昭和電工 AIでポリマーの設計・検証試行回数を大幅低減

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2018年11月28日

 昭和電工と産業技術総合研究所(産総研)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は27日、人工知能(AI)の活用により、要求特性を満たすポリマーを設計する際の試行回数を、約40分の1に低減できることが分かったと発表した。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)」の委託事業として実施した。

 超超PJでは、従来の経験と勘を頼りにした材料開発からの脱却を目指し、マルチスケールシミュレーションやAIを積極的に活用することで、従来の材料開発に比べ、開発期間を20分の1に短縮することを目指している。

 3者はポリマー設計でのAI技術の有用性を実証するため、AIを活用して要求特性を満たすポリマーの探索を行った。モデルケースとして、耐熱性の指標であるガラス転移点に着目。構造とガラス転移点が判明しているポリマーの構造データ417種の中から、最もガラス転移点が高いポリマーをAIで探索し、発見までに要する試行サイクルを短縮できるか検証した。

 まず、無作為に抽出した10件のデータをAIに学習させた。学習データにはExtended Connectivity Circular Fingerprints(ECFP)という手法を応用し、ポリマーの構造的特徴を数値化したものを使った。

 次に、残りの407件の中から、最もガラス転移点の高いポリマーを、ベイズ最適化によって予測・検証を繰り返し、求めるポリマーを発見するまでの試行回数を調べた。データの選び方で結果が変わることを防ぐため、初期データを変えた試験を500回実施し、試行回数の平均値を評価した。

 この結果、平均4.6回という極めて少ない試行で、最もガラス転移点の高いポリマーを発見することに成功した。この値は、無作為にポリマーを選出した場合と比べ約40分の1で、AIによるポリマー設計の有用性を裏付ける結果と考えられる。

 今後は、同技術をさらに高度化させ、実際の機能性材料開発に活用できるよう開発を進めていく。