日本触媒 LIB用電解質「イオネル」の設備増強を決定

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2020年10月2日

 日本触媒は1日、リチウムイオン電池(LIB)用の新規電解質LiFSI「イオネル」について、独自プロセスによる新規製造設備(年間生産能力2000t)の建設に向け、「イオネル建設チーム」が設備設計に入ることを決定したと発表した。これは、「イオネル」の需要が拡大しており、既存設備(同300t)では不足することに対応したもので、立地場所は日触テクノファインケミカルに建設する。

リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド〈LiFSI〉
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド〈LiFSI〉

近年、環境問題への意識の高まりから、省エネ・低公害の次世代自動車の代表的存在である電気自動車(EV)に対する期待は高く、EV市場は着実に拡大が続く。「イオネル」は、EV向けLIBの電解質に使用することで、低温から高温まで広い温度範囲で、電池のサイクル特性、レート特性、保存安定性の向上に著しい効果を発揮することから、電解質の添加剤用に限らず主剤として採用され、需要がアジアを中心に伸長している。さらに「イオネル」は、全固体電池などの次世代革新電池の電解質としても性能向上に効果を発揮することから、需要のさらなる拡大が期待されている。

 LiFSIは高純度化が困難な物質であり、その生産や品質管理には高度なノウハウが必要とされるが、日本触媒はこれまで培ってきた独自の生産技術力を生かし、年間2千tを安定生産する技術を確立。また、「イオネル」は同社特許により保護された高純度LiFSIであり、品質面・価格面・知財面で、安心して使用できる。

 新規製造設備の商業生産は2023年春をめどに開始する予定で、2024年には100億円超の売上高を目指す。なお、LiFSI市場が世界的に拡大することが想定されることから、2025年以降の需要に対応するため、欧州での新規設備投資計画も検討している。

日触テクノファインケミカル
日触テクノファインケミカル

日本触媒 データサイエンスを駆使、高性能SAPを開発

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2020年9月25日

 日本触媒は24日、データサイエンス(DS)を駆使して、吸収量や吸収速度などの機能を従来比で10%以上高めた新しい高吸水性樹脂(SAP)の開発に成功したと発表した。

SAP開発にデータサイエンスを導入
SAP開発にデータサイエンスを導入

 SAPの主用途である紙おむつは、新興国では子供向け、先進国では大人向けを中心に需要が世界で拡大。紙おむつに求められる、ドライ感、もれない、かぶれない、コンパクトである、といった性能の実現にはSAPが重要な役割を果たしている。

 同社は1985年にSAPを製品化して以来、継続的に新製品を開発してきたが、近年の多様化、高度化するニーズに対応できる研究開発、商業化のスピードアップが課題となっていた。そのため、経験と勘に依存することの多かったSAPの研究開発にDSを導入し、顧客ニーズを的確に反映した製品設計から商業化までを迅速に行い、顧客へ提案する体制を整備した。現在では全てこの手法で新製品の開発を行っている。

 SAPには、体重が加わった想定での加圧下および無加圧下の吸収量、吸収速度、液の拡散状態などの性能向上が求められる。これに対し同社は、これまで蓄積してきた紙おむつ性能とSAP性能の相関性や合成時の挙動解析、SAPの表面制御技術をデジタル情報化し、これにディープラーニング(機械学習)やインフォマティクスなどDSを駆使することで、性能を10~20%アップすることに成功。開発期間も従来の約半分程度に短縮された。

 姫路製造所をはじめ世界各地の生産拠点でこの新規SAPを生産し、2025年には全体の4割に高めていく計画。同社は、新規SAPを世界で展開することで、おむつ使用者の様々なニーズに応えていく考えだ。なお、今年6月にデータサイエンス&インフォマティクス推進室を発足。SAPをはじめとして、洗剤原料、アクリル酸触媒など、様々な製品分野でDSの活用を推進している。

 

 

 

