北大など LIB正極材の省エネ合成、液相で反応促進

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2023年11月13日

 北海道大学大学院理学研究院の松井雅樹教授、神戸大学大学院工学研究科の水畑穣教授らの研究グループはこのほど、リチウムイオン電池(LIB)の正極材料として広く使用されているコバルト酸リチウムを、低温かつ短時間で合成する手法の開発に成功した。

開発した「ハイドロフラックス法」(上部)と従来法(固相法)の比較

 層状岩塩構造をもつコバルト酸リチウムは、

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東レリサーチセンター 蓄電デバイス事業部を設立、LIBなどを分析

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2023年4月13日

 東レリサーチセンターはこのほど、リチウムイオン電池(LIB)の分析・解析に特化した新組織、「蓄電デバイス事業部」を新たに設立すると発表した。

 カーボンニュートラル社会の実現に向け、

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DIC LIB負極用水系バインダー開発、長寿命に貢献

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2023年4月12日

 DICは11日、リチウムイオン電池(LIB)の負極用水系バインダー「WATERSOL(ウォーターゾール)‐LB」を開発したと発表した。

リチウムイオン電池の内部構造イメージ図

 同製品は、環境負荷が低い水系の製品で、

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NEDO 高性能・低コストの蓄電池の研究開発に着手

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2021年6月17日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、現行のリチウムイオン電池(LIB)を性能・生産コストの両面でしのぐ蓄電池の研究開発事業「電気自動車用革新型蓄電池開発」をスタートしたと発表した。産学官が連携した、材料開発から電池設計・試作や特性評価・解析まで対応する共通基盤技術の研究開発で、今年度からの5年間、事業総額は110億~120億円の予定だ。

 自動車の電動化が進展する中、車載用バッテリーは利便性(航続距離、充電時間など)と高い生産コストが普及への課題で、高エネルギー密度化による性能向上とコスト低減が強く求められている。現行LIBは、エネルギー密度と安全性がトレードオフの関係にあり、バッテリーパックが車両コストの約3分の1を占めるといわれ、さらに電極活物質や電解質に使われるリチウムやコバルトは調達が困難になる懸念がある。

 今回は、前プロジェクト「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発」の成果を踏まえ、エネルギー密度、安全性、日本のオリジナリティが高い「フッ化物電池」と、安全性と低コスト化に有利な「亜鉛負極電池」をターゲットにする。 

 資源制約や調達リスクの少ない元素を活用した高性能・低コストの電極活物質・電解質を開発し、それらを用いた電極構造の開発やセルの設計・試作、そして特性評価・解析に対応した共通基盤技術の研究開発を行う。またその評価結果をもとにセルの充放電性能などをシミュレーション予測する技術を開発し、事業終了後も参画企業が実用化開発を継続する中で、バッテリーパックとしての実用化の達成可能性を総合的に評価する。

 委託先の代表機関は京都大学で、素材関連は旭化成、昭和電工マテリアルズとダイキン工業、電池関連はパナソニックと日本電気、自動車関連はトヨタ自動車、日産自動車と本田技術研究所、そして東京工業大学や産業技術総合研究所をはじめとする17の大学・研究機関が参加し、NEDOはこれらプレーヤーの英知を事業内で好循環させるマネジメントを行う。自動車産業や蓄電池産業の競争力維持・向上につながる革新的な車載バッテリーの実用化を実現する、技術的なブレークスルーの早急な創出を目指す。

BASF 大容量・短時間充電LⅠB負極用バインダー

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2021年1月26日

 BASFはこのほど、リチウムイオン電池(LIB)の大容量化と充電時間短縮を実現する負極用バインダーの新製品「Licity(リシティ)」シリーズを開発したと発表した。顧客の必要要件・用途に応じて黒鉛やシリコン系負極などに適したバインダーを選択できる。電極の膨張を抑制することで大容量化し、充放電サイクル数の増加、充電時間の短縮が可能。低温環境下での性能を高め、集電体との密着性に優れるとしている。幅広い活物質との高い適合性をもち、顧客ニーズに合わせたカスタマイズも行う。

 e-モビリティは気候とエネルギー問題に対する最も有望な解決策の1つだ。2019年の電気自動車(EV)の世界販売台数は約210万台で、中国はその過半数を占める。中国政府の公共利用向けグリーンカー政策で、自動車OEMとバッテリー企業のLIB技術の強化が進む。

