出光興産 次世代電池向け固体電解質、実証設備の稼働開始

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2021年11月9日

固体電解質の実証設備

 出光興産はこのほど、次世代電池として有望な全固体リチウムイオン電池向け固体電解質の商業生産に向けた実証設備について、主力事業所の1つである千葉事業所内に建設し、稼働を開始したと発表した。全固体リチウムイオン電池はEV向けなどに早期の実用化が求められており、そのキーマテリアルである固体電解質に対するニーズが近年ますます高まっている。同社は、今回の装置を使って固体電解質の量産プロセス実証を進めていく考えだ。

 近年、世界各国において厳しい環境規制や脱炭素社会の実現に向けた目標が掲げられ、EVや定置用電池などの市場が急拡大している。その中において、全固体リチウムイオン電池は、航続距離の拡大・充電時間の短縮・安全性向上などに寄与する、EV普及の鍵を握る次世代電池として実用化開発が進み、EV以外の様々な用途への適用範囲拡大も見込まれている。

 こうした中、同社は全固体リチウムイオン電池のキーマテリアルである固体電解質を開発。石油化学事業で培った高純度の硫化リチウム製造法を確立し、さらに硫化リチウムを原料とする硫化物系固体電解質について数多くの特許を保有している。 これまで蓄積してきた技術を実用化し、原料からの一貫生産と安定供給体制の構築を目指すべく、固体電解質の商業生産に向けた実証設備を建設し、稼働開始に至った。

 今後は固体電解質の量産プロセス実証およびさらなる性能向上などを図り早期事業化を推進していく。

三菱ケミカルとJSW 世界最大級のGaN基盤製造設備竣工

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2021年5月26日

 三菱ケミカルと日本製鋼所(JSW)はこのほど、窒化ガリウム(GaN)単結晶基板の量産に向けた実証設備をJSW M&E室蘭製作所構内に共同で竣工したと発表した。今年度にかけて4インチのGaN単結晶基板の量産に向けた実証実験を行い、2022年度初頭からの市場供給開始を目指していく。

パイロット設備で育成した各種 GaN 結晶
パイロット設備で育成した各種 GaN 結晶

 GaNは、高効率・高耐久性により超高効率デバイスの実現を可能にする素材。大幅な消費電力の削減によりCO2排出量も削減できることから、環境負荷の低減が期待されている。GaNは青色LED用途のみならず、①高出力・高輝度光源、②情報通信、③パワー半導体、といった用途での応用が期待されている。

 JSWは、人工水晶製造用のオートクレーブ(圧力容器)を製造し、日本国内のシェアは100%で累計415基、海外も24基の実績がある。またグループ会社で30年間にわたり人工水晶を製造し、主に国内のカメラメーカーに多くの光学部品を納入している。

 一方、三菱ケミカルは、気相成長法(HVPE)と化合物半導体の加工技術を用いた高品質なGaN基板の製造技術を保有。より高い生産性を目指し独自の液相成長法(SCAAT)によるGaN基板の開発を進めている。

 両社は、東北大学と共同で大口径・高品質・低コストGaN基板の製造技術の開発を進めてきた。さらに名古屋大学・天野研究室とも結晶成長や特性評価等の共同研究体制を構築している。2017年には、室蘭製作所内に建設したパイロット設備において、透明で結晶欠陥が極めて少ないGaN基板の低コスト製造技術の開発に成功し、4インチサイズの均一な結晶成長も確認した。

 新たに開発した製造プロセス「SCAAT-LP」は、従来の約半分の圧力条件となる低圧酸性アモノサーマル技術を利用した、将来の量産に向けた製造技術となる。今回、導入する大型設備では、「SCAAT-LP」を用いて4インチのGaN基板の量産に向けた実証実験を行う。この結果を踏まえ、GaN基板の安定供給体制を構築するとともに、近年需要が増加するパワーデバイス用途に適用可能な6インチ基板の開発にも取り組んでいく。GaN基板は、パワーデバイスをはじめ、光エネルギー、電波エネルギーに関する様々な用途への応用が期待される。

 両社は、未来の社会を支える材料として重要な位置づけをもつ高品質なGaN基板の供給を通じ、燃費・発電効率向上といったエネルギーミニマム社会への貢献を目指していく。

 

出光興産 次世代電池向け固体電解質の小型量産設備を新設

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2020年2月21日

 出光興産はこのほど、次世代電池として有望な全固体リチウムイオン電池(LIB)向け固体電解質の商業生産にむけた実証設備を、千葉事業所内(千葉県市原市姉崎海岸)に新設すると発表した。完工・稼働開始は2021年度第1四半期を予定している。

 近年、全固体LIBは電気自動車や定置用電池向けなどに早期の実用化が求められており、エネルギー密度向上、充電時間の短縮、安全性向上などにより、現行の液系LIBの課題を克服できる次世代電池として急速に開発が進められている。

 こうした中、同社は全固体LIBのキーマテリアルである硫化物系固体電解質を開発。これまでに高純度の硫化リチウム製造法を確立しており、硫化リチウムを原料とする硫化物系固体電解質について開発をリードし、現在数多くの特許を持っている。

 これまで蓄積してきた技術を実用化することにより、今後固体電解質の量産とさらなる品質向上、コスト削減を図り、原料からの一貫生産と安定供給体制の構築を目指す。同社は、全固体LIB向け固体電解質の開発・実用化を推進し、電動化社会に貢献していく考えだ。