日本触媒 人事(10月1日)

2020年9月17日

[日本触媒・人事](10月1日)▽エナジー&エレクトロニクス事業部副事業部長村田和彦▽吹田RC部長兼品質保証統括部主席部員、環境安全統括部主席部員大塚功▽環境安全統括部(嘱託員)乾哲▽エナジー研究部長兼姫路製造所主席技術員岡田出穂▽DX推進チーム主席部員野原利夫▽川崎製造所生産管理センター長、同製造所教育センター長鈴木俊宏。

 

日本触媒 抗菌効果のある化粧品素材をファンケルと共同で開発

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2020年9月15日

 日本触媒は14日、ファンケルと、大気中の花粉やPM2.5など微粒子が肌や毛髪に付着することを防ぎ、かつ抗菌、抗ウイルス効果をもつ新規ポリマーの共同開発に成功したと発表した。この新規ポリマーは保湿効果もあり、様々な外的刺激因子から肌や毛髪を守ることを目的とした商品への応用が期待できる。

 肌の角層中に含まれる細胞間脂質は、水分保持機能とバリア機能をもつことが知られている。両社は、細胞間脂質が親水基と疎水基の両方から構成されていることに着目し、親水性モノマーと疎水性モノマーで構成される新規ポリマーを分子設計した。これに基づき日本触媒のポリマー合成技術を活用し、水分保持機能と被膜形成能を両立した新しいポリマーの開発に至った。

 開発した新規ポリマーは、①微粒子付着防止効果②保湿効果③抗菌・抗ウイルス作用の3つの効果を発揮する。同ポリマーを配合した化粧品は、肌や毛髪への微粒子の付着を防ぎ、様々な外的因子によるダメージから守るとともに、潤いを与えることが期待される。

 なお、今回の成果の一部は、今年3月に京都で開催された「日本薬学会第140年会」で発表。さらにオンラインで開催される「第31回IFSCC学術大会2020横浜大会」(10月21~30日)でも発表される予定だ。

花粉付着抑制効果(人工皮膚)
花粉付着抑制効果(人工皮膚)
PM2.5付着抑制効果(人工皮膚)
PM2.5付着抑制効果(人工皮膚)

日本触媒 三次元細胞培養容器を変形性膝関節症の研究へ提供

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2020年9月4日

 日本触媒はこのほど、独自開発した3次元細胞培養容器「ミコセル」を、そばじまクリニック(大阪府東大阪市)で開始する脂肪幹細胞凝集塊による臨床研究に提供すると発表した。今回の臨床研究は、患者自身の脂肪由来幹細胞を用いた変形性関節症に対する臨床研究で、「第2種再生医療等計画」を再生医療等委員会へ申請し承認された。

 「ミコセル」は、培養基材表面に細胞が適度に接着する非生物由来の材料で作られており、粒子径の揃った細胞凝集塊を多量に作製できることが特徴。細胞凝集塊では、従来の2次元で培養された細胞とは異なり、体内の状態に近い細胞が得られることが知られており、細胞凝集塊の作製技術は近年注目されている。

 市販されている細胞凝集塊形成を目的とした培養容器は、容器内部に細胞接着性の低い処理を施したものが一般的で、得られる細胞凝集塊は基材との相互作用をしない状態(浮遊状態)。これに対して、「ミコセル」は培養基材表面に細胞が適度に接着した細胞凝集塊が形成するため、他の培養容器で形成される浮遊の細胞凝集塊にはないさらなる高機能化と、投与疾患部で有効に働く効果が期待されている。

 また、「ミコセル」で作製した細胞凝集塊は、今回の臨床研究開始にあたり、2次元で培養された細胞や他の3次元培養容器で作製した浮遊の細胞凝集塊と比較して高い機能と安全性をもつことを非臨床で確認している。

