービスを展開し、事業拡大を進めている。

 今回、両社は技術や製品・サービスを組み合わせた協業を通じて、iPS細胞を用いた創薬支援分野での顧客提案力をさらに強化する。さらに、両社の技術・ノウハウを活用して、顧客のきめ細かなニーズに応じた評価方法やサービスの開発も行い、顧客が進める新薬の研究開発の効率化・迅速化に貢献していく。

 今後、培地のリーディングカンパニーであるフジフイルム・アーバイン・サイエンティフィックや総合試薬メーカーである富士フイルム和光純薬の持つ培地・試薬なども組み合わせた、創薬支援分野でのさらなる協業も検討していく。

 

 

富士フイルム 培地生産で欧州に新工場を建設、世界3拠点体制に

2019年7月5日

 富士フイルムはこのほど、欧州拠点のフジフイルム・マニュファクチャリング・ヨーロッパ(オランダ)に、培地を生産する新工場を建設すると発表した。

 投資額は約30億円。今年中に着工し、2021年内の稼働開始を予定。欧州では初となる培地生産工場を建設することで、日米欧の3拠点体制にし、細胞培養に必要な培地のさらなる事業拡大を図る。

 新設するのは、cGMPに対応した培地の生産工場で、北米に次ぐバイオ医薬品製造企業の集積地である欧州に現地生産体制を整える。

 cGMPとは、米国FDA(食品医薬品局)が定めた医薬品や医薬部外品の、最新の製造管理・品質管理規則のこと。これにより、受注から納品までのリードタイムを短縮し、顧客サポート力を強化するとともに、伸長する培地需要に対応していく考え。

 新工場では、日米の生産拠点と同様に動物由来成分を含まないカスタム培地を生産し、バイオ医薬品製造や再生医療などの用途に提供する予定だ。培地は、細胞の生育・増殖のための栄養分を含んだ液体や粉末状の物質で、バイオ医薬品や再生医療製品などの研究開発・製造時の細胞培養に必要不可欠なもの。

 現在、抗体医薬品を中心としたバイオ医薬品の需要増加や、細胞を用いた治療法の拡大に伴い、培地市場は拡大しており、今後も年率約10%の伸長が見込まれている。

 富士フイルムは、2017年に総合試薬メーカーの和光純薬工業(現富士フイルム和光純薬)を買収し、培地事業に参入した。2018年には、培地のリーディングカンパニーであるアーバイン・サイエンティフィック・セールス・カンパニー(現フジフイルム・アーバイン・サイエンティフィック)を買収し、培地ビジネスを拡充させた。

 現在、高い研究開発力や品質管理力により、顧客ニーズにあわせた最適なカスタム培地などを開発・提供する。また、日米に保有するcGMP対応の生産拠点を活用し、全世界の製薬企業やバイオベンチャー、アカデミアなどに製品を供給している。

 今後は、日米欧の3拠点体制の下、高品質な培地を安定供給し、顧客満足度をさらに向上させていく。

 

富士フイルム 米社とiPS細胞によるがん免疫治療薬の開発を開始

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2019年7月4日

 富士フイルムはこのほど、がん免疫療法に他家iPS細胞を用いた次世代がん免疫治療薬の開発を加速させるため、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国子会社フジフイルム・セルラー・ダイナミクス(FCDI)と、医療分野における米国有力ベンチャーキャピタルのVersant社が、新会社Century社を設立し、他家iPS細胞を用いた次世代がん免疫治療薬の開発を開始した。なお、同開発には、大手製薬企業バイエル社も参画し開発費用を拠出している。

 がん免疫療法は、生体の持つ免疫機能を高めてがん細胞を排除する治療法で、延命効果や症状の緩和が期待できることから、がん免疫治療薬の研究開発が活発化している。

 なかでも、現在注目されている、CAR‐T胞を用いたがん免疫治療薬は、免疫細胞であるT細胞にCAR遺伝子を導入することで、がんに対する攻撃性を高めた医薬品。すでに米国では、自家CAR‐T細胞を用いた治療薬2製品が承認され、非常に高い治療効果が確認されている。

 しかし、自家CAR‐T細胞を用いた治療薬は、患者自身のT細胞を採取・培養して作製するため、患者ごとに細胞の品質にバラつきが発生、また製造コストが非常に高い、といった課題がある。

 FCDIは、他家iPS細胞由来のCAR‐T細胞を用いたがん免疫治療薬の研究開発を推進。同治療薬では、他家iPS細胞を大量培養し、分化・誘導して作製したT細胞を活用するため、均一な品質と製造コストの大幅な低減が期待できる。

