NEDO 世界初、水素輸送の国際実証試験を本格開始

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2020年7月6日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、水素社会構築に向けた事業の一環として、次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合(AHEAD)とともに、世界初の国際間水素輸送実証試験を、本格的に開始した。

 NEDOは、水素社会での水素の安定供給を目指し、2015年から「水素社会構築技術開発事業」に取り組んできた。今回、未利用エネルギー由来の水素の国際サプライチェーン構築のために、トルエンを水素キャリアとする「有機ケミカルハイドライド法」の国際実証試験を本格的に開始した。

 水素単体では多くの体積を必要とすることから、輸送に課題がある。トルエンと反応させてメチルシクロヘキサン(MCH)に変換することにより体積は500分の1になる上、既製のISOタンクコンテナによる常温・常圧での輸送・貯蔵が可能となる。さらに今回、大規模なMCH脱水素処理技術を開発し、低コスト運用の可能性が開けた。

 昨年11月にブルネイの水素化プラントが完成、12月には製造したMCHが日本に到着した。川崎市内の脱水素プラントが4月に稼働を始め、MCHから分離した水素を東亜石油京浜製油所内の水江発電所のガスタービンに供給している。脱水素後のトルエンはブルネイへ輸送し、6月からトルエンの再水素化処理を開始した。こうして、一連のプロセスからなる水素サプライチェーンが完成し、安定稼働に入った。

 水素供給源はLNGプラントのプロセス発生ガスで、水素輸送能力は年210t(燃料電池自動車フル充填約4万台相当)。今年末まで実証試験を行い、水素化・脱水素化設備の性能検証と課題の抽出、運用技術の確立、国際取引のノウハウ蓄積を図り、海外からの水素輸送と国内の水素発電の大規模な水素利用システム技術を確立し、本格的な水素社会の実現を目指す方針だ。