NEDO ビジネスモデルの変革によるDX実現を後押し

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2020年6月18日

 NEDOはこのほど、情報処理推進機構(IPA)が、企業の競争力を維持・強化するデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進に向けて実態と課題を分析し、システム構築のあり方などをとりまとめた文書を公開した。あらゆる産業で、新たなデジタル技術を使ったスタートアップが登場し、ゲームチェンジが起こりつつある中、企業は競争力維持・強化のために、DXをスピーディーに進めることが求められている。

 国内企業は、DXを推進するデジタル部門の設置などに取り組み、システムの試作開発や実証実験などのプルーフオブコンセプト(PoC)への投資はするが、なかなか実際のビジネス変革にはつながっていない状況だ。

 NEDOが取り組んできたデータ利活用推進のシステム構築に向けた「コネクテッドインダストリーズ推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業」の中で、IPAは有識者などによる議論をもとにDX推進の調査を進め、今回、DX推進に関する技術的課題とその対応策をまとめた文章を公開した。

 具体的には、企業の現状を分析した「DX推進指標自己診断結果分析レポート」、ITシステムの技術的負債を明らかにするための企業システムの評価項目「PF(プラットフォーム)デジタル化指標」、システム構築の効果的な方法論やシステムのあり方などをまとめた「PF変革手引書案」、IT責任者や担当者がシステム構築する際に参照できる「DXの実現に向けた取り組み」を作成した。

 IPAは、企業が実際にPFデジタル化指標やPF変革手引書を使ってDXを実現するために、運用方法の検討を続ける。また、ベンチマークの詳細なデータは、DX推進指標の自己診断結果を提出する企業に対して提供していく。

 今後、これらの文書が国内企業に普及し、企業内での課題認識の共有やITシステムの変革に活用されることで、各企業のDX実現を後押しすることが期待される。

NEDO 室温付近で高性能を示す熱電変換材料を開発

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2020年6月16日

 NEDOはこのほど、産総研、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)と共同で、セレン化銀(Ag2Se)を使用した、室温で高い性能を示す熱電変換材料を開発した。

 熱と電気を相互変換できる熱電変換技術は、熱エネルギーを電気に変換する熱電発電デバイスと電気で冷却する熱電冷却デバイスに応用できる。熱電発電は、自動車や工場から排出される高温(400℃以上)の未利用熱を対象に研究開発が進められてきたが、産業分野では低温(200℃未満)の未利用熱量が総未利用熱量の76%を占めていることから、低温の未利用熱の利用が求められている。またスマート技術の発展で、電子機器用の自立電源や熱制御が課題となり、室温・高効率の熱電発電、熱電冷却デバイスへの期待が高い。

 室温付近(100℃以下)で使用できる唯一の実用熱電変換材料としてテルル化ビスマス(Bi2Te3)があるが、熱電変換技術の普及には変換効率の向上が不可欠。熱電性能指数ZTは、熱電出力因子が高く熱伝導率が低いほど高くなる。Ag2Seは熱伝導率が低いことからn型熱電変換材料として近年注目されているが、熱電出力因子が低いためZTは低い。

 今回、Ag2Seの走査型透過電子顕微鏡を用いた観察により、直方晶系構造中にある微量の単斜晶系構造が電荷キャリアの移動を妨げていることと、キャリア濃度が熱電変換材料としては高すぎることが分かった。単斜晶系構造の抑制を熱力学的に検討した結果、Seをわずかに過剰にし、硫黄(S)をわずかに添加することで、結晶構造を直方晶系に安定化させることができた。

 これによりキャリア移動度が増加するとともにキャリア濃度も減少。熱電出力因子は改善し、Bi2Te3と同等レベルのTZを達成した。ナノスケールでの結晶構造制御で、電荷移送キャリアの移動度の向上とキャリア濃度を最適化し、高い性能を実現。材料設計指針として、ナノメートル領域での構造制御が有用であることを実証した。

 今後、IoT用電子機器などの自立電源や電気機器の局所冷却などへの利用が期待される。

NEDO 福島・愛知の「ロボットサミット」開催を延期

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2020年4月27日

 NEDOは、今年開催を予定していた「World Robot Summit(WRS)2020」の開催を延期する。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、海外からの参加チームを中心に、出場に向けた準備遅延の報告や、延期要望・辞退相談などが複数寄せられたことから、今年の開催は困難であると判断した。