 さらに、ミコセルは①培養時の培地交換が容易で操作性に優れる、②容器内部に設置した区画分けで均一な大きさの細胞凝集塊が多量に形成する、③細胞凝集塊の形成後に、薬剤を用いることなく凝集塊の剥離・回収が可能、といった特徴があり、効率的な細胞凝集塊の作製を実現する。

 日本触媒は、今回の臨床研究を通じ、「ミコセル」を使い作製した細胞凝集塊の安全性が実証されることにより、細胞凝集塊を用いた治療の実用化と再生医療のさらなる発展に向けて大きく貢献ができると考えている。

「ミコセル」の特徴
「ミコセル」の特徴

 

日本触媒 有機電子デバイス高機能化に貢献、新技術を開発

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2020年9月1日

 日本触媒は31日、NHKと共同で有機ELの低消費電力化と長寿命化に寄与し、様々な有機エレクトロニクスデバイスの高性能化にも用いることのできる新しい電子注入技術を開発したと発表した。

 これまで、有機ELをはじめとする有機エレクトロニクスデバイスでは、電極金属と有機材料の間での電子のやり取りをスムーズに行うことを目的にアルカリ金属などの材料が用いられてきたが、これらは有機材料との反応性が高いことからデバイスの劣化の要因とされている。またアルカリ金属は空気中の酸素や水分に弱く厳重な封止を必要とするため有機薄膜デバイスのフレキシブル化に対し課題となっていた。

 こうした中、両社は、電極金属と有機材料との間に大きな分極を生じさせる配位結合を用いた電子注入技術により、アルカリ金属のような反応性の高い材料を用いることなく有機ELの低消費電力化と長寿命化を実現できることを見出だした。

 この配位結合による新たな分極型電子注入技術は、有機ELの低消費電力化や長寿命化へ資することはもちろん、電子の取り出し技術へも応用することで、有機太陽電池のエネルギー変換効率の向上や有機センサーデバイスなどの高感度化などへも寄与できると見られ、フレキシブルデバイスの早期実現への貢献が期待される。

 また、日本触媒が開発中の「iOLED」フィルム光源に対しても、既存製造設備への適用が可能となり製造プロセスの簡略化による大幅なコスト削減が期待できる。同技術に用いた材料は塩基性の有機化合物で、種々の金属元素への配位によって安定な錯体を形成し、その配位力の強さに応じて金属原子との間で電荷の偏り(分極)が発生する。

 同社はこの有機化合物について数種類の誘導体を設計・比較することで、配位力の強さと電子注入性の間に相関があることを見出だし、有機化合物と金属を含む陰極との界面で生じる分極が電子注入を促進していることを明らかにした。

 なお、今回の研究成果は、7月24日に「Nature Communications」誌に掲載された。

有機エレクトロニクスデバイス 分極型電子注入技術
有機エレクトロニクスデバイス 分極型電子注入技術

日本触媒 人事(10日)

2020年8月19日

[日本触媒・人事](10日)▽解兼シラス,Inc.社長、執行役員、事業創出部門管掌補佐、健康・医療事業開発室担当、マロネート事業室担当、化粧品事業室担当金井田健太▽シラス,Inc.社長Robert Goodnight。

日本触媒と三洋化成 統合会社の大阪と東京のオフィスを選定

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2020年8月17日

 日本触媒および三洋化成はこのほど、2021年4月に設立予定の統合持株会社「Synfomix」の大阪本社および東京本社の新オフィスを選定したと発表した。

 新会社設立当初は、日本触媒の大阪・東京の本社に本社機能を持たせるほか、両社の既存オフィスを継続使用するが、「働く場」の融合による統合シナジーの最大化と統合新社のさらなる発展を企図して、大阪・東京本社の機能を2021~2022年に新オフィスへ移転する予定。

 新オフィスは、大阪本社が大阪梅田ツインタワーズ・サウス(建設中)27・28階で、2022年冬に移転を予定。一方、東京本社は、新橋田村町地区市街地再開発事業(仮称:建設中)24・25階で、移転時期は2021年10月~2022年3月を予定している。