 今回、FCDIは、同治療薬の開発を加速させ早期事業化を図るために、有望な技術を持つベンチャー企業に必要な人材や技術などを獲得・投入し数多くの事業化を支援してきたVersant社、数々の新薬を創出してきた経験・実績のあるバイエル社と協業。

 今後、富士フイルムは、Century社にて、他家iPS細胞由来のCAR‐T細胞などを用いたがん免疫治療薬の早期創出・事業化を目指していく。

富士フイルムと日本MS 医療現場支援の協業を開始

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2019年6月24日

 富士フイルムと日本マイクロソフト(MS)はこのほど、革新的な医療現場支援の実現に向けた協業を開始すると発表した。

 今回の協業の一環として、富士フイルムは、今年中にスタートするAI・IoTを活用した内視鏡予知保全サービスのクラウド基盤に、MSのパブリッククラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を採用。

 富士フイルムのIoTおよびデータ分析AI技術と、同プラットフォームのリアルタイムでの大容量情報処理能力を組み合わせ、医療機関で稼働している内視鏡の予知保全サービスを実現し、メンテナンス作業の効率を大幅に向上させ、革新的な医療現場支援を推進する。

 昨今、欧州をはじめとし、グローバルで厳格化する個人情報保護規制などへの対応が重要となっている。こうした中、富士フイルムは、世界54リージョンで提供されている同プラットフォームが、各国での法規制に対応しており、高いセキュリティを備えていること、またグローバルなビジネス展開を進める上で、事業展開を支援する体制を備えていることを評価した。

 富士フイルムは、医療用内視鏡システムを世界中の医療機関に提供。ここ数年、その需要は拡大しており、医療現場で内視鏡システムを常時適切に稼働させるため、保守サービスの拡充にも注力している。

 内視鏡システムから得られたスコープなどの稼働情報をクラウド基盤に集約し、それらをAI技術で解析。内視鏡の使用状況や故障の可能性などを遠隔からモニターできる革新的な内視鏡予知保全サービスを今年中にグローバルで展開していく予定だ。今回、この新たな内視鏡予知保全サービスのクラウド基盤として、同プラットフォームを採用。なお、富士フイルムは今後、内視鏡以外の医療機器にもこの予知保全サービスを展開する予定。

 富士フイルムは、医療画像診断支援、医療現場のワークフロー支援、そして医療機器の保守サービスに活用できるAI技術の自社開発を進め、これらの領域で活用できるAI技術を、「REiLI(レイリ)」というブランド名称で展開。

 これらの領域の中でワークフロー支援については、より迅速に医療現場のニーズに適したソリューションを提供していくために、自社のAI技術に加えて今後、言語・検索に関するMSのAI技術を活用することを視野に入れ、日本MSと連携を進める。

 両社は、医療現場のさまざまなニーズやワークフローに適したソリューションを提供し、医療現場を支援するとともに、患者の満足度向上と健康維持に貢献する。

富士フイルム 再生医療ベンチャーに出資、業務提携も

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2019年6月24日

 富士フイルムはこのほど、再生医療ベンチャーPuREC社(ピュレック:島根県出雲市)の第3者割当増資を引き受け、3億円を出資すると発表した。併せて、同社と再生医療製品の開発・製造受託に関する業務提携契約も締結した。

 ピュレック社は、島根大学発の再生医療ベンチャーで、特殊な間葉系幹細胞(MSC)の作製技術を活用した再生医療製品の実用化に取り組んでいる。

 MSCは、骨や脂肪などの細胞に分化する能力をもち、組織修復や免疫調整など多様な効果が期待されている幹細胞で、脳梗塞や軟骨損傷など様々な疾患での臨床応用が検討されている。

 同大学医学部生命科学講座の松崎有未教授が開発した、骨髄由来のMSCは、超高純度ヒト骨髄幹細胞「REC(Rapidly Expanding Cells)」と呼ばれるもの。一般的なMSCと比べて、分化能や増殖能、炎症部位など特定の場所に細胞が集積する遊走能に優れる。

 また従来の分離法では、MSC以外の細胞や老化した細胞が混在するなど、均一性に課題があったが、同社は2種類の抗体を用いて、骨髄より採取した細胞から分離・作製する手法などを用い、高純度の細胞集団が得られる分離培養法を確立した。

 一方、富士フイルムは、日本初の再生医療製品を開発・上市した子会社のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J‐TEC)や、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米国子会社FCDIを中核に、自社再生医療製品の研究開発を加速させている。

