ユポ・コーポレーション 創立50周年に、合成紙の世界最大手

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2019年8月21日

機能性生かし新用途を開拓

 合成紙の世界最大手ユポ・コーポーションがこのほど50周年を迎えた。この間、事業環境の変化により浮き沈みはあったが、天然紙の代替という当初の位置付けから、天然紙では不可能な高機能用途に販売方針を転換したことで、現在は世界のリーディングカンパニーとなっている。

 同社は三菱油化(現・三菱ケミカル)と王子製紙(現・王子ホールディングス)の折半出資である王子油化合成紙(現・ユポ・コーポレーション)として、1969年に発足した。

 木材の消費増加による森林資源の枯渇と石油化学の勃興を背景に、国の方針に応じて合成紙事業に参入。1973年の第一次オイルショックで多くの企業が撤退する中で、同社は合成紙ならではの優れた機能に可能性を見出だして事業を継続した。

 現在は「ユポ」ブランドにより、生活のあらゆるシーンで使われるようになっており、ファーストフード店などの電飾メニューや冷凍・冷蔵ケースのPOP、飲食店・カラオケ店などのメニュー、インモールドラベルやボトルラベル、トリアージタグ、選挙ポスターなど、採用例は枚挙にいとまがない。特筆すべきは投票用紙で、筆記特性と投票箱の中で自然に開くことにより、開票作業の効率化と時間短縮に貢献している。

 原料はポリプロピレンで、添加剤を加えて押出機でフィルム状に成形する。基層を上下の表層で挟んだ3層構造で、基層は縦と横の2方向に引っ張ることで強度や剛性をもたせ、上下の表層は横方向のみに力を加えることで空孔(ミクロボイド)が発生。光が乱反射することで紙のように白く見えるほか、鉛筆などの粒子が引っ掛かりやすくなるため、筆記もスムーズに行える。

 軽量で耐水性・靭性・耐薬性に優れ、発塵性が上質紙の約100分の1と少なく、燃やしても有害物質が発生しない。吸着品・半透明タイプ・メタリック調などバリエーションも豊富だ。

 同社では装飾用として、原理の異なる2種類の製品を製造・販売している。1つは静電気の性質を利用した「ユポ静電吸着」。2枚のフィルムに静電気を閉じ込めた構造で、2枚のフィルムをはがすと静電気が発生し、貼っているうちに紙と壁の間の電荷が安定し、吸着する。

 もう1つは微細な吸盤で吸着する「サクションタック」。片面に設けた微細なセルが吸盤のように作用して吸着する。「ユポ静電吸着」が1度きりの使用なのに対し、「サクションタック」は何度でも貼ってはがすことができる。さらに、紙とプラスチックの両方の物性を生かし、5月に発売されたヤマハのエレクトリック・アコースティックギターでは、圧電素子に使われている。

 同社は米国に製造・販売会社、ドイツに販売子会社をもつほか、中国・インド・タイに販売拠点を設けている。今後も時代を先取りした新製品を開発し、顧客に満足してもらえる製品を提供し続ける会社を目指す。