産総研など 新型コロナ外出自粛による省エネ効果を推定

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2020年12月17日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、明星大学、ドコモ・インサイトマーケティングとともに、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛による人口変化が、大阪市のオフィス街と住宅街の気温と電力消費量に及ぼす影響を推定したと発表した。日中人口が約7割減少したオフィス街では電力消費量を40%(床面積1㎡あたり12W)、人工排熱を42%(土地面積1㎡あたり76.3W)押し下げ、その結果気温は0.13℃低下したと推定。一方、人口が微増した住宅街では電力消費量が18%(床面積1㎡あたり1.4W)増加したが、気温は外出自粛前と変わらなかった。

 オフィス街の気温・電力消費量の低下は、昨年開催されたG20大阪サミットの交通・出勤規制による低下量のそれぞれ3倍、10倍で、電力消費低下量は東日本大震災に伴う夏の節電対策効果に匹敵した。なお、この気温低下量は、日本各都市の気温観測値から得た先行研究による統計的推定値と矛盾しない。

 産総研と明星大学は、都市部の人間活動と気象・気候の関係に長年取り組み、世界初の数理モデル「都市気候モデル」を開発。これを気象学の領域気候モデルと統合し、電力消費実測値との比較などを通して「都市気候モデル+人口データ」に大幅改良した。

 人間活動の把握はドコモ・インサイトマーケティングの「モバイル空間統計(500mメッシュ・1時間毎)」で行い、空調使用スケジュールや人体からの排熱量などのパラメータに反映させた。公開・測定されていない都市街区の数百m~数Kmスケールの電力消費量と気温の推定、人間活動が変化した際の電力消費量や気温への影響を評価できる点に意義があり、都市の気候と電力消費量の将来予測、都市計画や都市部の気候変動適応策の評価にも応用できる。

 今回テレワークなどの人間活動の変化により、都市部の省エネとヒートアイランド緩和が実現できることが示唆された。「新たな日常」での都市の気温と電力消費の予測に有用で、気候変動に備えた都市部の適応策の評価・提案への貢献も期待できる。

 今後は首都圏や国内外都市に適用し、外出自粛の影響を広域的に見積り、人間活動と都市の気候の関係を体系化する。また外出自粛が熱中症指数に及ぼす影響も調査し、気温や電力消費量に留まらない総合的な気候変動適応策の提案に繋げる考えだ。