日本触媒 三次元細胞培養容器を変形性膝関節症の研究へ提供

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2020年9月4日

 日本触媒はこのほど、独自開発した3次元細胞培養容器「ミコセル」を、そばじまクリニック(大阪府東大阪市)で開始する脂肪幹細胞凝集塊による臨床研究に提供すると発表した。今回の臨床研究は、患者自身の脂肪由来幹細胞を用いた変形性関節症に対する臨床研究で、「第2種再生医療等計画」を再生医療等委員会へ申請し承認された。

 「ミコセル」は、培養基材表面に細胞が適度に接着する非生物由来の材料で作られており、粒子径の揃った細胞凝集塊を多量に作製できることが特徴。細胞凝集塊では、従来の2次元で培養された細胞とは異なり、体内の状態に近い細胞が得られることが知られており、細胞凝集塊の作製技術は近年注目されている。

 市販されている細胞凝集塊形成を目的とした培養容器は、容器内部に細胞接着性の低い処理を施したものが一般的で、得られる細胞凝集塊は基材との相互作用をしない状態(浮遊状態)。これに対して、「ミコセル」は培養基材表面に細胞が適度に接着した細胞凝集塊が形成するため、他の培養容器で形成される浮遊の細胞凝集塊にはないさらなる高機能化と、投与疾患部で有効に働く効果が期待されている。

 また、「ミコセル」で作製した細胞凝集塊は、今回の臨床研究開始にあたり、2次元で培養された細胞や他の3次元培養容器で作製した浮遊の細胞凝集塊と比較して高い機能と安全性をもつことを非臨床で確認している。

 さらに、ミコセルは①培養時の培地交換が容易で操作性に優れる、②容器内部に設置した区画分けで均一な大きさの細胞凝集塊が多量に形成する、③細胞凝集塊の形成後に、薬剤を用いることなく凝集塊の剥離・回収が可能、といった特徴があり、効率的な細胞凝集塊の作製を実現する。

 日本触媒は、今回の臨床研究を通じ、「ミコセル」を使い作製した細胞凝集塊の安全性が実証されることにより、細胞凝集塊を用いた治療の実用化と再生医療のさらなる発展に向けて大きく貢献ができると考えている。

「ミコセル」の特徴
「ミコセル」の特徴