NEDO、地熱発電の導入拡大、14の研究開発に着手

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2021年7月30日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど「地熱発電導入拡大研究開発」において、重点課題である「地熱資源のポテンシャル拡大」と「地域共生・環境保全」、「発電原価低減化」の解決につながる研究開発に着手すると発表した。NEDOは今回の研究開発を通じて大規模超臨界地熱発電所の実用化を目指すとともに、新たな地熱開発や地熱発電所の性能向上を後押しする。

 2018年に閣議決定された「第五次エネルギー基本計画」では、地熱発電は発電コストが低く、安定的な発電が可能なベースロード電源と位置づけられた。同時に、エネルギーミックスの中で2030年度に最大で発電容量155万㎾、発電電力量113億㎾hの導入が掲げられている。

 こうした背景から、NEDOは2019年度に国内外の地熱開発・地熱技術開発動向を調査し、2030年の導入目標達成と2050年の社会実装にあたり求められる技術開発テーマを探索・検討し3つの技術開発の重点課題を挙げた。

 これらの課題解決に向け、NEDOは2021年度から新たな研究開発プロジェクト「地熱発電導入拡大研究開発」を立ち上げる。同研究開発によって将来の大規模超臨界地熱発電所の実用化を目指すとともに、新規地熱開発や既存の地熱発電所の性能向上を促進し、国内における地熱発電のさらなる導入拡大を推進する。

 今回採択した14件の研究開発テーマでは、まず地熱発電ポテンシャルが高いと想定される火山地帯の地表から3~5㎞深部にあると推定される高温・高圧の超臨界水を活用。従来の地熱発電よりも大規模な出力が期待できる超臨界地熱発電の実現に向けた有望地域の地熱資源量の調査と、探査技術の開発を行う。

 また、国立・国定公園内での地熱開発や、開発地域のステークホルダーとの合意形成を可能にするための環境保全対策技術開発に取り組む。さらに、IoTやAIの活用によって地熱発電設備や地熱貯留層の管理を効率化・最適化し、既存発電設備における発電量の引き上げや、新規地熱開発時の発電量向上、コスト削減につながる高度な管理技術の開発を目指す。

NEDO 燃料電池の新たな研究開発着手、普及を加速

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2021年7月29日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、燃料電池の飛躍的な普及拡大に向け、新たに24件のテーマを採択したと発表した。

 2020年度から実施中のテーマを踏まえて、今後さらに補強すべき分野として、セパレータやガス拡散層(GDL)などの先端的な研究開発のほか、農機や建機、港湾荷役機器、ドローンなど多様な用途での燃料電池の活用を目指す実証事業に着手する。

 燃料電池は、燃料がもつ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、原理的に高いエネルギー効率を得られる。また発電時にCO2を発生させないため、GHG排出抑制への貢献が期待されている。

 日本では家庭用燃料電池エネファームを2009年に、燃料電池自動車(FCV)を2014年に世界に先駆けて市場投入した。しかし、今後の自立的な普及拡大に向けて高効率・高耐久・低コスト化が必要となり、また、製品を市場投入したことで多数の課題が顕在化している。

 こうした中、NEDOは、2019年1月にトヨタ自動車や本田技術研究所、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)らとともに「FCV課題共有フォーラム」を開催し、各々で協調して取り組むべき課題の抽出・共有を行った。

 また、経済産業省とNEDOは同年6月に「水素・燃料電池プロジェクト評価・課題共有ウィーク」を開催し、産学官全体にわたる技術開発の活性化に向けて議論した。

 これらの議論を踏まえて策定された「水素・燃料電池技術開発戦略」に基づき、NEDOは2030年以降燃料電池を飛躍的に普及拡大させるため、2020年度から燃料電池システムに関する大規模な研究開発事業である「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」を実施。

 そして今回、燃料電池のさらなる高度化に向けて、現在のテーマではカバーされていない分野を対象に追加公募を実施し、24件の新規テーマを開始する。

 同事業の推進を通じ、日本の燃料電池技術の競争力をさらに強化し、世界市場で確固たる地位を確立するとともに、水素社会の実現に貢献する。

 

NEDO 将来像レポートを公表、価値軸と社会像を提示

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2021年7月21日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、豊かな未来の実現に向けたイノベーション活動を後押しするための将来像レポート「イノベーションの先に目指すべき『豊かな未来』」を公表した。

 国内外の豊かさに関する報告書や各種政府白書、未来予測に関する報告書など計75編を俯瞰的に分析し、イノベーション活動を推進していく上で「大切にすべき6つの価値軸」と「実現すべき12の社会像」を提示。あわせて「現代社会が取り組むべきイノベーション事例」を取りまとめた。