 8月には福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市・浪江町)、10月には愛知県国際展示場(愛知県常滑市)での開催を予定していた。WRSは経産省とNEDOが主催する、競技会と展示会からなるロボットの国際大会。一昨年の10月に開催したプレ大会となる「WRS 2018」では、競技会に23の国・地域から126のチームが参加、展示会には国内外から90社・機関が出展し、盛況を博した。

 今回の「WRS 2020」は本大会に位置づけられる。競技会は4つのカテゴリー(ものづくり、サービス、インフラ・災害対応、ジュニア)で実施され、参加者の技術を駆使したロボットが一堂に会し、課題作業の正確性やスピードが競われる。

 両者は同ロボットサミットを通じ、人間とロボットが共生し協働する世界の実現を目指している。その実現に向けて、①世界の高度なロボット技術を集結させ、競争を通じて技術開発を加速すると同時に、②ロボットが実際の課題を解決する姿を示すことで人々のロボットへの理解を深め、ロボットの社会実装の促進を目的にしている。

 なお、延期後も、「World Robot Summit 2020」の名称は使用される。すでに競技会に応募したチームの審査については、引き続き実施していく方針とのこと。延期後の日程など詳細は、今後決まり次第発表される。

NEDO 自律型移動ロボット向けソフトウェアを公開

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2020年4月9日

 NEDOと東芝はこのほど、自律型移動ロボットと運行管理システムを接続するためのインターフェースAMR‐IF(Autonomous Mobile Robot Interface)の仕様を策定し、AMR‐IFに準拠した操作端末(GUI)ソフトウェアのサンプルをオープンソースソフトウェアとして公開した。

 製造・物流現場や公共施設内での、搬送や警備、清掃など様々な業務で、自律型移動ロボットが普及しつつあるが、各メーカーが上位システムの運行管理システムを開発し、独自のインターフェースで移動ロボットと接続しているため、メーカーが異なる移動ロボットを導入する際には、運行管理システムを開発しなおす必要がある。また、複数メーカー、複数種類の移動ロボットを同じ運行管理システムに接続することもできない。

 こうした課題を解決するため、NEDOと東芝は、移動ロボットと運行管理システムとの相互接続手順を定めた移動ロボットインターフェースAMR‐IFの仕様を策定。同ソフトウェアを活用することで、メーカーや種類が異なる複数の移動ロボットを、共通のシステムで運用でき、ロボット未活用領域でのロボットの普及や低コスト化が期待できる。

 今後、AMR‐IFが移動ロボットの標準インターフェースとなるよう、国際標準化を目指していく。

 

NEDO CNFの安全評価手法文書や原料評価書を公開

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2020年4月8日

 NEDOはこのほど、セルロースナノファイバー(CNF)に関して、①CNFの安全性評価手法に関する文書類、および②「CNF利用促進のための原料評価書」を公開した。

 ①については、NEDO、産総研、王子ホールディングス、第一工業製薬、大王製紙、日本製紙と共同で、CNFの安全評価手法の開発に取り組んでいる。

 今回、CNFを取り扱う事業者などの安全管理を支援することを目的に、「セルロースナノファイバーの検出・定量の事例集」「セルロースナノファイバーの有害性試験手順書」「セルロースナノファイバー及びその応用製品の排出・暴露評価事例集」を作成した。

 今後は、これら文書類を活用してCNFを取り扱う素材メーカーや消費者製品メーカーなどの安全管理を支援し、CNF部材の社会実装を後押しする。

 一方、②については、森林総合研究所、産総研、東京大学、京都大学、京都工芸繊維大学、大阪大学、東京工業大学、スギノマシン、第一工業製薬、三菱鉛筆と共同で、木質系バイオマス(原料)の物性を明らかにしつつ、原料・パルプ・CNFの特性、CNFの利用適正評価など、原料の効率的な選択を支援することを目的に同書にまとめた。

 今後は同評価書を活用して、CNFの材料メーカーや製品メーカーなどのCNF部材の社会実装を後押しする考えだ。

NEDOなど 長期貯蔵でも沈降しないMR流体を開発

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2020年4月1日

 NEDOはこのほど、早稲田大学、日本ペイントホールディングスと共同で、長期貯蔵でも沈降しない高い安定性を持つ磁気粘弾性流体(MR流体)を開発した。

 MR流体は、鉄などの磁性粒子をオイルなどの分散媒体に分散させた流体で、外部から磁場を加えることによって粘度が変化する特性を持つことから、車両のブレーキや制震機、ロボットのアクチュエーターなど機械制御への応用が期待されている。しかし、従来のMR流体は、分散媒体中の磁性粒子が沈降しやすいため、長期間使用すると、装置の損傷や動作が不安定になるといった課題があった。