 今回の資本・業務提携により、ピュレック社の「REC」の作製技術にアクセスするとともに、同社が研究開発を進めている、低フォスファターゼを原因とする先天性骨形成不全症を対象とした再生医療製品の開発・製造・販売ライセンス導入の優先交渉権を獲得することになる。

 さらに、ピュレック社から再生医療製品のプロセス開発や薬事コンサルティングなどをJ‐TECが受託することで、再生医療受託事業の拡大も図る。

 富士フイルムは今後、幅広い製品開発で培い進化させてきた高機能素材技術やエンジニアリング技術、グループ企業の独自技術を活用して、再生医療の産業化に貢献していく。

 

富士フイルムなど 新たながん免疫療法の共同研究を開始

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2019年4月3日

 富士フイルムと国立がん研究センターはこのほど、新たながん免疫療法の共同研究を開始したと発表した。今回の共同研究では、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術の1つであるリポソーム製剤を用いて、新たながん免疫療法の創出を目指す。

 リポソームは、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質をカプセル状にした微粒子で、富士フイルム独自の設計により、がん組織の未成熟な血管壁の隙間を透過し、薬剤をがん組織に集積させ、副作用を抑制して薬効を高めることができると期待されている。

 がん免疫療法は、生体のもつ免疫機能を高めてがん細胞を排除する治療法。延命効果や症状の緩和が期待できることから、外科療法、化学療法、放射線療法に続く治療法として注目度がますます高まっている。現在、免疫チェックポイント阻害剤を用いたがん免疫療法が行われているが、一部の患者でしか効果がみられないといった課題がある。

 両者は今回の共同研究を通し、富士フイルムが研究開発を進めている既存抗がん剤を内包したリポソーム製剤「FF-10832」「FF-10850」と免疫チェックポイント阻害剤との併用投与でみられた生存期間延長のメカニズムを解明する。

 具体的には、富士フイルムのリポソーム製剤に関する高度な技術・ノウハウと、国立がん研究センターがもつ、最先端の免疫細胞の解析技術、動物モデルや臨床検体を用いた研究のノウハウなどを組み合わせて、リポソーム製剤が免疫細胞に及ぼす作用を明らかにし、生存期間延長との関係性を解明していく。

 さらに解明内容をもとに、がん免疫療法に必要なリポソーム製剤の要件を見いだし、がんに対する免疫応答を制御する細胞を標的とした新たながん免疫療法を開発し、臨床展開することを目指す。

 

富士フイルム 培地事業の成長を加速し子会社2社を統合

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2019年1月28日

 富士フイルムはこのほど、細胞培養に必要な培地のビジネス拡大に向けて事業体制をより強化するため、富士フイルム和光純薬に、アイエスジャパンを4月1日付で統合すると発表した。研究開発・製造・販売機能の一体化による機能強化などを図り、培地事業の成長を加速させていく。

 富士フイルム和光純薬は、最先端分野の研究ニーズに応える総合試薬メーカーとして、高品位の製品を開発・製造するとともに、試薬のみならず化成品や臨床検査薬へと事業領域を拡大してきた。2006年には、試薬ビジネスの拡大を図るために培地事業に参入。2012年には愛知工場内に培地生産のための専用棟を立ち上げ、事業拡大に向けた取り組みを進めている。

 またアイエスジャパンは、培地のリーディングカンパニーであるIrvine Scientific Sales Company(現FUJIFILM Irvine Scientific:FISI)の日本の販売拠点として1989年に設立。現在は、販売のみならず、開発・生産の機能も兼ね備え、顧客ニーズに合わせた培地を幅広く開発できる強みを生かして、培地事業を拡大している。

 今回、富士フイルム和光純薬にアイエスジャパンを統合し、研究開発・製造・販売機能を一体化させることで、各機能の強化と効率的なオペレーションを実現する。研究開発・製造面では、両社がもつ培地の開発ノウハウ・製造技術などを融合し、研究開発のスピードアップや生産効率のさらなる向上を図る。

 また販売面では、富士フイルム和光純薬がもつ、強固な国内販売網や幅広い細胞培養関連試薬ラインアップなどを生かして、より一層の増販を進めていく。なお、統合後も、現在の両社の生産拠点を維持した体制の下で、高品質な培地を供給していく。今後、富士フイルムは、富士フイルム和光純薬とFISIの技術連携をさらに推進していくことで、培地の開発力や製造技術をグローバルで引き上げ、顧客ニーズに合った高品質・高機能な培地を開発し提供していく。

富士フイルム バイオ医薬品の製剤ビジネスに本格参入

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2019年1月23日

 富士フイルムは、バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらに拡大するため、バイオ医薬品の製剤ビジネスに本格参入する。