 「自分らしい生き方」「健康で安定な生活」「持続可能な自然共生世界」「持続可能な経済成長」「強靭で快適な社会基盤」「安全・安心な国」の実現を大切にすべき価値軸とし、実現すべき社会像については、3Rの推進や低環境負荷材料の利用により環境負荷を最大限削減しながら経済成長も実現する「物質循環による持続可能な社会」や、社会経済の発展に向けた取り組みと自然共生社会に向けた取り組みを軸とする「環境と調和した持続可能なエネルギー社会」などのように、より具体的なイメージを提示している。

 また、各省庁から発行されている各種白書や国内外の未来予測に関する報告書など計46編に加え、NEDO技術戦略研究センターがこれまでに策定した技術戦略などを参考とした「環境に優しいものづくりの追求」や「エネルギー網の脱炭素化・強靭化」など、豊かな未来の実現に向けて現代社会が取り組むべき40のイノベーション事例も別冊として取りまとめた。

 様々な企業・団体でイノベーション活動の目的の分析や今後の展開のよりどころとして活用されることを期待し、今後も豊かな未来の実現につながるイノベーション活動を展開していく。なお、同レポートについては、9月にオンラインセミナーを開催する予定だ。

 

 

戸田工業とエア・ウォーター メタンから水素とCNT

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2021年7月20日

 戸田工業とエア・ウォーターはこのほど、「メタン直接改質法による鉄系触媒を用いた高効率水素製造システムの研究開発」が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「水素利用等先導研究開発事業/炭化水素等を活用した二酸化炭素を排出しない水素製造技術開発」公募の委託事業に採択されたと発表した。天然ガスやバイオガスなどの主成分であるメタンから、高活性鉄系触媒を用いたメタン直接改質法(DMR法)で、CO2フリー水素を高効率に製造するプロセスとシステムを開発する。

 DMR法は、現在工業的に広く用いられている天然ガスの水蒸気改質法と比べて、メタン1分子当たりの水素生成量は半分だが、製造時にメタン由来のCO2を発生しないCO2フリー反応。戸田工業のDMR触媒調製技術・DMR反応技術で純度70%の水素と高導電性の多層カーボンナノチューブ(CNT)を生成し、エア・ウォーターのガス精製技術で、工業用として一般的に利用される純度99.99%以上の水素を得るシステムで、2022年度中の完成を目指す。

 水素製造コストは、副生CNTの販売を組み合わせることで、日本政府の「水素基本戦略」の2030年目標の「30円/N㎥以下」を目指す。将来的には、DMR反応炉の加熱に再生可能エネルギーまたはカーボン・ニュートラルエネルギーを用いることで、「ターコイズ水素」の提供を目指す。

 同システムは、既存の産業水素サプライチェーンの早期クリーン化を目標とし、現存の都市ガスインフラを最大限に活用した安価なCO2フリー水素の提供を実現するもの。2050年脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速し、水素を利用する企業の価値向上と国内産業の発展に向けて推進していく。

製造システムの概略図
製造システムの概略図

 

NEDO 産業用物質のバイオ生産システム、実証に着手

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2021年7月15日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、産業・社会に有用な物質のバイオ生産システム(産業用物質生産システム)の有効性を実証する14件の研究開発を採択した。

 植物や微生物などの生物を用いて物質を生産する技術(バイオものづくり)は、従来の化学プロセスに比べ、省エネルギーであるとともに、バイオマスからの物質生産も可能であるため、炭素循環型社会実現・持続的経済成長に導くものづくりへの変革が期待できる。しかし、現状の技術ではコストに見合わないため、民間企業での研究開発や投資が促進されにくい状況にある。

 こうした中、NEDOは、バイオ資源の活用を促進する各種技術や従来法にとらわれない次世代生産プロセスの開発に取り組み、バイオものづくり産業の基盤を創出するとともに、産業用物質生産システムの実証を通じてバイオ由来製品の創出を加速させることを目的に「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」を昨年度から推進。

 今年度は「産業用物質生産システムを実証」の研究開発を支援するための公募を行い、今回14件のテーマを採択・着手した。例えば、植物由来微量成分を発酵生産に転換する技術として、野生植物カンゾウ由来の微量成分グリチルレチン酸を微生物発酵によって生産する技術を開発し、安価な新規生産方法開発を実施するテーマ(住友化学、大阪大学)に取り組む。

 また、化石資源由来製品をバイオ由来に転換する技術開発として、ポリアミドを100%植物原料に置き換えることを目指し、ポリアミドの原料となる化合物の獲得を微生物発酵による生産に転換し、工業化に向けて単離精製技術やスケールアップ検討などを実施するテーマ(東レ)、ポリプロピレン原料のバイオ化を目指し、バイオイソプロパノールを高効率に生産する微生物の取得と発酵生産プロセスのスケールアップ検討などによりCO2削減を実現するプロセス開発を実施するテーマ(グリーン・アース・インスティテュート)などに取り組む。