 OEMは中国、日本、韓国市場での競争に向け、アジア、欧州、米国で新しい巨大工場に大規模投資を行っている。世界をリードする電池メーカーの多くはアジア太平洋地域に拠点をもつが、BASFは世界最先端の製造設備で、高い技術力とアプリケーションノウハウに基づく高品質な現地製品を提供する。また、世界的規模で生産・供給体制を強化し、顧客の製造拠点に近い場所で一貫して高品質製品を提供し、アジアから顧客の生産拠点の拡大を支援することもできる。

 一方、「リシティ」バインダーは水性カルボキシル化スチレン・ブタジエン共重合体で、VOC含有量は非常に少ない。バイオマスバランス・アプローチを適用するとBASFの製造プロセスで使われたバイオマスが「リシティ」に割り当てられ、カーボンフットプリントはさらに低減し、バイオマス由来の認定も可能となる。

 BASFは経済目標と環境的責任、社会的責任を一致させる取り組みを行っており、近いうちにこの市場での主要プレーヤーになることを目指している。

昭和電工 セパレーター向け耐熱層用バインダーを本格展開

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2020年10月19日

 昭和電工は16日、リチウムイオン電池(LIB)のセパレーターのセラミック耐熱層用バインダー用に最適化したポリ-N-ビニルアセトアミド「PNVA GE191シリーズ」の展開を本格化したと発表した。

 同社が世界で唯一工業化に成功したN-ビニルアセトアミドを重合した水溶性高分子である「PNVA」は、水素結合を多く含む設計で、200℃の高温処理でも劣化しない耐熱性や、金属酸化物粒子をより均一に分散・安定させる特長をもつ。「GE191シリーズ」は、セラミック耐熱層の要求特性に応えたグレードとして、耐熱層の高耐熱化と薄膜化に貢献。塗工層の高耐熱化によりLIBの安全性・耐久性を向上させることができるバインダーとして評価され、車載用LIBにも採用されている。

 一般的なセパレーターは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄膜で構成されており、LIBが異常発熱して温度が高温になると、セパレーターの結晶が融解して膜が収縮し、電極同士が接触、短絡して発火など重大な事故が発生する恐れがある。同シリーズを添加したセラミック耐熱層をセパレーターに塗工すると、「PNVA」自体の高耐熱性に加えて、アルミナやベーマイトなど耐熱層の無機粒子と水素結合により強固に結着。異常発熱時でもセパレーターの形状が保持され、電極同士が接触、短絡する危険性を回避することが可能だ。

 また、同シリーズは水との親和性が高く、増粘性(レオロジー特性)も高いため、セラミック粒子が均一に分散して低剪断時でも高粘性を確保し、剪断速度に応じて粘度が下がる性質(チキソ性)に優れている。そのため、同シリーズをバインダーに使用することでセラミック耐熱層の保管性(沈降防止)が向上し、セパレーターや電極への均一な塗工や工程改善に効果があり、ロス削減によるコストダウンに貢献できる。

 世界のLIB市場は5GやCASEの進展により今後も高い成長が予想されている。昭和電工は、LIBの高性能化に貢献する製品として、「PNVA」以外にも、水系バインダー樹脂「ポリゾール」、パウチ型LIB用包材の「SPLAF」、正負極材添加剤「VGCF」など多数ラインアップしており、顧客の要望に応える最適なソリューションを提供してさらなる事業拡大を目指していく考えだ。

:「PNVA GE191 シリーズ」耐熱試験
「PNVA GE191 シリーズ」耐熱試験

 