 今回開発したMR流体は、磁性粒子の沈降を抑制するための側鎖を持つポリオキシレン脂肪酸アミド誘導体を分散媒体に適用するとともに、直径20~300㎚のナノ粒子を分散媒体に添加することで、半年の静置状態でも分離せず、外部からの磁場に対して高い応力を発揮することに成功。今回の成果により、MR流体を長期間にわたって利用することが可能となり、ロボットを始めとする様々な機械制御分野へ応用展開が期待される。

 今後、3者は、開発したMR流体を使った、ロボット用柔軟アクチュエーターの開発を引き続き共同で進める。また、日本ペイントホールディングスは、これまで塗料分野で培ってきた顔料などの微粒子の分散方法や安定化技術の知見を生かし、産業機械向けに最適化させた新たなMR流体の商品化に向けた開発を進め、さらなる応用分野の開拓を進める考えだ。

NEDO 首都高を使った自動運転の実証実験を開始

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2020年3月27日

 NEDOは、管理法人を務める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」について、羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路で、合流支援情報などを活用したインフラ協調の自動運転の実証実験を開始した。

 今回の実証実験では、安全で円滑な自動運転や運転支援を実現するため、高速道路の実環境下で、一般道からETCゲートを通過して本線に合流するまでの区間を自動運転車で走行。これにより、インフラ協調による交通環境情報の提供技術の確立を目指す。

 SIP第2期では、交通事故の低減、交通渋滞の削減、交通制約者のモビリティの確保、物流・移動サービスのドライバー不足の改善・コスト低減などの社会的課題の解決への貢献を目指して、自動運転の実用化に向け産学官共同で取り組むべき共通課題(協調領域)の研究開発を推進。昨年10月から開始した東京臨海部実証実験では、臨海副都心地域を中心とした公道の実環境下で、実験用車載器を搭載した自動運転車などを走行させることにより、交通インフラから提供される信号灯火色などの情報の有効性検証などを行っている。

 こうした中、羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路では、合流支援情報などを活用した世界でも例がないインフラ協調の自動運転の実証実験を今月16日から実施している。

 実証実験は、高速道路の本線への合流など自動運転の継続が困難な状況の中で、安全で円滑な自動運転や運転支援を実現するため、インフラ協調による交通環境情報の提供技術の確立を目指すもの。有料道路の実環境下、一般道から料金所支払いを含むETCゲートを通過して本線に合流するまでの区間を自動運転車で走行する実証実験は世界でも例がない。実証実験を通して、高速道路から一般道へ自動運転の領域の拡張を加速させ、より安全で快適な自動運転を実現可能とする走行環境の構築を目指す。

 今後、東京臨海部実証実験は、臨海副都心地域、羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路に加え、羽田空港地域にて自動運転技術を活用した次世代公共交通システムなどの実証実験を2020年度末まで実施する予定。また、自動運転に対する社会的受容性の醸成に向け、今年7月に日本自動車工業会と連携しながら、多くの人が自動運転車を体験できる試乗イベントの開催を計画している。

 

NEDO CNF製品開発の即戦力人材を育成、講座開講

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2020年3月19日

 NEDOは、特別講座の一環で、石油由来の素材の代替となる植物由来の新材料として、幅広い分野への活用が期待されるセルロースナノファイバー(CNF)の社会実装を拡大、促進するため、企業でCNFの新製品開発の中核となる即戦力人材を育成することを目的に、人材育成講座を2020年度より開講する。

 講座は、東京大学、京都大学、京都市産業技術研究所、産業技術総合研究所(産総研)を、拠点として実施。内容は、①人材育成講座、②受講者参加の合同ワークショップ、③周辺研究などの実施、となっている。

 受講生は半年間の講義を通じて、CNF関連の各種製造技術や分析・評価技術を体系的に習得するとともに、実習を行うことで、製品開発に必要な各種技術を身につけることができる。

 なお、受講の申し込みはウェブサイトからのみ。産総研の「CNF人材育成講座(2020年度前期)受講生募集」(https://www.aist.go.jp/chugoku/ja/event/2020fy/0401-0930.html)から参加手続きが行える。

 CNFは、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上の強度を持つ、軽量・高強度のバイオマス由来の高性能素材。石油由来の代替となる植物由来の新材料として、幅広い分野への活用が期待されている。