 目的物質の生産性向上を狙うとともに量産化を見据えた生産プロセスの最適化などの研究開発を行い、バイオで実現できる高付加価値機能の創出や、化石資源を含む天然資源への依存低減などにつながるバイオ由来製品の実用化を加速させる。これらの取り組みにより、バイオ由来製品の社会実装加速や新たな製品・サービスの創出を後押しすることでバイオ産業の裾野拡大や炭素循環型社会の実現を目指す。

 

NEDO 高効率帯水層蓄熱システム、ZEB適応性検証

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2021年7月14日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発事業において、日本地下水開発が、日本で初めて高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システムを、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)に適応させる実証施設を山形県山形市に整備したと発表した。

 実証試験とモニタリングによりデータを収集し、システムの最適化設定によってさらなるコストダウンに取り組む。これにより同システムのZEBへの適応性を向上させ、地下水熱エネルギーの有効活用による建物のエネルギー収支ゼロを目指す。

 再生可能エネの利用拡大には電力に加え、地中熱や太陽熱、雪氷熱などの熱利用も重要とされる。しかし再生可能エネルギー熱利用においては、依然として導入にかかる高いコストが課題となっている。

 こうした中、NEDOは、再生可能エネルギー熱利用システムの普及促進・市場拡大を図るため、導入や運用システムのコストダウンに関する研究開発を実施。同事業でNEDOと日本地下水開発は、秋田大学、産業技術総合研究所と共に、地下帯水層に冷熱・温熱を蓄え有効利用する国内初の高効率帯水層蓄熱システムを開発した。

 日本地下水開発の事務所で空調に導入した結果、従来のオープンループシステムと比較して初期導入コストの21%削減と年間運用コストの31%削減を達成した。その後、2019年にスタートしたNEDOの助成事業「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」において、日本地下水開発はゼネラルヒートポンプ工業と共同で、事業の成果を発展させ開発した高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システムを、ZEBに適応させる検証に着手。今年7月、国内では初となる、

 同システムのZEB適応性を検証するための実証施設を山形県山形市に新築し、検証に向けた各種データのモニタリングとデータ収集を開始した。

 

NEDOなど 世界最高出力のパルスレーザー装置を開発

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2021年7月13日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と浜松ホトニクスはこのほど、NEDOの「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトで半導体レーザー(LD)励起では世界最高のパルスエネルギー出力250J(ジュール)の産業用パルスレーザー装置を開発した。エネルギー増幅能力は、従来の同程度サイズの産業用パルスレーザー装置の2倍以上だ。

 レーザーは加工条件などのデジタル制御が容易で、IoTやAI(人工知能)によるクラウドを通じた生産設備の連携と自動化・無人化における最重要ツールの1つ。加工用レーザーには一定強度のレーザー光を連続出力するCW(連続波)レーザーと、短い時間間隔で繰り返し出力するパルスレーザーがあるが、CWレーザーは溶接や切断などレーザー加工の主流である。パルスレーザーは高強度のLDや大型のレーザー媒質がなく高出力装置がないため、レーザーピーニング(衝撃波による金属の硬化加工)などの利用以外に、応用開拓が進んでいない。

 今回、レーザー媒質として最適化した世界最大面積のセラミックス10枚を搭載し、光エネルギーの蓄積能力を約2倍に向上。また、増幅器の設計を見直し、新開発の小型LDモジュール8台を照射角度や位置などを工夫して搭載し、レーザー媒質の励起効率を約2倍に向上させた。さらに同社独自の高出力レーザー技術で装置全体の光学設計を最適化し、集光性や照射面に対する出力分布の均一性などビームの品質を上げた。これらにより、パルスエネルギー出力250Jの産業用パルスレーザー装置を実現した。

 この性能を維持したままビームサイズを4倍に拡大することで、1kJ級レーザーを実現できる可能性を確認した。これにより、レーザー加工技術の発展に加え、医療やエネルギー、新材料、基礎科学といった新分野でのレーザーの応用開拓も期待される。

 両者は今後、高効率レーザープロセッシング推進(TACMI)コンソーシアムと連携し、同装置を用いたレーザー加工実験と加工データを集約したデータベースの構築を進め、浜松ホトニクスは1kJの産業用パルスレーザー装置の実現に向けた研究に取り組んでいく。

 

NEDOと日本政策投資銀行(DBJ) CN実現に向け相互協力協定を締結

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2021年7月12日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日本政策投資銀行(DBJ)はこのほど、「2050年カーボンニュートラル」実現を目指し相互協力協定を締結した。

