富士フイルム バイオ医薬品の原薬生産能力、欧米で大幅増強

, , ,

2021年7月14日

 富士フイルムはこのほど、バイオ医薬品CDMOの欧米拠点に投資総額約900億円の大型投資を行うと発表した。製造設備を増強し、需要が増加するバイオ医薬品の原薬生産能力を大幅に向上させる。なお、増強設備は2023年後半に稼働する予定だ。

 同社は、バイオ医薬品の生産プロセスの開発受託、小量生産から大量生産、原薬から製剤・包装までの製造受託に対応できる強みを生かして、CDMO事業の拡大を進めている。拠点拡充や設備増強により生産能力を大幅に拡張するとともに、培養から精製までの原薬製造工程の一貫生産が可能な連続生産システムを業界で初めて開発するなど高効率・高生産性を追求した技術開発に注力している。

 今回、米国FDBの既存拠点に、機動性に優れるシングルユース仕様の2000ℓ細胞培養タンクなどの製造設備を新たに導入することで、遺伝子組換えタンパクワクチンの原薬製造能力を約2倍に向上させる。また、遺伝子治療薬にも対応し、最先端医療分野の遺伝子治療薬などの受託ニーズに応えていく。

 一方、英国拠点では、遺伝子治療薬のプロセス開発・原薬製造が可能な新棟を建設、同拠点内の原薬生産能力を十倍以上に拡大させる。また、動物細胞培養によって製造する抗体医薬品では、小・中量の培養タンクの追加導入により、同拠点内の生産能力を約3倍に増強する。特に欧州における小・中規模生産の受託ニーズに応えるとともに、大型培養タンクをもつデンマーク拠点での大規模生産にスムーズに繋げる受託基盤で顧客の新薬開発を支援していく。

 さらに、新棟スペースを利用して、連続生産システムによるGMP製造が可能な設備を導入し商業生産も行っていく計画。この他、微生物培養による遺伝子組換えタンパク医薬品では、既存ラインの精製設備の増強などにより原薬生産能力を約2倍に高め需要増に応えていく。

 バイオ医薬品市場は、抗体医薬品や遺伝子治療薬、新手法を用いたワクチンの需要増から伸長していくことが想定される。バイオ医薬品の製造には高度な生産技術と設備が必要とされるため、製薬会社やバイオベンチャーはCDMOにプロセス開発や製造を委託するケースが増えてきている。

 同社は、2011年にバイオ医薬品CDMO市場に参入。事業成長を加速させるため、昨年から今年にかけて20000ℓ細胞培養タンクの増設や大型製造拠点の新設など大規模設備投資を決定。M&Aも含めた同事業における総投資金額は、今回の投資も加えて約6000億円に上る。

AGC バイオ医薬品のデンマーク拠点の培養能力を倍増

, , ,

2020年11月26日

 AGCはこのほど、CDMO事業子会社AGC Biologics社(米国)でのバイオ医薬品CDMOの培養能力増強を決定したと発表した。デンマーク拠点の隣接地を購入し、工場棟とオフィス棟から成る新社屋を建設し、シングルユース仕様の2000リットルの動物細胞培養槽を増設。総投資額は約200億円、稼働開始は2023年の予定だ。

 バイオ医薬品CDMO市場は年間約10%以上の成長を続け、同社の受託件数はそれを上回る。これに対応するため動物細胞を使ったバイオ医薬品CDMOの培養能力を増強し、デンマーク拠点のシングルユース仕様の培養能力は従来の倍以上に拡大。それに合わせた分析・開発設備や人員増にも対応し、延床面積約1万9000㎡の新社屋を建設する。

 AGCグループはバイオ医薬品CDMO事業を含むライフサイエンス事業を戦略事業の1つと位置づけ、合成医農薬CDMO、動物細胞と微生物を使ったバイオ医薬品CDMOで積極的な買収・設備投資を行い、事業を拡大させてきた。今年7月には成長著しい遺伝子・細胞治療領域にまでCDMO事業の幅を広げ、2025年の目標売上高1000億円以上を2~3年前倒しで達成する見込み。

 今後も各地域でグローバル統一の高水準の品質・サービスを提供できるよう、各拠点のシナジーを最大限発揮させ、製薬会社、患者そして社会に貢献していく考えだ。