ダイセルとダイキン 新商品創出に向け協創を加速

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2021年3月12日

コロナ禍で空気質ニーズ拡大、2つの商品を開発

 ダイセルとダイキン工業は、生産現場のプロセス・イノベーションを図る「ダイセル式生産革新手法」をダイキンの化学プラントに導入して以来、長年にわたる技術交流を継続し信頼関係を構築している。

透湿膜全熱交換エレメント
透湿膜全熱交換エレメント

 2016年からはダイセルがもつ先進の「材料技術」とダイキンがもつ「空調要素技術」の双方の強みを生かすことで、顧客にとって価値のある商品を創出する協創に取り組んできた。こうした中、コロナ禍による空気質ニーズの高まりを受け、換気機器向けの「透湿膜全熱交換エレメント」および大型空調機向けの「低圧力損失エアフィルタろ材」の開発に至った。

 オンライン会見において、ダイセルの高部昭久取締役常務執行役員は、「今回の協創は、カスタマーイン、マーケットインによる新事業開発の先行事例だ。両社がワン・チームで取り組んだことで、短期間で開発でき、投下する資源も最小化できた。今後も、協創の取り組みをさらに加速していく」と強調した。

 ダイキンの米田裕二執行役員は「開発した2製品は画期的な技術シーズだ。今後のダイキンの空調を支えていくキーパーツであり、これらを搭載した商品を世界展開していく」との考えを示した。

透湿膜シート
透湿膜シート

 続いて両社の担当者が開発した技術について説明。全熱交換器ユニット向け「透湿膜全熱交換エレメント」は、共同開発した「透湿膜シート」を採用。同シートは従来の紙製シートの約3分の1の薄さで、熱と水分の移動抵抗を低減。多孔質基材と透湿膜の二層構造により、水蒸気を選択的に透過させるとともに、菌やウイルス、CO2などの遮断性を向上した。さらに、耐水性と透湿性を両立したことで、水洗い洗浄も可能となっている。

 「透湿膜シート」とダイキンの独自技術「対向流型フレーム構造」の組み合わせ効果により、エレメント内部の空気漏れを大幅に低減。中国のGB規格の最高グレードである給気正味外気率99%以上をクリアした。ダイキンは、今年から中国で「透湿膜全熱交換エレメント」の販売を開始。さらに今後、各地域のニーズに合わせた商品開発、生産性向上、コストダウンなどを両社で進め、2023年には規制強化が見込まれる欧州市場への展開を目指す考えだ。

エアフィルタVバンク型
エアフィルタVバンク型

 一方、大型空調向け「低圧力損失エアフィルタろ材」は、ダイセルの繊維技術を活用したナノファイバ複合素材をベースに共同開発。同ろ材は、繊維径が異なる複数の繊維を複合し、従来よりも集塵効率が向上。また低い圧力損失で空調機を運転できることから、ファンの消費電力を低減し省エネ性が高い。加えて、目詰まりがしにくく従来品よりも長寿命化を実現している。

 ダイセルは今後、フィルタろ材の高機能化をさらに進め、2030年に売上高40億円を目指す。ダイキンは、差別化ろ材を搭載したフィルタの新商品について、2023年度から欧米を中心に展開していくとした。

 ダイキンはテクノロジー・イノベーションセンターを中心に、外部の技術や知見を取り入れた「協創イノベーション」に注力。またダイセルも、新中期戦略で「社会ニーズを的確に捉えた事業創造を行う会社になる」ことを掲げ、顧客の課題をもとにした協創の取り組みを推進している。今回の成果をもとに両社は、世界初・世界№1の商品創出に向けた協創をさらに強化していく考えだ。

 

旭化成 深紫外線LED、ダイキンの空気清浄機に搭載

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2021年3月5日

 旭化成はこのほど、グループ会社である米クリスタルISの高出力殺菌用深紫外線LED(UVC LED)「Klaran」がダイキン工業の空気清浄機「UVストリーマ空気清浄機」(4月26日発売)に搭載されると発表した。

UVC LED「Klaran」
UVC LED「Klaran」

「Klaran」は、旭化成がもつ窒化アルミニウム単結晶基板製造技術と膜結晶成長技術により、ウイルスや菌の不活化に効果が高いとされる発光波長265㎚の帯域で世界最高出力を実現。また、昨年10月にはボストン大学NEIDLとの共同研究によって「Klaran」が発光する260~270㎚の波長が、新型コロナウイルスを不活化させることが実証されており、国内外でコロナ感染症向けのソリューションとして幅広い分野・アプリケーションでの採用が進んでいる。

「Klaran」搭載のダイキン空気清浄機
「Klaran」搭載のダイキン空気清浄機

 今回、ダイキンより発売される空気清浄機では、従来の静電HEPAフィルターに抗菌剤を添着した集塵フィルター「抗菌HEPAフィルター」で捕捉したウイルスや菌に、ダイキン独自の強力な分解力のある「ストリーマ」と「Klaran」を組み合わせることで、ウイルスを30分で99%以上抑制し、菌を従来と比べ約10倍の速さで抑制する性能が実証されている。

 旭化成は、今後もUV殺菌市場に向けた技術開発を通じてコロナ感染症をはじめとする様々な社会課題へのソリューションを提供し、〝いのち〟と〝くらし〟に貢献していく考えだ。

ダイキンと日立 生産・販売の立案・実行支援を自動化

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2020年7月30日

 ダイキン工業と日立製作所はこのほど、日立グループのSCM(サプライチェーンマネジメント)最適化シミュレーション技術により、ダイキンの化学事業の需要変動に即応する最適な生産・販売計画の立案・実行支援ソリューションを実用化したと発表した。

 モノづくりプロセスの革新を目指した両社の協創の成果。複数の製造・販売拠点の需給バランスに基づき、利益、売上、キャッシュフローなどの重要業績指標(KPI)を最大化する製造・販売施策シナリオや生産計画を自動で提示し、迅速な意思決定や急激な需要変化にも対応する。

 需要の急激な変動は、生産の遅延や欠品による機会損失や過剰生産など、サプライチェーン全体に影響する。化学品は需要変動が激しくかつ多品種生産であり、製造から販売までの部門間調整による状況に応じた製造・販売施策、生産計画立案と迅速なアクションが重要となる。

 さらに海外の製造・販売拠点での販売価格や販売・生産量、設備稼働率、生産能力、関税など膨大なパラメータを販売先や製品ごとに考慮し、経営視点でKPIの最大化に向けた製造・販売施策や生産計画を立案するには膨大な時間と経験・ノウハウが必要である。

 ダイキンは、フッ素化学製品のグローバル5製造拠点、9販売拠点、数百品目を対象に、先月から同ソリューションの本格運用を開始。どの製品を、どの拠点で、どれだけ生産し、どこで販売するかといった製造・販売施策立案のために、従来の約60倍のパターンを短時間で作成。それらを定量的にシミュレーションすることにより合意形成が迅速化し、意思決定までの時間を約95%短縮できた。製造・販売施策のタイムリーな立案と迅速な意思決定が可能になるとともに、顧客起点のSCM施策や事業計画の検討・実行に一層注力できるようになった。

 今後、ダイキンは他の化学品へ適用を拡大するとともに、製造現場データとの連係で、タイムリーで高精度な分析と経営判断につなげていく計画だ。日立は、この協創で培ったノウハウ・技術を活用し同社ソリューション技術「Lumada」の製造業向けソリューションとしてグローバルに事業展開していく。