東レ 柔軟性と復元性を両立した伸縮性フィルムを開発

,

2019年10月17日

 東レはこのほど、優れた柔軟性と高い復元性を両立した伸縮性フィルム=写真=を開発したと発表した。

東レ新製品 同開発品は加工適性も優れており、フレキシブルなディスプレイ、ウェアラブルデバイスなどの幅広い分野への適用が期待される。現在、量産技術確立を進めており、今後、来年をめどに本格展開を行う方針だ。

 近年、折り畳みや巻き取りが可能なディスプレイや、衣服や肌に装着させて生体情報を収集するウェアラブルデバイスが実用化されている。

 ディスプレイでは、様々な環境下で繰り返し変形した時の復元性、衝撃吸収性など、ウェアラブルデバイスでは高い柔軟性と復元性を必要とするため、優れた柔軟性と高い復元性を両立するフィルムが求められている。しかし、従来技術では柔軟にしようとすると、復元性に必要な分子構造上のつなぎとめる部分が不足し、柔軟性と復元性がトレードオフの関係になっていた。

 こうした中、同社は、架橋構造に着目したポリマー設計と独自の成膜技術を用いることで、柔軟性と復元性を両立した伸縮性フィルムを開発。同社の既存フィルム(アラミド、PETなど)に比べ、弾性率が1000分の1、破断伸度500%を実現した。

 今回開発した伸縮性フィルムの特長として、①優れた物理特性:わずかな力で変形できる優れた柔軟性と、元の長さの2倍に引っ張る変形を繰り返してもヒステリシスなく(力と変形量の関係が、変形時と復元時で一致すること)、元通りに復元し、変形後、長時間保持しても復元する高い復元性を両立した。また、マイナス20~80℃の広い温度範囲でもこの特性を維持することに成功している。

 ②優れた加工適性:独自の表面層をもつことから、150℃での乾燥、熱処理が可能な耐熱性とスクリーン印刷やインクジェット印刷が可能な印刷適性を実現。また、高平滑からマット(艶消し)や凹凸形状まで、用途や加工工程に合わせて様々な表面形状への対応を可能にした。

 これらの特長により、従来のシリコーンフィルム、TPU(熱可塑性ウレタンフィルム)、アクリル架橋柔軟フィルムに比べても優位性があり、ディプレイ、回路基板、センサーなど各用途への展開が期待される。

 同社はすでにサンプル評価を開始しており、一部のユーザーとは量産化について検討を始めている模様だ。2020年頃までに事業化を進め、2025~2030年には年間売上高50億円を目指していく。