 持続可能な社会の構築に貢献するイノベーションを加速させる目的で、NEDOの多様な技術分野に関する技術戦略やマネジメントの知見・ノウハウと、DBJの幅広い産業ネットワークやファイナンスの知見を有機的に連携させ、革新的な技術開発成果の社会実装を促すとともに、イノベーションの創出を目指す。

 同協定を通じて、NEDOは技術戦略やプロジェクトに対する投資家目線の強化や高い事業性が期待できる革新的な技術シーズの発掘など、社会課題の解決に向けた「イノベーション・アクセラレーター」としての役割を強化。DBJは経営基盤の整備や研究開発の促進、民間企業との協業機会の模索などを通じてNEDOプロジェクトの事業化を支援し、持続可能な社会の実現に貢献していく。

 なおDBJは、第5次中期経営計画(2021~2025年度)で「GRIT戦略」を掲げ、グリーン社会(G)、しなやかで強い安心安全な地域・社会や産業基盤(R)、事業化可能と評価できるイノベーション(I)、現在の事業基盤を前提とした移行(T)の四分野に、5年間で5.5兆円を投入する計画だ。

NEDO CNTをほぐす技術、車載用スピーカーに採用

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2021年7月8日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、GSIクレオスが開発したカーボンナノチューブ(CNT)の性能を最大限に発現させる技術が、三菱電機の振動板に採用され、新製品として車載用スピーカーに搭載されたと発表した。

 CNTに代表されるナノ炭素材料は、「軽量」「高強度」「高電導度」「高熱伝導度」という特長をもつ日本が世界をリードする材料。一般的にCNTはそのナノサイズのため凝集塊の状態で存在するが、CNTが本来もつ性能を発現させるためには、この強く固まった塊を解砕(ほぐす)して、CNTを母材内に高分散させる必要がある。そのためには高いエネルギーを塊に加え、文字通り粉砕しながらほぐしていく方法が一般的だが、CNTの破壊や短化現象が生じ、CNT自体に欠陥が生じてしまうなど、CNTを良好な状態で高分散させることは技術的に極めて困難で、CNT機能発現の大きな妨げになっていた。

 こうした中、NEDOが取り組む「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」の技術開発テーマの1つとして、GSIクレオスはCNTの構造を壊さずに凝集塊を良好に「ほぐす」ことにより、次工程でCNTを分散しやすくし、複合材料など工業製品への応用の可能性を大きく広げる技術を開発した。

 GSIクレオスはプロジェクト終了後も、自社独自開発品であるカップ積層型カーボンナノチューブ(CSCNT)によりCNTをほぐす技術の改良を続け、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、塗液への分散、さらにほぐしたCSCNTが分散した複合材料の設計・最適化を進め、様々な工業製品への適用を試みてきた。この結果、三菱電機が同技術を活用したCSCNTを使った振動板を新製品の車載用スピーカーに採用したことから、NEDOプロジェクトの成果として製品の実用化と市場展開につながった。このスピーカーは従来製品と比べ高音がクリアで、低音の分解能、ゆがみ感、臨場感などの面でも大きく進歩している。

 

NEDO 光ICとLSIを一体集積、光配線技術を開発

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2021年7月7日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)が、通信波長帯の光信号を低損失で伝送できる光IC・光ファイバー間の3次元光配線技術を世界で初めて開発したと発表した。

3次元光配線技術の概念図
3次元光配線技術の概念図

 AIやIoTなどの急速な普及によって、データセンターや高性能コンピューティングの消費電力が増大する中、省電力化などを可能にする光配線化に向けた開発が加速し、近年は光伝送の高速大容量化のニーズが高まっている。

 LSI(大規模集積回路)とシリコンフォトニクスによる光ICを統合したコパッケージが注目されているが、複数のモジュール型の光ICをLSIから離れた基板端面に電気配線で接続する方式では、LSIと光IC間の電気配線が長いことで消費電力が増大し発熱が増える。そのため、限界だといわれる毎秒51.2テラビット処理において低消費電力化とさらなる高速処理のための新技術が求められていた。

 こうした中、NEDOが進める「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」において、PETRAは、光ICと光ファイバーを光接続する高精度光実装技術の開発に注力。今回、通信波長帯の光信号を低損失で伝送できる光IC・光ファイバー間の3次元光配線技術の開発に世界で初めて成功した。

 試作サンプルでは、次世代標準である毎秒112ギガビットの光信号を80℃超の高温環境下で伝送し、有用性を実証している。3次元光配線技術を活用することでLSIから光ICまでの電気配線の距離を極限まで縮めた一体集積ができるため、先行技術と比較して30~40%の大幅な電力量削減が期待される。