 NEDOでは、2013年より「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」プロジェクトを通じ、木質系バイオマスから化学品までの一貫製造プロセスとして、「高機能リグノセルロースナノファイバーの一貫製造プロセスと部材化技術開発」を推進。

 自動車や家電などへの利用を実現するリグノCNFの一貫製造プロセスを世界に先駆けて開発し、パイロットプラント(京都プロセス)を構築した。また、同時にCNFの安全性評価基盤技術や、効率的に高性能CNFを製造できる原材料評価手法の開発を実施している。

 NEDOは、産業界のニーズに応えるため、最新のCNF関連技術に関して、実践的かつ即戦力となる人材の育成を目指す。

NEDOなど 福島で世界最大級の水素製造施設が完成

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2020年3月16日

 NEDOと東芝エネルギーシステムズ、東北電力、岩谷産業はこのほど、2018年から福島県浪江町で建設を進めてきた、再生可能エネルギー(再エネ)を利用した世界最大級となる10メガワットの水素製造装置を備えた水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R))」が2月末に完成し稼働を開始したと発表した。

 同施設は、再エネなどから毎時1200ノルマル立方メートル(定格運転時)の水素を製造する能力を持つ。電力系統に対する需給調整を行うことで、出力変動の大きい再エネの電力を最大限利用するとともに、クリーンで低コストな水素製造技術の確立を目指す。

 なお、製造された水素は、定置型燃料電池向けの発電用途、燃料電池車や燃料電池バス向けのモビリティ用途などに使用。主に圧縮水素トレーラーやカードルを使って輸送し、福島県や東京都などの需要先へ供給する予定だ。

 水素は、電力を大量に長期で貯蔵できることに加え、長距離輸送が可能。また、燃料電池によるコジェネレーション(熱電併給)や、燃料電池車など、さまざまな用途に利用できる。将来的には、再エネ由来の水素を活用し、製造から利用に至るまで一貫したCO2フリーの水素供給システムの確立が望まれている。

 政府が2017年に公表した「水素基本戦略」では、再エネの導入拡大や出力制御量の増加に伴い、大規模で長期間の貯蔵を可能とする水素を用いたエネルギー貯蔵・利用(Power‐to‐Gas)が必要とされている。

 この水素を用いたエネルギー貯蔵・利用には、出力変動の大きい再エネを最大限活用するための電力系統需給バランス調整機能(ディマンドリスポンス)だけでなく、水素需給予測に基づいたシステムの最適運用機能の確立が必要となる。こうした中、NEDOなど4者は、再エネの導入拡大を見据え、ディマンドリスポンスとしての水素活用事業モデルと水素販売事業モデルの確立を目指した技術開発事業に注力。

 水素の製造・貯蔵と電力系統の需給バランス調整の最適な組み合わせを、蓄電池を用いることなく水素エネルギー運用システムにより実現することが今回の実証運用の最大の課題だ。

 FH2Rでは今後、それぞれの運転周期の異なる装置で、電力系統のディマンドリスポンス対応と水素需給対応を組み合わせた最適な運転制御技術を検証する。

 

NEDO 南アフリカ共和国で低環境負荷型海水淡水化システムを実証

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2020年3月13日

 NEDOと日立製作所はこのほど、南アフリカ共和国ダーバン市で海水淡水化・水再利用統合システムの実証運転を開始したと発表した。

 実証事業では、NEDOの国内実証事業で確立した同システム「RemixWater」を基に、排水(下水を再生処理する過程で排出される水)を用いて海水を希釈し塩分濃度を下げることで、従来の海水淡水化システムで必要だった高圧ポンプ(6~7MPa)を中圧ポンプ(3~4MPa)に置き換え、日量6250tの飲料水を生産可能な実証設備を構築し、従来比30%以上の消費電力削減を目指す。

 また、海水淡水化については、塩分濃度が高い濃縮海水の排出による周辺海洋環境への影響が問題となっているが、同事業で実証するシステムでは希釈した海水を淡水化することにより排水の塩分濃度を海水と同程度とし、海洋環境への負荷低減につなげる。

 NEDOでは将来的に、深刻な水不足に直面している南アフリカをはじめ、水不足が深刻な地域への同技術の普及を含めた水インフラ整備や産業発展への貢献につなげていく。

 日立は同様に、実証事業を契機として、水資源が不足する国・地域に対して同システムをはじめとする先進の水環境ソリューションの提案を進め、引き続き水インフラの整備や課題解決に取り組み、SDGsの達成に寄与していく考えだ。