昭和電工 LIB用包材、車載大型向け量産設備導入を決定

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2020年3月19日

 昭和電工は18日、子会社である昭和電工パッケージングがリチウムイオン電池(LIB)の包材であるアルミラミネートフィルム「SPALF」について、車載向けなど大型用途向けに特化した新製品を開発し、量産化設備を導入することを決定したと発表した。なお、新設備は2021年3月に稼働開始する予定。

 「SPALF」は樹脂とアルミ箔をラミネートしたフィルムで、パウチ型LIBの包材として使用される。高い絶縁性を持ち、成形性が優れることなどから、世界的に高いシェアを持っている。パウチ型LIBは形状の自由度が高く軽量であるため、スマートフォンやタブレットなどの小型用途で広く採用されている。

 近年では、品質の高さが認められ安全性の評価が進み、EV向けをはじめとする大型用途でも採用が拡大している。中国に続く欧州でのEV開発の進展や、パウチ型LIB包材の需要の高まりを背景に、大型用途向け新製品を開発し、その量産設備の導入を決定した。

 昭和電工グループは個性派企業(収益性と安定性を高レベルで維持できる個性派事業の連合体)の実現をありたい姿として掲げている。LIBの世界需要(容量ベース)は2025年まで年率30%の成長が予想される中、同社は「SPALF」をはじめ、正負極材添加剤「VGCF」、水系バインダー樹脂「ポリゾール」といった特徴のあるLIB部材を取り揃えている。これらの製品を拡販することで、LIB市場の成長や高機能化に貢献するとともに、先端電池材料分野での個性派事業の確立を目指す。

関西学院大学と大阪大学 2種の有機物混合でLIB特性を向上

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2019年12月5日

 関西学院大学理工学部と大阪大学の共同研究チームは、有機物を電極材料として用いたリチウムイオン電池(LIB)で、2種類の有機分子を混ぜ合わせた電極材料の特性が、それぞれの分子を単一で用いた場合に比べて劇的に向上することを見出だした。

2種類の有機分子の電荷分布
2種類の有機分子の電荷分布

 LIBは、圧倒的に高いエネルギー密度を示すことからスマートフォンなどの各種デバイスに広く使われているが、一般的に正極材料にはコバルトなどの希少金属を用いた材料が使われているため、より安価な有機物を用いた電極材料が広く探索されており、現在、数多くの有機材料が正極材料の候補として検討されている。

 今回、関学大の田中大輔准教授と吉川浩史准教授の研究チームは、LIBの電極材料として、中心に正の電荷をもつ円盤状の有機分子と、負の電荷をもつ円盤状の有機分子2種類の有機分子を混ぜ合わせた電荷移動錯体と呼ばれる材料を開発。その特性が単一の有機分子と比較すると劇的に向上することを発見した。これは、有機分子が集積した結晶の中に、リチウムイオンが拡散する通路ができたためと考えられている。

 単一の有機分子を用いた場合は、分子同士の電荷が反発して密に詰まった構造をとることが知られているが、同研究では、異なる符号の電荷をもった分子を1対1で混ぜることで、2種類の円盤状分子が交互に積み上がった筒状の構造を形成し、筒と筒の隙間にさまざまな分子を取り込むことができるようになることを明らかにした。

 さらに、電荷移動錯体がもつこの隙間を利用することで、高速でリチウムイオンが出入りする高い容量をもった電極材料を開発することに成功。正負の電荷間の強い相互作用により、この電荷移動錯体の電解液への溶解が抑制されていることも確認した。大阪大の北河康隆准教授との計算機を用いた共同研究では、この相互作用のエネルギーを見積もることにも成功している。

 異なる電荷をもつ2種類の分子を混ぜるという同手法は、さまざまな有機分子の組み合わせで応用できるため、これまで高い特性を示さなかった有機分子が本来もっている特性を最大限引き出すことを可能とする新しい手法になるものと期待される。

 一方で、そのような有機分子の組み合わせの数は膨大なものになるため、今後は、膨大な数の候補物質を効率的に探索するために、現在発展が著しい人工知能を活用したマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の手法を利用した効率的な材料の開発が期待される。