富士フイルム 米メルク社と提携、リポソーム製剤の臨床開発を加速

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2020年6月5日

 富士フイルムはこのほど、薬剤を患部に届けるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術を応用したリポソーム製剤の臨床開発を加速させるため米メルク社と提携すると発表した。

 富士フイルムが開発中のリポソーム製剤「FF‐10832」と米メルク社の抗PD‐1抗体「キイトルーダ」(免疫チェックポイント阻害剤)の併用療法を評価する臨床試験の実施に関する契約を締結した。同契約に基づき、進行性固形がんを対象に、併用療法を評価する臨床試験を今年度中に米国で開始する計画。

 リポソーム製剤は、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子(リポソーム)の中に薬剤を内包した製剤で、有効成分を効率的に患部に届け薬効を高めることができると期待されている。

 「FF‐10832」は、膵臓がんなどを適応症とする抗がん剤「ゲムシタビン」を内包したもので、現在、米国で進行性固形がんを対象に臨床第Ⅰ相試験を実施しているリポソーム製剤。すでに実施したマウス実験では、免疫チェックポイント阻害剤との併用投与で大幅に、がん細胞などを殺傷するCD8陽性キラーT細胞ががん組織内で増加し、単剤投与よりも生存期間が延びることが確認されている。

 今回、富士フイルムは、「FF‐10832」と「キイトルーダ」との併用による臨床効果を確認するため、米メルク社と提携。両剤の併用療法を評価する臨床試験を今年度中に米国で開始し、忍容性や薬物の体内動態、初期の有効性を確認していく。

 富士フイルムは、独自の技術を生かして、アンメットメディカルニーズに応える新薬開発に取り組むとともに、新規のDDS技術を開発することで、新たな価値を創出し、社会課題の解決に貢献していく考えだ。

 

富士フイルム リポソーム製剤の開発・製造受託を開始

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2020年4月8日

 富士フイルムはこのほど、薬剤を患部に届けるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術を応用したリポソーム製剤の開発・製造受託サービスを開始すると発表した。

 また、同サービスの対象を、低分子医薬品のみならず、次世代医薬品として期待されている核酸医薬品にも広げるため、核酸を内包するリポソーム製造装置の開発・製造・販売のリーディングカンパニーであるカナダのPNI社とパートナーシップ契約を締結。今後、低分子医薬品や核酸医薬品をターゲットに、リポソーム製剤の生産プロセス開発や製造の受託を行っていく。

 リポソーム製剤は、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子(リポソーム)の中に薬剤を内包した製剤。生体内の血中での薬剤の安定性を向上させ、さらにリポソームの素材を工夫することで細胞膜を透過させ細胞内まで薬剤を効率的に届けることが期待できるため、低分子医薬品のみならず核酸医薬品への応用研究が活発化している。

 同社は、幅広い製品開発で培い進化させてきた、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術を生かして、既存抗がん剤を均一な大きさのリポソームに安定的に内包する製法を確立。現在、その製法を応用したリポソーム製剤の臨床第Ⅰ相試験を米国で進めている。

 また、富士フイルム富山化学では、国内で初めて商業生産に対応したリポソーム製剤工場「701工場」を建設し、今年2月に稼働させた。今回、富士フイルムは独自リポソーム製法や「701工場」を生かして、低分子医薬品を対象としたリポソーム製剤の生産プロセス開発や製造の受託を開始する。

 また、「701工場」にPNI社のリポソーム製造装置「NanoAssemblr Platform」を導入。同装置とリポソーム製剤の基盤技術を組み合わせた受託基盤と、同装置のラボ機が世界中で導入されている、PNI社の顧客基盤などを活用して、核酸医薬品を対象としたリポソーム製剤の生産プロセス開発や製造を受託していく。

 今後、富士フイルムは、低分子医薬品や核酸医薬品の分野で、顧客が求めるリポソーム製剤の最適な生産プロセスから治験薬製造・商業生産までの受託に対応し、ビジネス拡大を図っていく。