産総研 衛星データを活用、全球地表面のカラーレーダー画像を公開

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2020年6月24日

 産業技術総合研究所(産総研)人工知能研究センターと産総研・東工大実社会ビッグデータ活用オープンイノベーションラボラトリは、地球観測衛星が取得したビッグデータを、産総研が保有する人工知能処理向け計算機ABCIを利用し画像処理することで、全世界を対象に地表面の状態を色分けしたカラーレーダー画像を作成した。その画像を専用サイト(https://gsrt.airc.aist.go.jp/landbrowser/index.html)で公開している。

 従来の衛星運用システムでは、計算能力の不足から衛星データは部分的に画像処理されるだけで、タイムリーな利用がなされていなかった。今回、ABCIを用いて、2011年までの衛星マイクロ波センサーPALSAR運用期間中の全データ(約200万シーン、700TB)の画像処理を行い、処理時間や画像品質上の実用性を評価。さらに、地表面状態の詳細な解析のために4偏波モードで取得したデータに散乱電力分解を施し、地表面を状態に応じて色分けした。     

ABCI上でのレーダー画像のカラー化
ABCI上でのレーダー画像のカラー化

 例えば、体積散乱が多い森林部分は緑色、表面散乱が見られる伐採地は青色、伐採後に草木が成長すると2回反射散乱を示す赤色といった具合に、広範囲な地表面の時系列変化が容易にわかるように処理した。

 今後、増え続ける衛星データに対し、ABIC上での衛星ビッグデータ処理を各衛星データへ拡大し、他の衛星データプラットフォームと連携させて、衛星能力をフル活用できる仕組みを構築する。さらに、種々の衛星データ(光学センサー、マイクロ波センサー、ハイパースペクトルセンサーなど)を統合的に分析し全球の変化を効率的に捉えるためのフレームワーク構築を目指す考えだ。

 なお、専用サイトの処理画像は、誰もが無償で加工・編集・再配布などが可能なオープン&フリーポリシーで公開。産総研では、衛星データ利活用への参入障壁を低減することで、産業界での新たな衛星データ利用の促進やグローバル観測という衛星観測の利点を生かした、違法森林伐採や食糧生産管理といった地球規模の社会課題解決への貢献を期待している。

南米での森林伐採の様子を色の推移で示す
南米での森林伐採の様子を色の推移で示す