NEDOなど 高効率低負荷の水素専焼ガスタービン成功

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2020年8月26日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と川崎重工業、大林組はこのほど、「水素社会構築技術開発事業」で川崎重工が開発した「マイクロミックス燃焼」技術を使ったドライ低NOx水素専焼ガスタービンの技術実証試験に、世界で初めて成功した。

 ドライ燃焼方式は従来式よりも発電効率が高く、NOx排出量も低減できる。水素はガスタービン発電や燃料電池など、CO2を排出しない究極のクリーンエネルギーとして将来の中心的役割が期待されている。

 同事業は水素社会の実現に向け2017~18年度に神戸市や関西電力などの協力で「水噴射方式」の水素ガスタービンを実証試験し、世界で初めて神戸市ポートアイランド市街地への水素専焼の熱電併給を達成した。

 「水噴射方式」は局所的な高温燃焼によるNOx発生を抑える技術だが、水の蒸発により発電効率が低下。一方「ドライ燃焼方式」は発電効率が高くNOx排出量も少ないが、水素の高速燃焼による火炎逆流があり、燃焼の安定化が課題であった。

 今回、川崎重工は微小な水素火炎による燃焼技術「マイクロミックス燃焼」を使ったドライ低NOx水素専焼ガスタービンを開発。排熱回収ボイラを組み合わせたコジェネレーションシステムで、約1100kWの電力と約2800kWの熱エネルギー(蒸気・温水)を周辺の公共施設へ供給。今年度末まで、断続的な実証運転により水素発電の安定運用と発電効率、環境負荷低減効果などを検証する。

 今秋からは大林組により、燃料「水素」と地域の「熱」「電気」利用を総合管理し、経済・環境的に最適制御する統合型エネルギーマネジメントシステムを実証し、事業性評価を行う。また大林組は大阪大学、関西大学と共同で、液化水素の冷熱の活用を検討する。

 ガスタービン用の水素は、マイナス253℃(1気圧)の液化水素を蒸発器で気化させて得るが、その冷熱により蒸発器に着霜するため、除霜を行う運転停止が必要だった。プロパンガスなどの中間熱媒体で液化水素の冷熱を取り出すと着霜が回避でき、連続運転が可能となる。さらにこの冷熱でガスタービンの吸気を冷却すると、発電効率も上がる。こうした液化水素の冷熱の活用で、システム全体の効率化を図る。

 NEDOと川崎重工、大林組は、水素社会の実現に向け、地域コミュニティーでの効率的エネルギー利用につながるエネルギー供給システムの確立を目指し、本事業を着実に実施していく。

ドライ低NOx水素専焼ガスタービンの実証試験プラント
ドライ低NOx水素専焼ガスタービンの実証試験プラント