 バイオ医薬品のCDMOの中核会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(FDB)の米国テキサス拠点にバイオ医薬品の製剤製造ラインを新設し、2021年初めに稼働させる予定。原薬から製剤までの開発・製造受託をワンストップで対応できる体制を構築することで、さらなる事業成長を図っていく。

 同社は、バイオ医薬品の原薬を対象に、生産プロセス開発から治験薬製造、さらには医薬品の商業生産まで対応する開発・製造受託ビジネスをグローバルに展開し、事業拡大を進めてきた。

 さらなる事業成長を図るため、今月から2年間で総額約100億円の設備投資を行うことを決め、その第1弾として、米国ノースカロライナ拠点で、バイオ医薬品の原薬の生産能力向上に向けた設備増強を進めている。

 今回、第2弾として、製剤ビジネスに本格参入するため、FDBの米国テキサス拠点に、アイソレータと無菌充填機が一体となった最新鋭の全自動型無菌充填システムを導入する。また、製剤の処方設計などを行う開発体制も併せて構築する。

 これまでに、テキサス拠点では、培養タンクを最大12基まで導入できるcGMP対応の生産棟を建設。抗体医薬品の原薬生産のためのシングルユース仕様の2000ℓ動物細胞培養タンクを順次導入し、治験薬製造、医薬品の商業生産までの一連のワークフローを一体的・効率的に進めることができる「Saturn mAb(サターンマブ)プラットフォーム」を活用した受託サービスに注力している。

 今回の製剤製造ライン新設により、同一拠点内で製造した原薬を製剤化でき、幅広い顧客ニーズにスピーディーに応えるとともに、バイオ医薬品の原薬から製剤までの開発・製造受託をワンストップで対応できる強みを生かし、同サービスのさらなる推進を図っていく。

 バイオ医薬品の製造には、非常に高度な生産技術と設備が必要とされるため、優れた技術と設備を有するCDMOにプロセス開発や製造を委託するケースが世界的に急増しており、バイオ医薬品の開発・製造受託市場は年率8%以上の成長が見込まれている。

 同社は、積極的な設備投資や高効率・高生産性の技術開発など成長戦略を進め、2023年度にはバイオCDMO事業で1000億円の売上を目指すとともに、高品質な医薬品の安定供給を通じて、医薬品産業のさらなる発展に貢献していく。

富士フイルム 100億円投資し米国で半導体材料事業を拡大

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2018年12月18日

 富士フイルムはこのほど、半導体材料事業をさらに拡大するため、米国の半導体材料の開発・生産・販売拠点であるフジフイルム・エレクトロニクス・マテリアルズUSAFEUS)で、最先端半導体材料の開発・生産・品質保証などの設備を増強すると発表した。設備投資の総額は、今から3年間で100億円となる。

 AIIoTや次世代通信規格「5G」の普及、自動運転技術の進化などにより、半導体のさらなる需要拡大と高性能化が見込まれる中、半導体の微細化が進んでいる。これに伴い、より純度の高い高性能・高品質な半導体材料を安定的に供給することが求められるようになっている。

 富士フィルムは日本・米国・台湾・韓国・ベルギーなどに半導体材料の研究・開発・生産・販売拠点を置き、フォトレジストや現像液、CMPスラリー、高純度溶剤、イメージセンサー用材料など先端半導体材料をグローバルに提供している。

 各拠点では、半導体の需要拡大や高性能化を見据えた設備増強を進め、現地生産体制や品質保証体制を拡充するなど、顧客サポート力を高めて顧客満足度のさらなる向上を図っている。

 今回の投資では、FEUSのアリゾナ州とロードアイランド州の2工場で、最先端半導体材料の開発・生産・品質保証などの設備を増強する。

 アリゾナ州の工場では、CMPスラリーや高純度溶剤の開発強化のために新棟を建設。新棟内にクリーンルームを設置するとともに、最新鋭の検査装置なども導入し、開発のスピードアップや品質保証体制の拡充を進めていく。

 また、CMPスラリーの増産に向けた設備投資も行い、高まる需要増に対応する。さらに、ロードアイランド州の工場では、最先端のNTI用現像液の生産設備を増強し、さらなる高純度化ニーズに応える。

 富士フィルムは現在、高い成長が期待できる半導体材料分野に積極的に経営資源を投入し、事業拡大に向けて取り組んでいる。今後も、最先端の半導体材料を開発し、ワールドワイドに提供していくことで、半導体産業のさらなる発展に貢献していく考え。