東工大など 温室効果ガスを化学原料に変換する光触媒を開発

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2020年2月21日

 東京工業大学や物質・材料研究機構(NIMS)など5者による共同研究グループは、低温でメタンの二酸化炭素改質反応=ドライリフォーミングを起こす光触媒材料の開発に成功し、このほどその研究成果を英国科学誌「Nature Catalysis」のオンライン版に発表した(現地時間:1月27日)。

 ドライリフォーミング反応では、温室効果ガス(GHG)であるメタンとCO2を、水素と一酸化炭素の合成ガスに変換する。生成した合成ガスはアルコールやガソリン、化学製品を製造する化学原料となるため、ドライリフォーミング反応は 天然ガスやシェールガスの有効利用と地球温暖化抑止の観点から注目されている。

 しかし、この反応を効率よく進行させるためには800℃以上の高温が必要となることから、大量の燃料消費と、高温条件下での触媒の劣化が問題となっていた。

 こうした中、同研究グループは、ロジウムとチタン酸ストロンチウムからなる複合光触媒を開発。光照射のみでドライリフォーミング反応を達成した。ヒーターなどによる加熱を必要としないため、燃料の消費が大幅に抑えられると同時に、加熱による触媒の劣化が起こらず長期間安定的な反応の継続が可能になった。

 今回は光触媒として、紫外線応答型のチタン酸ストロンチウムを使っているが、実用化に向けては太陽光の主成分をなす可視光の利用が課題となっている。一方で、同研究では酸素イオンが媒体となるエネルギー製造型反応の機構を初めて見出しており、今後この新しい反応機構を基に、可視光を吸収できる光触媒材料への展開などを図っていく考えだ。

 実現すれば、天然ガス・シェールガスの有効利用やGHG低減への貢献のほか、低温で合成ガスを製造することができるため、既往の工業的手法と組み合わせることでガソリン製造などの施設の大幅な簡略化と効率化が望めるという。

 なお、同開発を行ったのは、東工大物質理工学院材料系の庄司州作さん(博士後期課程3年)と宮内雅浩教授、NIMSの阿部英樹主席研究員、高知工科大学の藤田武志教授、九州大学大学院工学研究院の松村晶教授、静岡大学の福原長寿教授らの共同研究グループ。

 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術」の研究課題「高効率メタン転換へのナノ相分離触媒の創成」として実施した。