ジャパンコンポジット DIC化工のSMC事業など買収

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2020年8月7日

 ジャパンコンポジット(三井化学65%、日本触媒35%)は6日、DIC化工のSMC(シートモールディングコンパウンド)および成型加工事業を買収することで合意し、今月3日に譲受契約を締結したと発表した。なお、買収した事業は「JC化工」となり、今年12月1日から営業開始する予定。

 不飽和ポリエステル樹脂(UP)に充填剤やガラス繊維などを混合したコンパウンドをシート状にしたSMCは、耐水性や耐熱水性、高い強度から、キッチン・トイレ・バスなどの住宅設備、自動車など幅広い用途で使われている。

 近年、住設関係ではリフォーム需要の拡大により、ジャパンコンポジットが得意とする高機能・高意匠性SMCへのニーズが拡大。また、自動車用途では、EV化、軽量化ニーズの拡大により、構造部品や外装に耐熱・強度・寸法安定性に優れたSMCの需要拡大が進む。

 今回、ジャパンコンポジットはDIC化工のSMC事業を取り込むことで、SMC生産能力が1.7倍の3万3000tに増強。2拠点体制(清水、成田)となり、より安定・強固な供給体制が整う。また、原料であるUPからSMC、そして成型加工までの一貫したサプライチェーンが構築されることとなり、顧客へのソリューション提案力をより一層強化することが可能となる。

 同社は、モビリティソリューション戦略強化に向け、様々な素材・技術、金型、試作支援機能を活用し、繊維強化複合材であるSMCのモビリティ用途のグローバル展開を強化していく考えだ。

SMCの製造工程
SMCの製造工程

日本触媒の4-6月期 需要減・販売価格低下で減収減益

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2020年8月5日

 日本触媒は4日、2021年3月期第1四半期(4―6月期)の連結業績(IFRS)を発表した。売上収益は前年同期比18%減の629億円、営業利益60%減の15億円、親会社所有者帰属の四半期利益52%減の16億円となった。新型コロナウイルス感染症や米中貿易摩擦の影響による世界景気の減速などを受け、原料価格や製品海外市況の下落で販売価格が低下したことや、販売数量が減少したことにより減収減益となった。

 セグメント別に見ると、基礎化学品事業は、売上収益23%減の250億円、営業利益89%減の2億円。アクリル酸およびアクリル酸エステル、エチレングリコールは、需要低迷により販売数量が減少し、製品海外市況の下落に伴い販売価格が低下した。酸化エチレンは、エチレンなどの原料価格下落により販売価格が低下し、販売数量も減少した。セカンダリーアルコールエトキシレートは、拡販に努め販売数量を増加させたものの、原料価格下落に伴う販売価格の低下が響いた。

 機能性化学品事業は、売上収益15%減の355億円、営業利益10%減の10億円。高吸水性樹脂は、販売増もプロピレンなどの原料価格や製品海外市況の下落を受け、販売価格が減少した。特殊エステルと無水マレイン酸は、需要低迷により販売数量が減少したほか、販売価格低下の影響を受けた。洗剤原料などの水溶性ポリマーは、拡販による販売増で増収。コンクリート混和剤用ポリマー、電子情報材料、ヨウ素化合物などは販売数量が減少した。

 環境・触媒事業は、売上収益5%減の24億円、営業利益117%増の2億円。プロセス触媒と脱硝触媒は販売数量が減少した。燃料電池材料、リチウム電池材料、湿式酸化触媒および排ガス処理触媒は、拡販により販売数量を伸ばし増収となった。

 なお同日に、コロナ禍による影響を合理的に算出することが困難とし未定としていた通期業績予想を発表した。売上収益は前年度比11%減の2700億円、営業利益は47%減の70億円、親会社所有者帰属の当期利益は46%減の60億円を見込んでいる。