東レ 5G向け電子部品に適した低誘電損失PI材料開発

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2019年6月3日

 東レはこのほど、大容量データの高速安定通信技術として普及しつつある5G通信や、自動運転などに用いられるミリ波レーダー向け電子部品に適したポリイミド(PI)材料を開発した。

 5G通信やミリ波レーダーには、従来から使用されている6GHz以下の周波数バンドに加え、ミリ波領域といわれる20GHz以上の新たな周波数帯での通信が必要。この技術の実用化には、高い周波数帯域での通信に適した誘電特性と、半導体実装に耐えられる耐熱性、銅配線との接着性などの物性値を満たす材料開発が求められる。

 フッ素樹脂系やビスマレイミド系などの既存材料は、半導体・電子部品に必要な主要物性値に課題があり、従来のPIは誘電特性に課題があった。高周波において誘電損失を低下させるには、高分子構造において分極を小さくすること(誘電率に対応)と、分極の動きを抑えること(tanδに対応)がカギとなる。

 同社は、長年蓄積してきた機能性PI設計技術を駆使し、精緻な分子設計と極限追求により、電気エネルギーの損失を0.001(20GHz)に抑える低誘電損失PIの開発に成功。LCPなど誘電特性の高い樹脂と比べても高耐熱性、機械物性、接着性の面で優位性があり、また低コスト化も実現した。

 現在、同材料をベースに、感光性付与、シート化などの開発を推進。同材料の適用により電気エネルギーの損失を抑え、大容量データの高速通信安定化や、ミリ波レーダーの距離測定性能向上、部品の小型化などが可能となる。

 同社は、5G通信時代に適した各種樹脂を事業化しており、今回開発した材料を新たにラインアップに加え、次世代の通信技術を支える半導体デバイス、電子部品などでの採用を図っていく。

 なお、新規開発品は滋賀事業場の既存設備で生産を行い、今後、増産や新たなプロセスが必要となれば設備投資を行う予定。事業規模については、5G通信が2020~21年頃に本格化すると見られることから、2022年度に売上高10億~30億円程度を目指していく考えだ。