《化学団体年頭所感》 日本プラスチック工業連盟 姥貝卓美会長

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2020年1月15日

 海洋プラスチックや地球温暖化などの問題を背景に、「脱プラスチック」や「減プラスチック」という言葉が飛び交い、ワンウェイ用途をはじめとするプラスチック製品の使用抑制や、代替素材への切り替えを呼びかける声が上がり始めている。

 こうした動きの中、当連盟も委員として議論に参加した、国のプラスチック資源循環戦略小委員会が策定した「プラスチック資源循環戦略」が、昨年5月31日に経済産業省や環境省などの九省庁の連名で公表された。

 当連盟では国の戦略とは別に、当連盟の4カ年計画(2017~2020年度)に基づき、連盟としてのプラスチック資源循環戦略の策定に向けた議論を2018年から開始し、昨年5月22日の定時総会での戦略案の審議を経て、正式に当連盟の戦略として公表した。この戦略の策定に際しては、多くの会員の皆様に議論に参加していただいた。本年は、この戦力に基づいた具体的なプロジェクトを推進していく。

 また、「海洋プラスチック問題の解決に向けた宣言活動」では、昨年から参加企業・団体による具体的な取り組み事例の募集を開始した。本年も引き続き参加者の拡大を図り、具体的な取り組み事例の募集と共有を進めていく。

 昨年は、中国との協力関係にも新しい動きがあった。当連盟と中国プラスチック加工工業協会(CPPIA)は2005年に交流協定を締結しているが、昨年10月にはこの交流協定を結び直し、定期的な交流をスタートさせた。

 また、当連盟とCPPIA、中国石油・化学工業連合会(CPCIF)は、2018年11月に日中省エネルギー・環境総合フォーラムの枠組みの中で海洋プラスチック問題に係る協力覚書に署名しているが、この覚書に基づき、昨年10月には北京にて両団体との交流と情報交換を実施した。今後も、定期的な交流を継続していく。

 当連盟の業務の柱の1つであるプラスチック関係の国際標準化については、昨年度は予算額としては過去最高の規模となる11件(継続課題4件、新規課題7件)の事業を受託し、当連盟への期待と責任の大きさを感じている。

 今年度も引き続き大規模な受託を計画しているほか、ISOの「液体輸送用プラスチック管、継手およびバルブ」(TC138)の規格に関する国際会議、「プラスチックの機械的性質、物理・化学的性質等」(TC61)の規格に関する国際会議に委員を派遣するなど、わが国企業の新規市場展開を支援するため積極的に活動していく。

《化学団体年頭所感》石油化学工業協会 森川宏平会長

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2020年1月8日

 昨年を振り返ると、9月の台風15号と10月の19号・21号に象徴される想像を超えた自然災害の発生があった。15号による強風の被害は大きく、千葉県を中心に停電が長期に続くなど市民生活に甚大な被害をもたらした。

 19号は長野や関東から東北までの広域にわたり記録的豪雨による水害を引き起こし、物流網の寸断などのインフラの脆弱性を痛感させられた災害となった。被災地の皆さまには心からお見舞いを申し上げるとともに、被災地の1日も早い復興をお祈り申し上げる。

 また、昨年5月には今上陛下が即位され令和がスタートし、日本中に祝意があふれた年でもあった。今年令和2年は、半世紀ぶりに日本で夏季オリンピックとパラリンピックが開催される。大会の競技への支援はもちろん、訪日される各国の観光客に対しても、日本の良さをアピールする絶好の機会だ。2020年東京オリンピック・パラリンピックの成功を祈念している。

 さて、世界経済を見ると、昨年は米中の貿易摩擦の影響が顕在化した年で、世界経済の下振れリスクの拡大は、もはや単純な2国間だけの問題ではなく、グローバル化された世界におけるサプライチェーンへも大きな影響を及ぼしており、世界貿易量の減少は、わが国でも内需としている「間接輸出製品」の大きな落ち込みに表れている。

 わが国としては、環境の変化に迅速かつ機敏に対応することが求められる年であり、石油化学業界としても正面から内外の課題に引き続き取り組んで行くことが重要と考えている。

 国内の石油化学業界の状況を見ると、エチレン設備の稼働率は、2013年12月以降72カ月連続で90%超を維持しており、実質的フル稼働になる95%以上は2015年11月から昨年の11月までの間で5カ月を除く通算44カ月連続だった。なお、昨年8月以降の3カ月は、夏場の暑さや台風の影響により95%を割り込んだが、11月には再び95%超えとなった。

 このような高稼働が継続しているときこそ安定供給責任を果たすため、さらなる保安・安全の確保が重要となる。このような状況下、当協会としてはわが国の石油化学産業の持続的発展に向け「保安・安全の確保」「事業環境の基盤整備」「グローバル化対応の強化」に取り組んでいく。

 このほか、会員各社共通の課題である機械・電気系エンジニアの採用支援を目的とするキャリアセミナーの全国各大学での開催、サイバーセキュリティーの面で、今年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けた対応力強化のサポートにも注力していく。さらに各種刊行物の発行やマスコミなどのステークホルダーへの情報発信といった、幅広い広報活動も引き続き展開していく。

《化学団体年頭所感》 日本プラスチック工業連盟 姥貝卓美会長

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2019年1月11日

 昨年6月にカナダで開催されたG7シャルルボア・サミットで、カナダから提案された「海洋プラスチック憲章」に米国とわが国が署名しなかったことが、国内外のマスコミで大きく取り上げられた。海洋プラスチックごみ問題が国内でも一段と大きな話題になるとともに、「これまでのプラスチック製品との付き合い方を見直そう」との動きも一部に生まれつつある。

 このような状況のもと、昨年8月には環境省の中央環境審議会循環型社会部会にプラスチック資源循環戦略小委員会が設置され、戦略の素案が示された。当連盟では、この小委員会での議論に加わる一方、当連盟の4カ年計画(2017~2020年度)に基づき、あるべきリサイクルの姿等を検討する新しい委員会「プラスチック資源循環委員会」を立上げた。

 環境省の素案に先立ち、連盟としてのプラスチック資源循環戦略の基本的な考え方を「プラスチック最適利用社会の実現に向けて、行政・国内外の関連業界等との連携のもとに」とのサブタイトルを付け、5つの基本方針を公表した。

 本年は、国の戦略を視野に入れながら、この基本方針に具体的な取り組みの肉付けをしていくために、会員や関係者の皆様のお力添えをお願いしたい。この基本方針の中で、海洋プラごみ問題に関しては、「プラスチック業界が率先してサプライチェーンを通じた海洋プラスチック問題の解決に取り組む」と謳っている。

 当連盟では、樹脂ペレット漏出防止などの従来の活動に加え、昨年から新たな取り組みとして「海洋プラスチック問題の解決に向けた宣言活動」をスタートさせた。現在40以上の会員企業・団体の代表者が宣言書に署名し、それぞれがトップダウンで活動を展開している。今年は、さらに多くの企業や団体に参加していただけるよう、努力していく。

 また、当連盟の業務の柱の一つであるプラスチック関係の国際標準化については、昨年は TC61(プラスチックの機械的性質、物理・化学的性質等)の規格に関する国際会議を12年ぶりに日本(さいたま市)で開催した。300名を超える各国からの参加者が、約60の分科会などで活発な議論を交わすことができた。

 当連盟では今後も、前述のプラスチック最適利用社会の実現に向け、さまざまな取り組みを積極的に進めていく。引き続きのご支援とご協力をお願い申し上げる。